任天堂ピンチ!「3DS」値下げ効果、早くも失速のワケ
2011.9.11 18:00
任天堂がピンチに立たされている。業績不振を払拭するため、8月11日に1万円の大幅値下げに踏み切った携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」だが、値下げからわずか1カ月足らずで、売り上げにかげりが見え始めた。業績回復に向けた値下げという“切り札”が不発に終わり、任天堂は早くも戦略の練り直しを迫られている。
「思ったよりやりたいゲームが少ない…」。3DSが1万5千円に値下げされた8月11日。大阪市内の大手家電量販店で3DSを購入した20代の女性は、こう不満をもらした。
3DSは裸眼で3D(3次元)映像のゲームが楽しめる。だが、値下げされても、3Dの特徴を存分に生かした有力ソフトの不足は解消されないままだ。
値下げのインパクトで一時的にハードが売れても、「ソフト不足で値下げ効果は長続きしない」(証券アナリスト)。こんな当初からの不安が的中する。
ゲーム雑誌出版のエンターブレイン(東京都千代田区)によると、3DSが値下げされた直後の8月第2週(8~14日)の国内販売台数は約21万5千台に達した。2月26日の発売初週(約37万1千台)に次ぐ水準で、値下げ前の買い控えがあった8月第1週(1~7日)に比べ約58倍と大幅に増加した。値下げのインパクトが販売台数を大きく押し上げた形だ。
しかし、その効果は長続きしなかった。値下げの翌週(8月15~21日)には約10万7千台と早くも半減。8月第5週(8月29~9月4日)には約5万5千台と、値下げした週(8月8~14日)に比べ、約4分の1に落ち込んだ。値下げからほぼ1カ月で、その効果は吹き飛んだ格好だ。
3DSの2012年3月期の世界販売目標は1600万台だが、今年4~6月期の販売台数は71万台にとどまった。
3DSは発売直後こそ好調だったが、発売2カ月後には最大のライバルであるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」に国内販売台数で抜かれた。6年以上前に発売されたPSPに3DSが売り負けるのは、任天堂にとっては屈辱の事態と言っていい。
3DSの販売不振を背景に、任天堂の株価も低迷している。東京株式市場で任天堂株の8日の終値は前日比360円高の1万3400円だったが、2月17日に付けた年初来高値(2万6790円円)に比べると半値程度の水準だ。値下げした翌12日には一時、年初来安値となる1万780円まで売られた。
3DSの不振が響き、任天堂の今年4~6月期の営業損益は初めて赤字に転落した。出血覚悟の大幅値下げは、苦境を打破する“起死回生”の策になるはずだった。
それでも任天堂はゲームが最も売れる年末に向けて有力ソフトを少しずつそろえ、巻き返しを狙う。3DSの販売をてこ入れするため任天堂は、今年11~12月に人気ゲームソフト「マリオシリーズ」2タイトルを立て続けに発売する計画だ。
さらに据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」の後継機「Wii U(ウィー・ユー)」を投入して業績不振の打開を図る考えだ。ただ、「Wii U」の発売は来年になるため、今年度は3DSに期待するしかない。
携帯型ゲーム機市場では、ライバルのSCEも新型の「プレイステーション・ヴィータ」を年内に発売する予定だ。競争が激化する中で、計画通りに3DSの販売を伸ばせるのかは不透明が漂う。3DSの値下げが不発に終わった任天堂にとって、「将来を見極める上で大事になる」(岩田聡社長)という年末商戦は“背水の陣”となりそうだ。 |