- 精华
- 10
- 帖子
- 30399
- 威望
- 22 点
- 积分
- 36503 点
- 种子
- 27 点
- 注册时间
- 2005-7-4
- 最后登录
- 2024-10-4
|
本区一直缺这个,现在费了点时间,把这个弄上来了^^
日文剧本
T.C.4747 惑星ミクタム
[青の外套者]順調に進んでいるようじゃないか?
[青の外套者]ちっ、相変わらず無愛想な奴だぜ。
[青の外套者]───ご大層にこんなモノまで呼び出すとはな。
[青の外套者]必要なのかよ、本当に?
[赤の外套者]15年前の事象変移───それは不完全な形で行われた。
[赤の外套者]歪みは矯正しなければならない。
[青の外套者]ふん。最初から、すべてお見通しってわけかい。
[青の外套者]怖い野郎だな。
[青の外套者]すべてを知った時のあいつの顔が見物だな。
[青の外套者]え、おい?
[赤の外套者]────
[青の外套者]で、これが我らの姫君か?
[青の外套者]ふーん。いい匂いがするな───
[青の外套者]お前、気に入ったぜ。
[シオン]───ったく
[シオン]マクロファージが配備されているなんて聞いてないわよ
[シオン]今まで何やってたの
[ミユキ]そんなぁ
[ミユキ]私だって一生懸命確認したんですよぉ
[ミユキ]あぁ 先輩
[ミユキ]インターセプター3機更に追加されましたぁ
[シオン]言い訳する暇があるならしっかりサポートして
[ドクトゥス]なかなか いいコンビじゃない
[シオン]ドクトゥス
[ドクトゥス]7時方向に3機
[ドクトゥス]いける
[カナン]──任せておけ
[ミユキ]さすが カナン
[ミユキ][A.M.W.S./エイムス]でその機動は神業ですよ
[シオン]暢気に感心してる場合じゃないでしょ
[シオン]索敵の方は大丈夫なの
[カナン]俺達の狙いは
[カナン]ヴェクターにとってかなりヤバイ代物だ
[カナン]もう少し気を引き締めて欲しいものだな
[ドクトゥス]そうね 自滅するのは構わないけど
[ドクトゥス]巻き添えを食うのはゴメンよ
[ミユキ]わ 分かってますよぉ
[ミユキ]何で 私ばっかりぃ───
[シオン]で、どうなの?ミユキ。
[ミユキ]座標の確認───ばっちりですよ。
[ミユキ]間違いありません。ここが、ヴェクターの(S-Division/エスライン)です。
[シオン]じゃ、この先に目的の特秘データがあるのね。
[ドクトゥス]私は、バックアップにまわるわ。後は三人でうまくやって。
[ミユキ]えー、ドクトゥスは手伝ってくれないのぉ?
[シオン]なんでも、人に頼ろうとしない!
[ドクトゥス]Usus magister est optimus.
[カナン]急ぐぞ。
[カナン]追っ手が来る前に少しでも先に進みたいからな。
[ミユキ]わかってますよぉ。
[シオン]ミユキは周辺を監視して。
[シオン]カナン、データのバックアップお願い。
[カナン]すでに取り掛かっている。
[カナン]おい、ここまで来てミスはするなよ。
[ミユキ]わかってますよ。
[ミユキ]でも、こんな事で本当にヴェクターの悪事を暴けるんですかね?
[シオン]ミユキ、あなたこのU.M.N.の正体を理解している?
[ミユキ]え、それって広域ネットワークシステムとか。
[カナン]非局所的な繋がりを持った広域情報ネットワークシステム。
[カナン]その特質を利用し、空間跳躍や超光速通信に使用。
[シオン]模範的な回答ね。
[シオン]でも、本当にそれだけだと思う?
[カナン]───どういう事だ?
[シオン]この星団を繋ぐ広域ネットワーク。
[シオン]でも、誰がいつそんなモノを整備したの?
[シオン]ゲートジャンプ用のコラムだって、誰が設置したと思う?
[シオン]そもそも基礎理論の構築だってヴェクターのどの部門の仕事なの?
[ミユキ]それは───
[シオン]そう、誰も知らない(=/イコール)誰も設置していない。誰も作っていない。
[シオン]もともとそこにあった(存在/モノ)。
[シオン]私達はそれを自分達の発明のように使わされているだけ。
[カナン]あくまで、個人の推測にすぎん。
[カナン]想像力がたくましいのは認めるが、物的証拠は何もない。
[ミユキ]そうですよぉ!飛躍しすぎじゃありません?
[シオン]そうね、私も考えすぎであって欲しいと思うわ。
[シオン]それなら誰もが幸せに暮らせるものね。
[シオン]でも、だからこそ確かめなくちゃ。
[シオン]彼らが、このU.M.N.を使って何をしようとしているのか。
[シオン]それを突き止める必要があるのよ。
[ミユキ]あれ?先輩───ちょっと変ですよ?
[シオン]ちょっとって何よ?報告は的確にって、いつも言ってるでしょ?
[ミユキ]それが、300秒ほど前から量子の流れに奇妙な揺らぎが出てて、
[ミユキ]フラクタルパターンみたいですね───これ。
[ミユキ]何者かがこちらに干渉しようとしている感じです。
[シオン]迎撃機が上がったの?それとも電警?
[カナン]違うな───
[カナン]マクロファージからの物理的な接触はないし、
[カナン]電警の監視網へのスプーフィングも破られた形跡はない。
[カナン]これは傍観───いや、観察か?
[カナン]とにかくそんな感じのモノだ。
[シオン]観察───?誰が、何の為に?
[ミユキ]そこまでは、解りませんよぉ───
[シオン]データは?
[カナン]あと少しだ。
[シオン]急いで!これ以上の長居は危険だわ。
[ミユキ]せ 先輩───
[ミユキ]少し 遅かったみたいですよぉ───
[ミユキ]いやぁあああ 先輩ぃ
[ドクトゥス]シオン 脱出するわ
[ドクトゥス]貴方はこっちよ レアリエン
[シオン]E.S.転送
[カナン]カナンだ
[カナン]いい加減覚えて貰いたいものだな
[ドクトゥス]あら 悪気はない
のよ
[ドクトゥス]余計な事に頭を使いたくないだけ
[シオン]ちょっと 揺れるわよ
[シオン]振り落とされないで
[ミユキ]え ちょ 先輩
[ミユキ]いやぁああああ
[シオン]何───
[シオン]この感じ───
[ネピリム]だ
め
[ネピリム]撃たないで
[シオン]ミユキ
[シオン]ディスコネクト 急いで
[シオン]今回はちょっときつかったわね──
[ミユキ]大丈夫ですか 先輩~
[ミユキ]わぁ セクシー
[シオン]ミユキ
[シオン]貴方 最近オヤジ入ってるわよ
[ミユキ]よかったですねー。無事、ミッションコンプリートですよ。
[シオン]───誰かさんのおかげで、苦労したけどね。
[ミユキ]またぁ、ちゃんと反省してますよぉ。
[シオン]それより、肝心のデータは?
[シオン]まさか今のでロスト───
[カナン]大丈夫だ。コンマ002ナノセコンドの差でバックアップが完了した。
[シオン]そう───良かった。
[ドクトゥス]流石、元ヴェクター一局の開発主任ね。
[ドクトゥス]兄貴に負けず劣らず、たいした腕前じゃない。
[シオン]翻訳メソッドがいい加減で、ちょっと遅れ気味だったけど、
[シオン]あなたのおかげで何とかね。
[シオン]ありがとうドクトゥス。
[ドクトゥス]私はこれからバックアップしたデータの解析に入るわ。
[ドクトゥス]頼まれていた調査の件も含めて、結果が分かったらすぐに知らせてあげる。
[シオン]よろしく。
[ドクトゥス]データの転送、頼むわよレアリエン。
[カナン]カナンだ。
[カナン]お前のメモリーには欠陥があるようだな。
[ドクトゥス]Errare humanum est.
[ミユキ]あ、あのぉ───先輩もしかして怒ってます?
[シオン]別に、結果オーライ。過程には(拘/こだわ)らない***よ。
[ミユキ]そうですかー。よかったー。
[シオン]よくない。
[シオン]後で基礎構築テキスト送るから、ちゃんと返答しなさい。
[ミユキ]う~またですかぁ?
[シオン]基礎を飛ばして組むから、メソッドが言語に対応しきれなくなるのよ。
[ミユキ]は、はい───
[ミユキ]でも───本当にこれで良いんですかねぇ?
[シオン]今になって、そういうこと言うんだ。
[シオン]手伝わせろって、無理矢理加わって来たの自分でしょ?
[ミユキ]だって、私達のしてる事って、───犯罪行為じゃないですか。
[シオン]そうね。でも、グノーシス.テロの一件もあるし
[シオン]グノーシス現象が、U.M.N.と共生依存の関係にあるのは、間違いない。
[シオン]現行のU.M.N.が危険なのは明らかだわ。
[シオン]ドクトゥス達が言うように、もしかしたらグノーシスを呼び出したのは、
[シオン]ミズラヒ博士でも、U-TIC機関でも移民船団でもなく、
[シオン]U.M.N.を構築した、ヴェクターそのものだったのかも知れない───
[シオン]もしそうだとしたら、
[シオン]KOS‐MOSの開発だって、何か別の目的があったのかも───
[ミユキ]だから、ミルチア紛争の事もスキエンティアに調べてもらってるんですか?
[ミユキ]お父さんが、それに関わっていたかもしれないから───
[シオン]わからない───
[シオン]でも、このままじゃいけないと思うから───
[シオン]それに、出来るなら、(KOS‐MOS/あのこ)には辛い思いはさせたくないの。
[ミユキ]先輩───まだ忘れられないんですよね。
[シオン]──────
[ミユキ]あっさり会社辞めちゃったから、とっくに吹っ切れたのかと思ってましたよ。
[シオン]自分のしてきた事ってね、否定するのには勇気がいるのよ───
[ミユキ]とにかく、こっちでも何か進展があったら連絡しますね。
[シオン]ええ。でも、くれぐれも気を付けてね。
[シオン]だれより危険なのは、その場所にいる“あなた”なんだから。
[ミユキ]またぁ。脅かさないでくださいよー。
[シオン]ネピリム───あなたはまだ───
[シオン]また───か。最近多いわね。
[シオン]疲れがたまってるのかしら───
[アレン]あ───え、えと───お、お久しぶりです、し、主任。
[アレン]あ、あのですね実は、とても言いにくい事なんですが───
[アレン]一局が担当していたKOS‐MOS開発計画。
[アレン]先日の役員会で正式に中止が決まったそうです。
[アレン]正確には軍への移管になるので、計画自体はなくならないんですけど、
[アレン]軍主導で新型の開発が行われるので、
[アレン]KOS‐MOS本体の開発は、今月一杯で終了って事になりまして───
[アレン]僕とトガシは、不幸にもそのまま軍に出向になりました。
[アレン]急に決まった話だったんで、みんなこれまでのデータのまとめに四苦八苦してますよ。
[アレン]主任がいないんでテンション低いですけど。
[アレン]で、今、移管先になるフィフス.エルサレムに来てるんですけど、
[アレン]どうですか、一度来られてみては?
[アレン]みんな会いたがってますし、KOS‐MOSもきっと───
[アレン]まぁ、相変わらず無愛想で何を考えているのか判らないとこありますけど、
[アレン]多分会いたがっていると思いますから。
[アレン]では、返信お待ちしています。我が一局の華。ウヅキ主任との再会を願って。
[シオン]再会を願って───か。気の利いた事言えるようになったじゃない。
[シオン]もう半年も経つのね───
[アレン]主任!?落ち着いてくださいよぉ!ちゃんとした説明を───
[シオン]さっきの説明、聞いてなかったの?
[アレン]いや、聞いてましたよ。聞いてましたけど、
[アレン]退社するなんて、いきなり言われたって──
[アレン]上からの辞令だって、まだ出てないんでしょう?
[シオン]仕方ないわよ。
[シオン]あれだけの事件を起こしておいて、
[シオン]主任づらしてるわけにもいかないでしょ?
[アレン]それって、例のグノーシス.テロの一件ですよね?
[アレン]あれはグリモアという人物が起こした事件じゃないですか。
[アレン]別に主任が責任を取る必要はないでしょ?
[アレン]今の所、何のお(咎/とが)めもないわけだし。
[アレン]何も、自分から出て行かなくても───
[シオン]KOS-MOSも凍結状態で監視される事になるわ。
[シオン]すべて私の責任よ。
[シオン]開発途中で無責任かもしれないけど
[シオン]このままヴェクタに残るわけにはいかないわよ。
[アレン]凍結っていっても、一時的なものですし───
[アレン]あ、ちょっと主任───
[シオン]アレン君、KOS-MOSとみんなの事、よろしくお願いね。
[アレン]考え直してくださいよ!
[シオン]ごめん──
[アレン]主任──
[シオン]女性型───ですか?
[ケビン]そう。古来から人々の心を癒し、希望を授けるのは、女性と決まっているからね。
[シオン]男の人だって───癒した人は沢山いるんじゃないですか?
[ケビン]大昔の史実なんてものは、大抵男性優位***の下で(編纂/へんさん)されているものだよ。
[ケビン]それに男なんてものは、破壊や支配しかできない生物だから。
[ケビン]何かを生み出したり、護ったりする者の姿としては、
[ケビン]女性である事はとても重要なんだよ。
[シオン]ふふっ。
[ケビン]何か変な事言ったかな?
[シオン]いえ、ただ───
[シオン]先輩、とても優しそうな顔して力説するから、そのギャップがおかしくて───
[ケビン]そうかな───
[シオン]先輩は、何故KOS-MOSを創ろうと思ったんですか?
[シオン]やっぱり人類を護る為?
[ケビン]そうだね───
[ケビン]たしかにグノーシスは、人類の存亡を脅かす脅威である事はたしかだし、
[ケビン]その驚異から、人々を護りたいってのもある。
[ケビン]でも───それ以上に強い何かの思いが、僕の中にはあるんだと思う。
[シオン]思い───?
[ケビン]世界に存在するモノ全てには、何らかの必然的な意味がある。
[ケビン]グノーシスの存在自体が、
[ケビン]これまで僕らが知り得なかった、何らかの意味を知らせるものだとしたら、
[ケビン]それを知りたいと思う───
[シオン]グノーシスが知らせる、意味───
[ケビン]結果的には、それがこの宇宙を救う為の早道なんじゃないかな。
[シオン]先輩ならきっと出来ますよ。
[シオン]KOS-MOSを創る事も、意味を知る事も。
[シオン]そっか、計画中止───か。
[シオン]やっぱり、私のせいよね。ケビン先輩、きっと悲しむだろうなぁ───
[シオン]何もかも中途半端なまま。こんなんじゃ、KOS‐MOSも納得できないわよね。
[シオン]──違うな。納得できないのは私の方──
[シオン]やっぱり、今のまま先に進むなんて出来ない。
[シオン](KOS‐MOS/あのこ)に会いに行かなくっちゃ。
[赤の外套者](S-Division/エスラインディビジョン)のデータの一部が、流出したようです。
[ヴィルヘルム]彼女の仕業だろ?なかなか、がんばっているようだね。
[赤の外套者]例のプログラムの情報も含まれておりますが?
[ヴィルヘルム]かまわないさ。彼女らが手を出せるモノなどたかが知れている。
[ヴィルヘルム]むしろカワイイじゃないか。檻の中の世界をすべてと錯覚し、変えられると信じているんだ。
[ヴィルヘルム]ここはひとつ、見守ってやろうよ。
[ヴィルヘルム]それより、レンヌ.ル.シャトーのその後は?
[ヴィルヘルム]準備の方はすべて整ったのかい?
[赤の外套者]滞りなく。
[赤の外套者]プロジェクトゾハルでのデモンストレーションの為、
[赤の外套者]すでにフィフス.エルサレムへの搬送は終了しております。
[赤の外套者]あの場所は、このまま放置されるおつもりで?
[ヴィルヘルム]ああ。オルムスにとっても、目に見える証が必要だろうからね。
[ヴィルヘルム]自らの命を削りながら、主たる偶像を守り続ける。
[ヴィルヘルム]それが彼らの、希望のよりどころなのだから。
[ヴィルヘルム]彼女の時間も、そう残されてはいない。
[ヴィルヘルム]やはり(虚ろな存在/コスモス)との接触は、負担が大きすぎる。
[ヴィルヘルム]次こそは成功させなければならないよ。
[赤の外套者]わかっております。その為に、私自ら彼女の下へ───
[ヴィルヘルム]君の言った通り、良い波を持った娘だね。彼女は。
[赤の外套者]恐れ入ります───
[ユリ]ひどいものね───
[ヘルマー]うむ───この戦闘により、第八十七方面艦隊は壊滅。
[ヘルマー]これで、事実上ミクタム星系は、オルムスの勢力下におかれた。
[ユリ]歴史は繰り返される───
[ユリ]結果的に、100年前とまったく同じ状況になったわね。
[ヘルマー]人の意識の根元に自己保存本能がある限り、戦いはなくなりはせんよ。
[ヘルマー]己が己であると律する意識は、生と不可分なもの。
[ヘルマー]人が人である事を放棄した時、その先に待つものは、熱的死に他ならん。
[ユリ]すべては自然の摂理だと?あなたらしい考え方ね、ヘルマー。
[ユリ]でも───それすらも、グノーシスの存在によって崩されようとしている。
[ユリ]いずれこのままでは───
[ヘルマー]その為のプロジェクトゾハルだ───
[ヘルマー]戦略制圧艦“メルカバ”。すでに完成していると聞いているが。
[ユリ]断片的に残されたY資料によれば、
[ユリ]あれは天の車同様、元々は、太古に存在していた何らかの装置だったの。
[ユリ]それをディミトリが、兵器として転用したのね。
[ユリ]アルベドが、Y資料をモモの深層領域から手に入れた時、
[ユリ]ディミトリもなんらかの手段で、手に入れていたんだわ。
[ヘルマー]ディミトリめ、ヨアキムの負の遺産をも利用するとはな。
[ヘルマー]君も辛いところか───
[ユリ]私よりも、この事をモモが知ったらどんな顔をするか。
[ユリ]あの子の悲しむ顔だけは、耐えられないわね。
[ヘルマー]いい母親だな。
[ユリ]えぇ、努力しているもの。
[ヘルマー]すまないが、ディミトリの監視役として、
[ヘルマー]もうしばらく、がんばっていてくれたまえ。
[ユリ]こういった仕事は、あなたのご専門じゃないかしら?
[ヘルマー]昔ならいざ知らず、
[ヘルマー]今はミルチア代表という肩書きがある以上、あまり表だっては動けんよ。
[ヘルマー]議会内のザルヴァートル派への牽制だけで手一杯だ。
[ユリ]心中お察しするわ。では。
[カナン]取り込み中か?
[ユリ]カナン?いいえ大丈夫よ。
[ユリ]で、例の物体の情報は掴めたの?
[カナン]U.M.N.共鳴探査鏡の最大望遠でこの状態だ。
[カナン]ヴェクターから、非公式に手に入れた情報では、
[カナン]“レンヌ.ル.シャトー”と呼称されているこの物体は、
[カナン]どうやら、ロスト.エルサレムの地殻の一部らしい。
[カナン]真偽のほどは定かではないな。
[ユリ]あなたが言うように、これがロスト.エルサレムの遺物だとしても
[ユリ]何故、この時期に出現したのかしら?
[カナン]当該宙域では、グノーシスの異常発生現象も記録されている。
[カナン]オルムスの連中も興味を示しているようだし、
[カナン]何らかの関係があると思われるが───
[カナン]これ以上のデータを得る為には対象に直に接触するしかない。
[カナン]調査隊の編成はどうする?
[ユリ]すでに、クーカイ.ファウンデーションに依頼してあるわ。
[ユリ]軍や議会内部にも、オルムス関係者が多く存在するという情報もあるし───
[ユリ]あまり、公にするわけにはいかなかったから。
[カナン]賢明な判断だな。
[ユリ]シオンは元気だった?
[カナン]ああ、特に変わった様子はない。
[カナン]付き合っている連中には、少々問題があるがな。
[ユリ]スキエンティアね。彼らの技術力は(侮/あなど)れないわよ。
[ユリ]グノーシス.テロで、ヴェクターの動きにも不審な点が目立つようになってきたわ。
[ユリ]裏を探るには、すべてを利用する必要があるの。
[ユリ]たとえ、法を侵している者の力でもね。
[ユリ]あなたには引き続き、U.M.N.の調査をお願いするわ。
[ユリ](表沙汰/おもてざた)にできない汚い仕事で、ヴェクター生まれのあなたには酷な任務だと思うけど、
[ユリ]現状、他に頼れる人はいないの。
[カナン]現在の俺はミルチア政府の管理下におかれ、
[カナン]ヘルマー代表からあなたに協力するよう命令を受けている。
[カナン]気にする必要はない。
[ユリ]助かるわ。
[ガイナン]議会も軍も、オルムスへの対応で手一杯の状況だ。
[ガイナン]ミズラヒ委員からの依頼では、(無碍/むげ)に扱うわけにもいかんからな。
[Jr.]なに、ここのところ暇してたしな。気分転換に丁度いいさ。
[Jr.]な?
[メリィ]ですわ。
[シェリィ]非公式ですがオルムスの艦隊も、
[シェリィ]例のポイントに向かっているとの情報もあります。
[Jr.]オルムスが必要としている何かがそこにあるのか───それとも───
[ガイナン]我々にとっては未知のモノであっても、
[ガイナン]彼らにとっては既知のモノかもしれん。
[Jr.]どっちにしろ、直接接触すれば何か判るだろ。だよな?
[ガイナン]まったく、お前は気楽でいいな。
[ガイナン]少しはこちらの身にもなってもらいたいもんだがな。
[メリィ]まぁ、そのほうがちび様らしいですけどな。
[ガイナン]事は高度に***的な問題をはらんでいる。
[ガイナン]できれば俺も同行したいんだが、
[ガイナン]しばらくは、フィフス.エルサレムを離れるわけにはいかない。
[ガイナン]二人とも、留守をよろしく頼む。
[ガイナン](Jr./アレ)が、おいたをしたら遠慮なく叱ってやってくれ。
[メリィ]はいな!
[シェリィ]心得ております。
[Jr.]け、どっちが気楽だよ。
[Jr.]面倒な事は全部こっちに押し付けやがって。
[Jr.]仕事が終わった後の始末書は、全部あいつに回してやる。
[メリィ]ちび様、ほんま、エルザだけで大丈夫なんか?
[メリィ]ウチらも行った方がええんとちゃうか?
[Jr.]戦闘が目的じゃない。単なる調査なら、エルザの方が小回りがきくからな。
[Jr.]デュランダルは後方でのバックアップで十分だ。
[Jr.]なぁに、こっちにはE.S.があるんだ何の心配もいらねぇよ。
[シェリィ]ちび様、無茶もいいですが、
[シェリィ]当該宙域周辺には大規模なグノーシス現象も確認されています。
[シェリィ]十分ご注意を。
[Jr.]わかってる。
[Jr.]そろそろポイントにつく頃だな。また、連絡を入れる。
[ペレグリー]マーグリス。レンヌ.ル.シャトーに侵攻中の連邦艦隊への対応は、
[ペレグリー]リヒャルトとヘルマンにやらせているわ。
[マーグリス]ふん、アニマの器との相性はよさそうだな。
[ペレグリー]ええ、E.S.が相手では、ろくな抵抗もできないでしょう。
[ペレグリー]これで、連邦もしばらくはおとなしくなるわ。
[マーグリス]────
[ペレグリー]どうしたの?らしくないわね。
[ペレグリー]故郷に戻って感傷的にでもなったのかしら?
[マーグリス]ペレグリーお前の目には何が映っている?
[マーグリス]この見渡す限りの(死蝋/しろう)の都ミクタム───
[マーグリス]これが、我らオルムス発祥の地の姿か───
[ペレグリー]18年前。連邦の俗物どもが愚かにもゾハルを暴走させ、
[ペレグリー]その結果、死滅してしまった惑星。
[マーグリス]そうだ、連邦の愚行が招いた不始末を覆い隠す為、
[マーグリス]記録上からも破棄抹消されてしまった我らが故郷だ。
[ペレグリー]でも、なぜいまになって?
[ペレグリー]この死と、グノーシスに支配された、惑星に何があるというの?
[ペレグリー]我らの目的は、ロスト.エルサレムへの帰還ではなかったの?
[マーグリス]すべてはハインライン卿のご意思───我らの知るべき事ではない。
[マーグリス]あのお方がこの星が再び蘇ると仰ったのだ。
[マーグリス]ならば、それは確固たる事象。
[マーグリス]現に、レンヌ.ル.シャトーは帰還を果たしたのだからな。
[ペレグリー]聖地レンヌ.ル.シャトー。
[ペレグリー]かつて、ロスト.エルサレムに存在していた、
[ペレグリー]我らのゆりかごたる、聖女の眠る地。
[マーグリス]墓所の出現によって我らの故郷が蘇るのであれば、
[マーグリス]我らは命を賭して、かの聖地を守らねばならん。
[オルムス兵士]報告いたします!
[オルムス兵士]クーカイ.ファウンデーション所属の船舶が、
[オルムス兵士]当該宙域に向かったとの情報が入りました。
[オルムス兵士]ローエングリン級貨客船と思われます。
[マーグリス]ヘルマーの子飼い共か───
[マーグリス]ククク、奴に会えるかもしれんな。
[マーグリス]プローディギウムの出撃準備!これよりレンヌ.ル.シャトーへと向かう!
[Jr.]結構 でかいな
[ケイオス]岩魂というより小惑星だね───
[ハマー]差し渡し約70キロメートル
[ハマー]質量は周辺重力場の異常により検出不可能ッス
[マシューズ]───にしたってこの数値は少々異常だな
[マシューズ]あれ単体で起こせるような重力歪みとは思えねぇぞ
[ジン]物体を中心としておよそ1G確かに異常ですね
[Jr.]いや─── こ これは
[Jr.]驚いたな
[Jr.]確かに
こりゃ どこかの陸地だぜ
[ジギー]どこかの星が崩壊した際の残骸か
[ジン]それにしては底面の形態に規則性がありますね
[ジン]崩壊というよりは 切り取られたような───そんな感
じです
[モモ]所属不明機 複数接近して来ます
[マシューズ]トニー
[トニー]くそぉー
[Jr.]オルムスの連中かお出迎えとはご丁寧なこったな
[Jr.]船長このままあの島に接近してデータを取れ
[Jr.]ザ
コの相手は俺達で十分だ
[マシューズ]ちび旦那ちょっと 待って下さいよ
[ハマー]俺達だけであそこに行けって言うんスか
[トニー]冗談じゃねぇぞ危険手当は貰ってないんだぜー
[Jr.]援護してやる
って言ってんだろ
[Jr.]さっさと報酬分の仕事して来い
[Jr.]エルザは
[モモ]無事です
[モモ]座標KZ255 Y724でデータ収集中のようです
[Jr.]OK モモとジンはエルザの護衛に向かってくれ
[モモ]はいです
[ジン]了解した
[ケイオス]Jr. 敵
の援軍だ
[Jr.]しつこい奴らだな 今度は何機だよ
[ケイオス]たった一機
[ケイオス]───狙いは
[ケイオス]エルザだ
[マーグリス]邪魔だ
[ジギー]何
[マーグリス]失せろ
[マーグリス]ほう
[マーグリス]だが
[マーグリス]技は未熟
[Jr.]新型か
[Jr.]モモ下が
れ
[Jr.]悪いが叩き落してやるぜ
[Jr.]なに
[ジン]黒いE.S.───
[ジン]この動き────
[マーグリス]この太刀筋───
[マーグリス]ウヅキか
[ジン]やはり 大佐でしたか
[ジン]貴方が姿を見せるとい
う事はこの場所にはそれなりの意味があるようですね
[マーグリス]だからどうした貴様らには過ぎた事象だ
[マーグリス]解す事なぞ所詮叶わぬわ
[マーグリス]過ぎた力のE.S.もろとも墓所への手向け
としてくれる
[ジン]大佐──
[ジン]オルムスがこれ程こだわる理由
[ジン]この地に一体何があると言うのです
[マーグリス]貴様に語る言葉など無い
[マーグリス]己が無知を恥じ
[マーグリス]このまま塵となれ
[ジン]これは───
[マーグリス]何だと
[ジン]モモ 何が起きている
[モモ]時空転移です
[モモ]浮遊大陸周辺の空間に異常発生虚数値増大
[モモ]宙域の事象面が逆位相に反転していきます
[ケイオス]ジンさん早くそこから脱
出して下さい
[マーグリス]逃がす訳にはいかんな ウヅキ
[マーグリス]邪魔をするな
[ジン]船長
[Jr.]早く 脱出しろ
[マーグリス]聖地に奴らが
[マーグリス]行かせはせんぞ
[ハインライン]捨て置け マーグリス
[マーグリス]猊下
[マーグリス]何故
そのような
[マーグリス]彼の地には聖女が眠っているのではないのですか
[ハインライン]聖女は既に我が手の内にある
[ハインライン]奴らがあの場所へ辿り着いたとて何を見つける事も出来ぬ
[マーグリス]何と 既に手
を打たれていたと
[ハインライン]そうだ
[ハインライン]貴様には新たな使命がある
[ハインライン]急ぎ帰還せよ
[ハインライン]解るな
[マーグリス]御意
[Jr.]野郎 待ちやがれ
[マーグリス]ウヅキ 残念だが貴様との決着いずれつける事
にする
[マーグリス]それまでの間せいぜい仲間とやらの救出に専念していろ
[マーグリス]もっとも救い出す方法があればの話だがな
[ジン]大佐───
[ハカセ]はよう、逆噴射をかけんか!
[ハカセ]この境界面はヤバイんじゃ!機体が粉々になるぞい!!
[マシューズ]トニーーーー!!!
[トニー]うおおおおおおおお!
[
ハマー]なんまんだぶ、なんまんだぶ。
[トニー]くそ!ロジカルドライブがやられてる、出力があがらねぇ!
[トニー]ダメだ、もたねぇ──
[トニー]不時着するぞ!身体を固定しろ!!
[スコットクン]なんまんだぶ、なんまんだぶ。
[Jr.]メリィ、そっちからエルザの位置は掴めるか!?
[メリィ]今やってます、ちょいまってぇな。
[メリィ]どうや、トレースできたんか?
[百式]IFFロスト───エルザ、所在掴めません。
[シェリィ]まさか撃墜───!?
[メリィ]な、わけあるかいな!爆発は感知しておらへんし───
[シェリィ]いずれにせよ、この位置からではこれ以上の探査は無理ね。
[シェリィ]私達も、ちび様の下へ急ぎましょう。
[メリィ]──やな。
[メリィ]そういうわけや、ちび様。いま少し待っとって。
[Jr.]ああ、わかった。急いでくれ。
[Jr.]ジン!そっちはどうだ?
[ジン]やはり駄目ですね。ルベンのセンサーでは、これ以上は。
[ジン]ここは、デュランダルの到着を待ちましょう。
[Jr.]ちっくしょう、なんとか無事でいてくれよ───
[シオン]旧ミルチア宙域での戦闘から一年―――
ゾハルが巨大なグノーシスに飲み込まれてからといぅもの、
グノーシス現象はより頻繁に起こるようになり、
人々は常に脅威に晒されていた、
しかし、多くの星系がグノーシスによって消失しているにも拘わらず、
異なる思想をもった人々は依然としてお互い相認める事をせず、
ただ徒に無益な争いを繰り返すだけだった。
ミルチア紛争の背後に存在していた移民船団、そしてゾハル
教皇セルギウスの語った真実―――
オルムスこそゾハルの正当な所有者という言葉が気になった私は、
ミルチア紛争とゾハルの関係について独自に調べを進めていた。
そして半年前、
偶然知り合ったスキエンテイアと呼ばれる
グループの協力を得て、
レメゲトンと呼ばれる謎のプログラムに絡んだ事件に
関わることとなった。
レメゲトン――――その正体は、ロスト.エルサレム時代に構築された
ゾハル制御プログラムであった。
その製作者であるグリモアは、意識体となっても尚、
U.M.N.を彷徨”ある存在を探していた。
それは度々私の目の前に現れた白なりの少女―――ネピリムだった。
そして、そのグリモアを影で操っていた組織の存在が
判明することとなった。
ヴェクター特別技術推進部門―――
官民合同で運営されていたその部門は、現在でこそ、
その存在が抹消された部門ではあったが、
それは間違いなく私の属する組織が創りだしたものだった。
そしてヴェクターは、
オルムスが関与していたU‐TIC機関に対しても接触をしていた。
だが、それらの証拠は隠蔽され、真実は闇へ葬られた。
たった一つの事実を残して。
当時、その担当官庁の要職にあった者の名―――
スオウ.ウヅキ―――
自らの父の名をそこに見つけた時、
驚きも、悲しみも、怒りも沸いてはこなかた。
心のどこかで予想していた事―――
来るべき時が来たにすぎない―――
私の中にはそんな諦観にも似た思いがあるだけだった―――
そして私はヴェクターを辞めた。
慣れ親しんだ面々―――
KOS‐MOS―――
あの人と私とを結ぶたった一つの絆ではあったけれど、
自分がそこにいること自体に耐えられなかった。
犠牲となった人々の贖罪か―――
母を見捨てた亡き父への抵抗か―――
いいえ―――
きっとそうではないのだるぅ。
多分―――私は―――
[シオン]さてと、待ち合わせは確か───ホテルだったわね。
[シオン]少し時間もあるし、街をぶらつきながら行こうかな。
[ガイナン]ここは?
ce002_100
[ガイナン]なんだ?く、くるな!やめろ、こないでくれ!
[ガイナン]やめろ、やめろ、やめろ俺に触れるな!!
[ガイナン]やめてくれぇ。俺に語りかけるな。
[ガイナン]俺は貴様など認めない。俺に話しかけるな!!
[ガイナン]やめろ!俺は、お前の思い通りにはならない!!
[ガイナン]俺は、お前を、お前を────
[ガイナン]ウ───ウ.ドゥ
[シトリン]───さま?──ディミトリ様?
[ディミトリ]───ん?
[シトリン]どうなされました?ご気分がすぐれませんか?
[ディミトリ]いや、どうも息子と馴染めなくてな。
[ディミトリ]大丈夫だ。続けてくれ。
[シトリン]はい。現在、実験棟で稼動実験を行っております。
[シトリン]ドクターがその報告をしたいと。
[ディミトリ]そうか、わかった。お前も一緒に来なさい、シトリン。
[シトリン]はい。
[セラーズ]ふん。ようやく、人の話を聞く気になったか。
[セラーズ]ディミトリ.ユーリエフ。
[ディミトリ]口の悪さは相変わらずだな、セラーズ。
[ディミトリ]時間が惜しい、結果だけ報告しろ。
[セラーズ]まったく、貴様といいマーグリスといい、
[セラーズ]指揮官と名のつく連中は、融通がきかんな。
[セラーズ]まぁ、いい。すでに起動実験は成功している。問題は──
[ディミトリ]なんだ?
[セラーズ]この数値を見ろ。
[シトリン]側頭葉からのパルスが、安定していませんね。
[シトリン]パイロットとのリンクに問題があるのでは?
[セラーズ]これのベースは、崩壊したミルチアから回収されたプロトタイプ。
[セラーズ]元は、オルムスの聖職者用に調整されていた物だ。
[セラーズ]当然だな。
[セラーズ]動力に関してもだ。
[セラーズ]元々は、オリジナルゾハルにあわせた規格なのだ。
[セラーズ]現状、私が製作していたエミュレーターの補機を使用して稼動させているが、
[セラーズ]その分、出力も安定しないし、パイロットとのリンクも(芳/かんば)しくないな。
[ディミトリ]このままでは動かせないと?
[セラーズ]その逆だよ。勢いがつきすぎて止められん。
[セラーズ]連邦のテクノロジーをバカにするつもりはないが、
[セラーズ]この手の技術に関しては、オルムスに一日の長がある。
[セラーズ]せめて、ヴェクターが参加していればな、少しは違ったろうが。
[セラーズ]何故、奴らを計画から外した?
[ディミトリ]レメゲトンの一件な。
[ディミトリ]ヴェクターが内々で関与していたのは、貴様も知っているだろう?
[ディミトリ]あの男が、何を企んでいるのかは知らんが、
[ディミトリ]重要な機密情報を渡すわけにはいかん。
[セラーズ]KOS-MOSの代わりに、計画に編入された“例のモノ”は?
[セラーズ]出所は突き止めたのか?ヴェクターの二の手かもしれんぞ。
[ディミトリ]現在、探らせている。
[ディミトリ]たとえ、あの男の差し金であったとしても、
[ディミトリ]所詮は、対グノーシス兵器に過ぎん。
[ディミトリ]せいぜい利用させてもらう。
[ディミトリ]それより、メルカバの状況はどうなっている?
[セラーズ]アレは、問題ない。すでに最終調整も済んでいる。
[セラーズ]貴様から提供された、“Y資料”のおかげでな。
[ディミトリ]プライドに障ったか?
[セラーズ]どうとってもらっても構わんよ。だが、評価はして欲しいものだな。
[セラーズ]断片をつなぎ合わせて全体を構築したんだ。
[セラーズ]無から作った方が、早かったくらいだよ。
[セラーズ]もっとも、肝心のコアがこの状態では、安全の保証はしかねるがね。
[ディミトリ]公開演習の日時が迫っている。間に合わせられるな?
[セラーズ]ふん、わかっている。
[セラーズ]そうでなければ、私がここに居る意味は無いからな。
[セラーズ]ところで、相手は見つかったのか?
[セラーズ]こいつと戦うには、それ相応のモノが必要になるぞ?
[シトリン]ご心配なく。すでに手配済みです。
[セラーズ]ほう?
[ディミトリ]親ヴェクタの俗物共を黙らせる格好の相手さ。
[トガシ]一大事、一大事!!って、おい新主任は?
[研究員]リッジリー主任なら街に出ましたけど。
[研究員]約束があるって言ってましたよ?
[トガシ]約束だって?ああ、ウヅキ主任に会いに行ったのか。
[トガシ]この一大事に何やってんだよ。───たく。
[トガシ]さっさと、コクッちまえばいいのに、煮え切らない人だねぇまったく───
[研究員]ウヅキって、あのシオン.ウヅキ元主任ですか?
[研究員]グノーシス.テロ事件の責任をとって、辞めてったんですよね?
[研究員]リッジリー主任の恋人だったんですか?
[トガシ]え?あぁ、だったら幸せなんだろうけどな。
[トガシ]現実ってもんは厳しいのさ。
[研究員]で、一大事って?何かあったんですか?
[トガシ]そうそう、KOS‐MOSが新兵器の模擬戦の相手をする事に決まったんだ。
[研究員]新兵器って、あの?
[トガシ]そう、あのヤバイ代物だよ。
[トガシ]起動試験をかねて、実戦デタを取るつもりなんだろうけど、
[トガシ]KOS‐MOSを相手に選ぶなんざ、たいした自信だよ。
[研究員]計画から外れるとはいえ、KOS‐MOSはまだ十分、実戦に対応できますからね。
[研究員]上層部はKOS‐MOSを倒す事で、ハクをつけたいんでしょうか?
[トガシ]ああ、政府には親ヴェクター派の議員も多いときくからな。
[トガシ]恐らく、それに対する(牽制/けんせい)だろうな。
[トガシ]我らがストレスとカフェインの結晶を、
[トガシ]***の道具になんか使いやがって。
[トガシ]一局の姫様をなめてもらっては困るってね。返り討ちにしてやる。
[トガシ]あぁぁ、もう!すぐに調整作業に入らなきゃならないのに。
[トガシ]こんな時に、なに油売ってるんだよ!新主任は!!
[アレン]しゅ、主任ー!お久しぶりです、主任。
[シオン]アレン君!相変わらず元気そうね。
[アレン]寝不足気味ですがね。ま、元気だけは常に人一倍。
[アレン]主任も───あの、元気そうで。
[シオン]ねぇ、その主任ってやめてくれない?
[シオン]もう、ヴェクターとは関係ないんだし。シオンでいいわよ。
[アレン]え、あ、あの──シ、シ、シ、
[アレン]主任───
[アレン]いまさら、簡単に呼び方は変えられませんよぉ。
[シオン]そう?簡単じゃない。
[シオン]まぁ、いいわ。
[アレン]部屋は、上の階にすでに用意してますので、まずは荷物の整理を。
[アレン]終わったら降りてきてください。街を案内しますよ。
[シオン]うーん──
[シオン]いろいろ話したい事もあるし、一緒に上がりましょ?
[アレン]ええ──えぇ!?
[アレン]一緒に行くって、だって、ツインの個室ですよ?
[シオン]あたりまえじゃない。だれもスイートなんて期待してないわよ。
[シオン]あ、エレベーターはアレね。
[アレン]いや、そうじゃなくて──
[アレン]あ、待ってくださいよ、主任!!
[シオン]で、様子はどうなの?みんな元気にしてる?
[アレン]えぇ、元気ですよ。
[アレン]ただ、いきなり開発中止と言われても、
[アレン]現場のみんなは、納得出来ていないって感じですよ。
[アレン]僕、個人にしてもそうですけど。
[シオン]事前に通達はなかったわけ?
[アレン]そんなものありませんよ。
[アレン]一局だけじゃなくて、二局も次フェーズの準備を進めていましたから、
[アレン]実際かなりの下準備が、無駄になっちゃった訳ですし、
[アレン]そっちの不満も相当なもんだったらしいですよ。ミユキちゃん言ってました。
[アレン]金銭的な損失の(補填/ほてん)は政府がしてくれるそうですけど、
[アレン]僕らが計画に費やした時間までは、補填しちゃくれませんからね。
[シオン]それ、ホントに二局の総意?ミユキの個人的な感情なんじゃない?
[シオン]あの子、KOS-MOSの兵装開発に燃えてたから。
[アレン]あれ、なんだ───?
[ミユキ]あ、アレンさん。先輩そろそろ着きましたぁ?
[ミユキ]───て、何だ、もういるじゃないですか。
[シオン]何だ───って、
[シオン]それが、半年ぶりに元同僚の下を訪ねてきた者に言う台詞?
[ミユキ]半年振りって──いつもU.M.N.で会ってるじゃ───
[シオン]ミユキ!
[ミユキ]あぅ、やば。オフレコでしたね、これ。
[アレン]オフ───何です?
[シオン]え?う、ううん、何でもないの。こっちの話よ。
[ミユキ]そそそ。女同士の。
[ミユキ]そ、そんなことよりアレンさん、良かったですねぇ。ホテルで先輩と二人っきり。
[ミユキ]もしかして、この後はしっぽりのまったりですか?
[アレン]なななな、何を君はいきなり!?
[ミユキ]あれあれあれ?もしかして──図星?
[アレン]ず、図星も何も、ぼ、僕が、そ、そんな(不埒/ふらち)な真似する訳がないだろ!
[アレン]失敬な!
[ミユキ]そうやって慌てるところが、益々怪しいなぁ。
[ミユキ]あーやだやだ、男ってホントケダモノォ~。
[シオン]───ばか。
[シオン]それよりあなた、何か用があって連絡してきたんじゃないの?
[ミユキ]あ、そうそう。夕方までに兵装の必要要項を提出してください。
[アレン]兵装?なんの?
[ミユキ]なんのって、KOS-MOSですよ?
[ミユキ]あれ?トガシ君から、聞いてないんですか?
[ミユキ]明日、例の新兵器のお披露目をかねた、公開演習が開かれるじゃないですか?
[ミユキ]それにKOS-MOSも参加するって話。
[ミユキ]当て馬にされるってウワサですよぉ。
[アレン]なんだよ、それ?全然聞いてないぞ!?
[アレン]第一、僕はこれからオフで──
[ミユキ]何言ってるんですか、
[ミユキ]夕方までに用意してもらわないと、こっちも手続きに時間かかるんですからね。
[ミユキ]ま、そういうわけで、お仕事がんばってください。新主任さん。
[アレン]ちょ、ちょっとまてよ──
[シオン]なかなか忙しそうね、新主任さん。
[アレン]あ、あの、すみません。僕戻らなくちゃ。
[アレン]本当は、この後主任に楽しんでもらう予定だったんですけど───
[シオン]いいわよ。
[シオン]あ、埋め合わせといっちゃなんだけど、明日の公開演習、私も見学できないかしら?
[シオン]KOS-MOSや、みんなにも会いたいし。ダメかな?
[アレン]え、あぁ。それなら特別顧問の見学という事で、局長に申請しておきますよ。
[アレン]記録上は円満退社な訳ですから、多分問題ないでしょう。
[アレン]明日、迎えに来ますから。
[シオン]うん、ありがとう。
[シオン]───?
[シオン]あ、ケイオス君!?お久しぶり!
[ケイオス]こちらこそ、シオン。
[シオン]どうしたの突然───
[シオン]あら?その通信コード。もしかしてこの星に?
[ケイオス]ついさっきね、着いた所なんだ。
[ケイオス]入港の時にかなり待たされてさ、Jr.をなだめるのが大変だったよ。
[シオン]Jr.君って事は───
[ケイオス]うん。デュランダルでね。みんな来ているよ。
[シオン]ケイオス君が、デュランダルで移動するなんて珍しいわね。
[シオン]エルザのみんなはどうしたの?
[ケイオス]──────
[シオン]ケイオス君?
[ケイオス]実はその事なんだけど───
[シオン]?
[ケイオス]シオン、これから会えないかい?
[シオン]───え?それは、かまわないけど。どうしたの?
[ケイオス]今から、そっちにいくよ。どこで待ち合わせしようか?
[シオン]メビウスホテルの近くにある、カフェでどうかしら?
[ケイオス]わかった。
[シオン]じゃ、また後でね。
[シオン]───行方不明!?エルザが?
[ケイオス]委員会の依頼で、浮遊物体の調査に向かったんだけど、
[ケイオス]当該宙域のU.M.N.が突然異変をきたして、
[ケイオス]おそらく、イマジナリーポケットに落ち込んだんだと思う。
[シオン]それで、みんなは!?船長達は無事なの?
[ケイオス]外部との通信が遮断されちゃって、
[ケイオス]その、中の様子はわからないんだ───
[シオン]そう───
[シオン]でも、私では力になれないと思う。
[シオン]知ってると思うけど、私もうヴェクターを───
[ケイオス]うん──ジンさんから話は聞いてる。
[シオン]一応、アレン君に連絡してみるけど、
[シオン]KOS-MOSも面倒な事になってて──
[ケイオス]いや、ダメもとで聞いて来いって、Jr.が言ってたからさ。
[ケイオス]気にしなくてもいいよ。一応、耳に入れておこうと思って。
[シオン]ごめん───
[ケイオス]最近、この手の事件が多くなったね。
[シオン]兄さん、まだ続けてるんでしょ?
[ケイオス]うん。今はデュランダルで、エルザ救出の手伝いをしてもらってるよ。
[シオン]そっか。
[ケイオス]心配かい?
[シオン]まぁ、ちょっとね。でも、言って聞くわけでもないし───
[ケイオス]シオン?大丈夫?顔色が悪そうだけど?
[シオン]え、大丈夫よ。最近ちょっと疲れが───
ce002_100
[ケイオス]シオン!
s020700g01ann
s020700g02ann
s020700g03ann
s020700g04ann
s020700g05ann
s020700g08ann
s020700g09ann
s020700g10ann
[シオン]ここは───?
[シオン]これは────ウ.ドゥの波動?
ce051_001
[シオン]何?私を呼んでいるの?
[シオン]どこ?私を呼ぶのは、誰?
[シオン]そうよ───私はシオン。
[シオン]貴方は誰?
[シオン]ん──ここは?ホテ──ル?
[シオン]あ──そっか。ケイオス君と話をしてて、気分が悪くなって──
[シオン]ケイオス君が、ここまで運んでくれたのかな?悪い事しちゃったわね。
[シオン]あ──アレン君。
[アレン]主任!どうしたんですか?ずっと連絡してたんですよ?
[シオン]連絡って───?何かあったの?
[アレン]何かあったのって──主任こそ。
[アレン]まさか、どこか具合が悪いんじゃ!?
[シオン]え?そんな事ないわ、大丈夫よ。
[シオン]───あ、そうだ約束!
[アレン]まさか───忘れてたんですか?
[アレン]自分から行きたいって言ったくせに。演習、始まっちゃいますよ?
[シオン]ごめん、ごめんなさい!すぐに行くわ。今どこ?
[アレン]じゃ、ホテルのロビーで待ってますから。
[シオン]OK、わかった。
[シオン]ごめん、アレン君。後で、この埋め合わせするから。
[アレン]いえ、大丈夫です。じゃ、行きましょうか。
[シオン]どうしたの?口数が少ないけど、何か心配事?
[アレン]え、ええ、まぁ───ちょっと、引っかかる事があって───
[シオン]───?
[シオン]何かありそうね───?
[アレン]ディミトリ.ユーリエフ氏を知ってますよね?
[シオン]ディミトリ.ユーリエフ元議員?──Jr.君のお父さんよね。それが?
[アレン]プロジェクトゾハルの主幹が接触小委員会から完全に軍に移って、
[アレン]その指揮を執っているのが、ディミトリ.ユーリエフ氏なんです。
[アレン]で、今回の模擬演習に使用される次期主力機の開発も、
[アレン]彼の指示によるものなんですが───
[シオン]委員会から軍に?ずいぶんと、きな臭そうな話ね。
[アレン]ええ。この次期主力機って言うのが、かなり厄介な代物で──
[アレン]今回のKOS-MOS開発計画の中止だって、政府からの圧力がかかったってウワサもあって、
[アレン]上の方で何かよくない事が動いている気がするんですよ。
[シオン]ユーリエフ元議員って、連邦議会でもカリスマ的な存在だったんでしょ?
[アレン]軍とのパイプも、太かったと聞きます。
[シオン]それで圧力──か。
[シオン]でも、KOS-MOSの件については、
[シオン]私にも、少なからず責任があるんだし、
[シオン]アレン君の考えすぎって事はない?
[アレン]僕もそう思いたいんですけど──ただ──
[シオン]歯切れが悪いわね。
[アレン]主任も、見れば───解りますよ。
[アレン]ここが、対グノーシス、人類の最後の砦。プロジェクトゾハルの中枢です。
[シオン]ものすごい警備ね。局長に感謝しなくちゃ。
[アレン]軍産複合体の一大計画ですからね、今までとは規模が違いますよ。
[アレン]おっと、呼び出しだ。
[トガシ]新主任!今どこにいるんですか?
[トガシ]暢気にしてると、KOS‐MOSの活躍見逃しちゃいますよ?
[アレン]ああ、大丈夫。もう、施設内にいるよ。
[トガシ]じゃ、ウヅキ主任も一緒なんですか?
[アレン]ああ、今横に──
[トガシ]まったく、人に仕事押し付けといて、なんですか、そのにやけた顔は──
[アレン]ば、ばか!別ににやけてなんか──
[トガシ]冗談ですよ、なにマジになってるんですか。
[トガシ]ま、こっちは僕に任せて、二人はゆっくり見物しててください。
[トガシ]二人きりだからって、変な気を起こしちゃダメですよ。
[アレン]ば、ばかやろう。何言い出すんだよ!
[シオン]ふふふ。
[アレン]主任も笑う事ないでしょう。
[シオン]あはは、ごめん。でも、なんかみんな、変わらないなぁって思って。
[アレン]あぁ、主任もバカにしてるでしょ?
[シオン]してないしてない。さ、行きましょ新主任さん!
[シオン]ここが 演習場
[シオン]随分と大掛かりなのね
[アレン]ええ
[アレン]起動試験も兼ねた
[アレン]より実戦に近い形での模擬戦を行うって触れ込みですけど
[アレン]トガシの話じゃザルヴァートル派の***行動なんじゃないかって
[アレン]予算の承認が下りたら軍はすぐにでも
[アレン]新型の量産体制を整える腹積もりですよ きっと
[シオン]あれ───KOS‐MOS
[アレン]驚きましたそっくりでしょう KOS‐MOSに
[アレン]開発コードTP‐XX
[アレン]略式名称[T‐elos/テロス]
[アレン]究極的な完成体───
[アレン]アリストテレスもびっくりって奴ですよ
[シオン][T‐elos/テロス]───
[シオン]これが アレン君の心配の元ってわけ
[アレン]ええ 半分当たり
[アレン]彼女はKOS‐MOSに代わって採用されたプロジェクトゾハルの中核
[アレン]対グノーシス用新型兵器の片方です
[シオン]え
[シオン]片方───って事は もう一体あるって事
[アレン]ええ 問題はそのもう一体の方なんですよ
[アレン]まぁ すぐに解ります
[アレン]というか───多分驚きますよ
[シオン]ちょっと あれ グノーシスじゃない
[シオン]何で あんなものがここに居るのよ
[アレン]今回の演習のために軍が[ヴェクター/う ち]から接収してったモノらしいですよ
[アレン]その辺の事情は僕より主任の方が詳しいんじゃないですか
[シオン]ヴェクターに捕獲されていたグノーシス───
[シオン]凄い なんて速さなの───
[アレン]仕様によると
[アレン]反応速度 ヒルベルト強度共KOS‐MOS[実戦筐体/バージョン0]の3倍だそうです
[アレン]まさに 星団連邦の切り札ですよ
[シオン]設計担当は誰なの?
[アレン]それが、どこの誰が設計したものか、
[アレン]素性の一切は、関係者にも知らされていないんですよ。
[アレン]せめてOSでもバラせれば、プログラムの癖から、ある程度見当は付くかも知れませんが。
[アレン]何せ、環境がプロプリエタリなもんで、手が出せなくて。
[アレン]あ、彼がT兵器の開発責任者のロート.マンテル氏ですよ。
[シオン]!?
[ディミトリ]何かわかったか?
[部下]申し訳ございません。提出されている履歴以外は何も。
[部下]支持母体の方も調べてみましたが、至ってクリーンです。
[ディミトリ]貴様の方はどうだ?
[セラーズ]見た事もないな。同業者の顔は全て憶えているつもりなんだがな。
[ディミトリ]ふむ。
[ディミトリ]あの男──奴らの波動を感じる。
[セラーズ]奴ら───移民船団の事か?わかるのか?
[ディミトリ]私を誰だと思っている?
[セラーズ]なるほど。
[セラーズ]移民船団の人間は、多かれ少なかれゾハルの波動への親和性がある。
[セラーズ]確かに貴様なら──で、どうする?
[ディミトリ]計画に変更はない。それならそれで利用させてもらうだけだ。
[ディミトリ]不要になれば、私自ら処分してくれる。
[ディミトリ]近く実行されるミクタム侵攻作戦の折にでもな。フフフフフ。
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]あれは───オメガ
[シオン]そんな────
[アレン]まぁ そういう事です
[アレン]だから言ったでしょ見れば解るって
[アレン]こちらではオメガ.レース.ノワエと呼んでいるらしいですが
[トガシ]ビビらないビビらない───なぁに、所詮見かけ倒しさ。
[トガシ]ようし、KOS‐MOS。出力MAXだ。
[トガシ]手加減なしで返り討ちにしてあげなさい。
[KOS-MOS]了解しました。
[KOS-MOS]過去の戦闘データを参照し、アサルトモードで対応します。
[KOS-MOS]40秒後に対敵予測。出力マキシマム。
[ユリ]パイロットの状態、よさそうね。
[研究員]はい。神経インパルスの値、正常値を維持。
[研究員]問題なさそうです。
[ユリ]聞こえるかしら?
[ユリ]これから少し大きな音が聞こえたり、光が見えたりするけれど、心配はいらないわ。
[ユリ]あなたは目の前の(ウェブパターン/もよう)にだけ集中していて。
[ユリ]そうすればとても気分よくなれるから。
[研究員]───ミズラヒ博士。
[研究員]彼、こちらの言葉、理解出来ているんでしょうか?
[ユリ]さぁ───
[ユリ]でも、何も言わないよりも言った方が効果的だとは思わない?
[研究員]ロスト.エルサレム時代に流行った胎教みたいなものですか。
[研究員]意味は理解できなくても、なんとなく行為者のニュアンスや意志が伝わるといった。
[ユリ]ただの、気休めよ。───私達にとってのね。
[ユリ]どうしたの?
[研究員]わかりません、脳波の値が不安定です。
[研究員]パイロットの精神状態に異常が。
[ユリ]エミュレーターとのリンクを遮断して!
[ユリ]急いで、このままでは暴走するわよ!
[ユリ]パイロットの様子は!?
[研究員]脳波安定しました。
[ユリ]オメガを回収して、コクピットの強制排出を。
[ユリ]すぐに、救助して。
[ロート]お疲れ様です、リッジリー主任。KOS‐MOS残念でしたね。
[アレン]いえ、ご心配なく。
[ロート]そちらの女性は?
[アレン]あぁ、KOS‐MOSの設計者の一人でウヅキ──
[ロート]そうですか!あなたが、シオン.ウヅキさんですね。
[ロート]お会いできて光栄ですよ。
[ロート]どうしました?私の顔に何か?
[シオン]え?あ、いえ別に───
[ロート]おっと、すみません。
[シオン]お忙しそうですね?
[ロート]まだまだ、開発途中なもので、いろいろと手間がかかるんですよ。
[ロート]今度またゆっくりお話いたしましょう。では、失礼。
[アレン]なんだよあの挑戦的な態度───
[アレン]とりあえず、出ましょう。
[シオン]そうね。
[ユリ]シオン──?
[シオン]───あ!?ユリさん?
[シオン]お久しぶりです。
[ユリ]グノーシス.テロ以来かしら、元気そうね。
[シオン]ユリさんも、こちらにいらしてたんですね。
[ユリ]ええ、計画には小委員会も関係しているから。
[ユリ]もっとも、やってる事といえば、数値の計測と子守ぐらいだけど。
[ユリ]お兄さんに聞いたけど、大変だったらしいわね。
[シオン]兄と会ってるんですか?
[ユリ]えぇ、仕事をちょくちょく頼んでるわ。
[ユリ]もしかして、お兄さんと会ってないの?
[ユリ]デュランダルが停泊してるって聞いてるけど、
[ユリ]お兄さん、彼らと一緒にいるはずでしょ。
[シオン]え、えぇ。いえ──実は、
[シオン]あの事件以来なんか、ギクシャクしちゃって───
[ユリ]そう、心配してると思うわよ。顔ぐらい見せてあげたらいいのに。
[シオン]善処してみます───
[ユリ]ん どうしたのかしら
[ユリ]これが欲しいの
[ユリ]いいわよ
[シオン]子供───
[ユリ]彼の名はアベル
[ユリ]彼との円滑なコミュニケーションが私の直接の仕事なの
[シオン]この子と───
[シオン]でも どうしてこんな子供が
[ユリ]彼もこのプロジェクトゾハルにとって欠かせない人材ですからね
[シオン]この子がプロジェクトゾハルの
[シオン]あ?これ───ネピリム?
[シオン]何故、彼女の姿を───
cf_g24
[ユリ]さて───と。T‐elosのデータフィードバックが終わったみたいね。
[ユリ]私はこれから政府のお歴々の接待。
[ユリ]ほんと、時間は貴重だというのに───ね。
[シオン]ウフフ
[ユリ]そうだわ、シオン。これからお友達に会ってみたらいかがかしら?
[シオン]え、でもそれは───
[ユリ]セクション7より先は、セキュリティーレベルBだけど、あなただったら問題ないでしょう。
[ユリ]何より、KOS-MOS計画の功労者ですものね。
[ユリ]保安部には私から連絡を入れておきます。
[シオン]あ、ありがとうございます。
[ユリ]この先のターミナルから、トランスポーターに乗るといいわ。
[ユリ]それで、ヴェクターの研究棟までいけるはずよ。
[シオン]これは───VX-7000じゃない!?
[アレン]例のグノーシス.テロの影響ですよ。
[アレン]いつどこでグノーシスに襲われるか分かりませんからね。
[アレン]上の方も神経質になってるんですよ。
[シオン]そっか、ヴェクターも参加してるんだから当然よね。
[アレン]懐かしいですか?
[シオン]まぁ、ね──
[トガシ]主任!
[研究員]主任、お帰りなさい。
[シオン]みんなも元気そうで安心したわ。さっきの演習残念だったわね。
[トガシ]まぁ、相手がアレですから善戦したほうですよ。
[シオン]ええ、まぁ───ね。
[シオン]ところで、その主任てのやめてくれない?
[シオン]もうここの人間じゃないんだし。
[トガシ]主任がどこに行こうと、何になろうと、
[トガシ]僕らにとっては変わらず大事な主任です。
[トガシ]ね?新主任。
[アレン]え?あぁ、まあね。
[シオン]ふふ。ありがとう、みんな。
[シオン]KOS‐MOSは?
[トガシ]派手にやられましたからね。今、タブで調整中です。
[シオン]KOS‐MOS───あなた、今でもがんばってるのよね。
[シオン]それなのに──私は何をしてるのか。
[シオン]こんな私を見て、あなたはどう思うのかしら。
[アレン]主任──
[シオン]アレン君?
[アレン]やっぱ、気になりますか?KOS‐MOSの事。
[シオン]気になるっていうか───
[シオン]久しぶりにKOS‐MOSやみんなに会ったら、
[シオン]なんだか、私だけ取り残されちゃったような───
[シオン]そんな気分になっちゃって───ね。
[アレン]主任───
[シオン]ごめん。そろそろ行くわね。今日はありがとう。
[アレン]主任!明日!
[シオン]?
[アレン]あ、明日、街で食事しませんか?
[アレン]こないだ美味しいお店、見つけたんです───
[シオン]うん、いいわよ。
[アレン]そっか───やっぱ忙しいですよね。だったらまたの機会に───
[シオン]だから、いいって。
[アレン]は?え?
[アレン]ほ、ホントに?
[シオン]うん。時間は?私はいつでも構わないけれど。
[アレン]え、えっと───じゃあ、午後7時にホテルのロビーに。
[アレン]僕、迎えに行きますから。
[シオン]わかった。待ってるわ。
[アレン]あ、あ、ありがとうございます!それじゃあ、おやすみなさい!
[シオン]おやすみ。
[ロート]失礼。
[ロート]ここがKOS‐MOSの調整ルームですか?
[ロート]思ったより、規模が小さいんですね。
[トガシ]ロート.マンテル特別顧問?
[トガシ]なんです、敗者に嫌味でも言いに来たんですか?
[アレン]よせよ。
[アレン]失礼しました。何かあったんですか?
[ロート]いやぁ、気にしないでください。彼の言う事もあながち間違っていないんです。
[アレン]え?
[ロート]いや、だから、敗者に引導を渡しに来たんですよ。
[ロート]みなさんには、早急に荷物をまとめてもらって、
[ロート]曙光の方へ引き上げてもらう事になります。
[トガシ]ちょっと待てよ!KOS‐MOSの修理はどうするんだよ!?
[ロート]必要ないんですよ。
[ロート]KOS‐MOSが目覚める事は、もうないんですから。
[アレン]それは、どういう──
[ロート]こういう事です。
[アレン]これは──
[アレン]───KOS‐MOSの廃棄処分の決定って──
[アレン]なんですかこれ!?
[ロート]そのままの意味ですよ。先ほど、委員会の決議により決定しました。
[ロート]余計な事に力をさくよりも、
[ロト]これより先、T‐elosの開発に全力を注ぐ方が良いという事です。
[ロート]残念ですが、このままスクラップという事ですね。
[アレン]そんな───KOS‐MOSが廃棄処分だなんて───
[ドクトゥス]これが、T兵器のデモンストレーション映像ね。
[ドクトゥス]さりげなく政府の機密情報を録画しちゃうあたり、抜け目ないわね。
[ドクトゥス]GNNのレポターになればかせげるんじゃない?
[シオン]もう、くだらない事言ってないでちゃんと見てよ。
[シオン]どう、この映像から情報を引き出せる?
[ドクトゥス]すぐには無理。ちょっと時間をもらうわよ?
[シオン]ええ、お願い。
[シオン]このT兵器と素性の知れない開発者。
[シオン]そんなものが政府のプロジェクトの中枢にいるのよ。
[シオン]叩けばいろいろ出てくると思うわ。
[ドクトゥス]こっちにまわしたって事は、ヴェクターも絡んでると踏んでるんでしょ?
[ドクトゥス]でも、KOS-MOSの開発は中止されたわけじゃない?やる事が回りくどくなくて?
[シオン]たしかにそうね。
[シオン]でもあのT‐elosの姿──ヴェクターが無関係とは思えないわ。
[シオン]私達の知らない所で、何かが急速に動き始めてるのよ。
[ドクトゥス]OK、そっちは任せて。
[ドクトゥス]それと、前回手に入れたデータアレに面白い物が混じってたわ。
[シオン]面白いもの?父の情報?
[ドクトゥス]いいえ、それはまだ。
[ドクトゥス]実は、カナンってキーワードが見つかってね。
[シオン]カナン?って、あのカナンの事?
[ドクトゥス]いいえ、レアリエンではなくて、
[ドクトゥス]観測用か調査用か、そんな類のプログラムとかシステムの名称だと思う。
[シオン]カナン──
[ドクトゥス]詳しい目的は分からないけどヴェクターはこの“カナン”を
[ドクトゥス]100年以上も前から使用して、何かを探っているのは間違いなさそうよ。
[シオン]もう少し詳しい調査をお願いできる?
[ドクトゥス]いいけど、追加料金が掛かるわよ?
[シオン]何よ、お金とるの!?
[ドクトゥス]あはは、冗談よ。
[ドクトゥス]あのレアリエンとも何か関係があるかもしれないからね。サービスしとくわ。
[シオン]!
[シオン]ネピリム──どうしたの?
[ネピリム]誰かを護ろうとする事が、幸せに繋がるとは限らない。
[シオン]──何?
[ネピリム]グリモアは───私を探したかっただけ───
[ネピリム]でもそれは、多くの人を不幸にした───
[ネピリム]彼が消えた事で、拡大するグノーシス現象は止まる筈だった。
[ネピリム]でも、そうではなかった。
[ネピリム]シオン。今起きているグノーシス現象は、レメゲトンによるものではないわ。
[ネピリム]ある存在が、この宇宙を崩壊へと導いている。
[シオン]宇宙の崩壊?
[シオン]そんなまさか。ある存在ってなんなの?
[ネピリム]自らの(贖罪/しょくざい)の為にあり続ける悲しき存在。
[ネピリム]大切な人の事を願いつづけ、でもそれは───多くの人を不幸にする。
[シオン]贖罪───?大切な人───?
[ネピリム]そう、自分と同じくらい大切な人の為に───
[ネピリム]彼はこの世界を捨ててもいいと考えている。
[ネピリム]シオン。
[ネピリム]私達がどこに行こうとしているのか、
[ネピリム]知っているのはKOS-MOSだけ。
[ネピリム]KOS-MOSの心を開かせる事が出来るのはあなただけなの。
[ネピリム]だから───
[シオン]待って───
[シオン]ネピリム───
[シオン]KOS-MOSの心───
[ネピリム]やっぱり───伝えられなかった。
[ケイオス]うん───
[ネピリム]今のシオンにとっては辛すぎる真実───
[ネピリム]知らないまま通り過ぎる事ができるのなら、どんなに楽な事か。
[ケイオス]真実を知る事が幸せになるとは限らない。
[ケイオス]知らないで済めばその方が幸せかもしれない。
[ケイオス]でも、時として真実の方から近づいてくる事もある。
[ケイオス]シオンがここにいる事がそれを告げているような気がする。
[ケイオス]シオンは知らなければいけないんだ。
[ネピリム]そうかもしれない。でも、このままだとシオンの身体も(精神/こころ)もいずれ───
[ケイオス]それが必然だとしたら?
[ケイオス]僕がこの世界に存在する事も、君が存在する事も、
[ケイオス]全てがある一点へと流れゆくこの世界の必然なのかもしれない。
[ケイオス]そこに、あるべくしてあるもの。それが僕らの存在意義だとしたら───
[ネピリム]私は、未来の姿が一つだなんて思ってはいない。
[ネピリム]人の思い一つで、世界の色は変わる。
[ネピリム]そう人々に教えたのは、他のだれでもない、あなた───
[ケイオス]僕に出来る事は限られている。
[ケイオス]この力をどう使えばいいのかさえ、いまだ分からないんだ。
[ケイオス]僕は、何の為に存在を許されているのか───でも───
[ネピリム]ケイオス───
[ケイオス]混沌から生まれる秩序の存在を僕は信じたい。
[ケイオス]その為に僕は彼女達と共に──
[カナン]やはり、あのロート.マンテルという人物に関するデータに怪しい点はないな。
[カナン]念の為、ヴェクターも調べてみたが、一切の情報はなかった。
[ユリ]ディミトリもその程度の調査はしているでしょうね。
[ユリ]でも何故今になって、プロジェクトの中枢に据えたりしたのかしら?
[カナン]それだけ、あのT兵器が魅力的だったという事か?
[カナン]ヴェクターの影響力を排除したかったとも考えられる。
[ユリ]そうね。でもそれだけじゃない──きっと何か他に裏があるのよ。
[カナン]もう一つ、エルザに関する情報だが───
[カナン]あの超球面体を突破する為には、
[カナン]オメガが装備している相転移砲並みの出力が必要となる。
[ユリ]ありえない話ね。システムが不安定なモノを使用できるはず無いわ。
[ユリ]第一ディミトリが許可を出すわけが無い。
[カナン]では、現在の連邦の技術では、あの超球面体を突破する事は不可能だ。
[ユリ]エルザの救出は諦めろって事?
[カナン]いや、連邦の技術では無理だと言っただけだ。
[カナン]俺のデータベースにある情報で、唯一あの超球面体を突破できる兵器がある。
[ユリ]唯一の兵器?
[カナン]KOS-MOS第三種兵装。
[カナン]E.S.と同程度の出力を出せるKOS-MOSならば、
[カナン]あるいは超球面体を突破する事が可能かもしれん。
[ユリ]無理な事ばかり言って。あなたは状況分析力が欠けているの?
[ユリ]KOS-MOSもすでに廃棄が決定しているのよ。
[ユリ]どうすれば、第三種兵装を装備させて、
[ユリ]あの宙域に送り込めるというのよ?
[カナン]失礼だが、状況分析ができていないのはあなたの方だミズラヒ委員。
[カナン]戒厳令の敷かれた危険宙域に、調査任務の為に違法潜入した貨客船など、
[カナン]その存在さえ認められない。
[カナン]存在しないモノを救出しようというのだ、それなりの覚悟は必要だろう。
[ユリ]それなりの覚悟──
[カナン]そうだ、どうせ廃棄処分になったのだ。再利用しない手は無い。
[ユリ]───まったく、大胆な事を考えるわね。
[カナン]俺はそういう目的の為に作られた特別製だからな。
[マーグリス]──いま、なんと申されました?
[ハインライン]捨て置け、と言ったのだ。聞こえなかったのか?
[マーグリス]恐れながら、あのオメガは元は我らの物。それを捨て置けとは──
[マーグリス]猊下、何とぞ奪還のご指示を。
[ハインライン]その必要はない。
[マーグリス]なればその理由を。
[マーグリス]先のレンヌ.ル.シャト撤退の件についても解せぬ事ばかり。
[マーグリス]何とぞ、猊下のお考えをお聞かせ願います。
[ハインライン]オメガは本来の主の下へと戻ったのだ。
[ハインライン]プロジェクトゾハルに対する手も打ってある。
[ハインライン]審問官長のお前が口を挟む事ではない。
[マーグリス]本来の主?あれは我らの物ではなかったと?
[マーグリス]そのような話、このマーグリス、聞かされてはおりませぬ。
[マーグリス]現に15年前、ミルチアで私はあれを──
[ハインライン]出過ぎるな、マーグリス。
[ハインライン]お前も、セルギウスのように己が欲に取り込まれ、信仰を失うつもりなのか?
[マーグリス]い、いえ、決してそのような事は───申し訳ございません。
[ハインライン]少し疲れているようだな、マーグリス。暫く休むがいい、下がれ。
[マーグリス]──は
[ハインライン]マーグリス。すべては神の意思、余計な心配をする必要はない。
[ハインライン]何も考えず、私の指示の通りに動けばいい。
[赤の外套者]すべての準備は整いました。
[ヴィルヘルム]ご苦労だったね。
[ヴィルヘルム]この螺旋にくまれた蜘蛛の巣は、確実に彼女の心を捕らえる事ができる。
[赤の外套者]後は、彼女が真実を手に入れる為、
[赤の外套者]望んでその糸を自らの身体に巻きつけるでしょう。
[ヴィルヘルム]人とは何故、常に探し求めようとするのだろうね。
[赤の外套者]意識は無限の可能性を秘めているもの。
[赤の外套者]探し、追い求めればいずれ神なる存在と一体となれると───
[赤の外套者]そう錯覚しているのでしょう。
[ヴィルヘルム]僕らに出来る事は限られている。
[ヴィルヘルム]だからこそ、僕らに相応しい世界が必要なんだ。
[ヴィルヘルム]それをなせるのは、ほかならぬ僕ら自身───
[ヴィルヘルム]夢、未来、可能性───
[ヴィルヘルム](儚/はかな)い幻想を断ち切る為に、彼女は誕生した───
[ヴィルヘルム]全ては定められた流れのままに───
[アレン]まったく、主任になんて説明すればいいんだよ。
[アレン]KOS-MOSの廃棄処分が決定したなんて、言えるわけ無いじゃないか───
[ユリ]考え事をしながら步いていると危ないわよ?
[アレン]うわ!?あ、ミズラヒ委員?あの、なんでしょうか?
[ユリ]リッジリー主任、少しいいかしら?
[アレン]えぇ、構いませんけど?
[ユリ]急ぎ、シオンに連絡をとってもらいたいのだけれど、
[ユリ]パーソナルの連絡先、分からないかしら?
[アレン]それはいいですけど、何かあったんですか?
[ユリ]KOS-MOSの廃棄、決定したでしょう?
[ユリ]その事で、彼女に相談があるのよ。
[ユリ]もちろん、あなたにも一緒に来てもらいたいのだけど?
[アレン]そうか、そうですよねミズラヒ委員が知らないわけ無いですよね。
[アレン]実は、僕もKOS-MOSの事をどう伝えようか、悩んでいたところで───
[ユリ]安心してちょうだい。KOS-MOSは絶対に廃棄処分にはさせないわ。
[ユリ]その為の悪巧みよ。
[アレン]───?
[ドクトゥス]見せてもらったわ、例の映像。驚嘆の一語に尽きるわね。
[シオン]で、何かわかったの?
[ドクトゥス]一応こちらでT‐elosについて調べてみたけれど、
[ドクトゥス]関係する事象はどのデータベースにも存在しなかったわ。
[ドクトゥス]計画の立案から予算編成、監察官庁に至るまで何もかも真っ白よ。
[シオン]彼らの支持母体にも?機密保持の為、本人によって消去されているとかは?
[ドクトゥス]いいえ、最初からすべての記録が何一つ存在しないのよ。
[シオン]そんな事ってありえるの?
[シオン]第一、軍はあれを採用しているのよ?
[ドクトゥス]さぁね───でも、実際そうなんだから仕方がないわ。
[ドクトゥス]でもね──表が真っ白って事は、裏を返せば真っ黒って事じゃない?
[ドクトゥス]ねぇ、KOS-MOSってU.M.N.からの直接転送って可能なの?
[シオン]いいえ。KOS-MOSに限らず高次AIの類はU.M.N.チューブ───
[シオン]つまり、ハイパースペース内を介さないと機能に障害が出るわ。
[シオン]要するに移送の際には何らかの船舶が必要よ。それが?
[ドクトゥス]実は、一週間ほど前、フィフス.エルサレムの47番ポートに、
[ドクトゥス]一隻のハイアムズ社所有のドミニコ型輸送船が寄港しているの。
[ドクトゥス]その積載情報を調べてみたら面白い物が見つかったのよ。
[ドクトゥス]港の重量感知計の記録で、入港時の総重量は3751t。
[ドクトゥス]対して出港時は3750.79t。
[ドクトゥス]ドミニコ型の定員は三名。この重量の変動は人間によるものじゃない。
[ドクトゥス]つまりペイロードから何かが運び出された事をこの記録は物語っている訳。
[ドクトゥス]通常、コンテナターミナルに運び込まれる貨物は、
[ドクトゥス]たとえそれが政府の機密であっても、必ず何らかの登録がされている。
[ドクトゥス]ところがこいつには───
[シオン]記録が無かった。
[ドクトゥス]そう。
[ドクトゥス]KOS-MOSのメンテに最低限必要な機材の総重量って判る?
[シオン]そうね───(筐体/きょうたい)の仕様によっても変わるけど、
[シオン]大体200kgってところかしら───
[シオン]!
[ドクトゥス]かなりビンゴに近いかもね。
[ドクトゥス]これがフィフス.エルサレムで建造されていない限り。
[シオン]だったら、あのT‐elosの開発にオルムスが絡んでるって事?
[シオン]でも、一体なんの為にそんな事を───
[ドクトゥス]さぁ?でも、あからさまよね。
[ドクトゥス]まるで、関係してますよって言ってるみたいにも思えるわ。
[ドクトゥス]何かを誤魔化す為にね。
[ミユキ]やっほ!
[ミユキ]って、ずっるーい。もうみんな揃ってるぅ。
[ミユキ]一言連絡ぐらい欲しかったなぁ~もう。
[ドクトゥス]つい今し方揃ったところ。
[ドクトゥス]ところで、この前頼んでおいた件、用意できたのかしら?
[ミユキ]もう、ばっちり。
[ドクトゥス]シオン、あなたの父親の事も大体調べはついたわ。
[ドクトゥス]いい?この世には知らなくていい事もあるの。
[ドクトゥス]それでも、あなたはこの情報を知りたいのね。
[シオン]えぇ、はっきりさせなきゃならないの。
[ドクトゥス]これは、15年前のU-TIC機関に関する記録よ。
[シオン]連邦先進技術特別監察局───
[シオン]これが当時のU-TIC機関監察官庁の名前ね。
[ミユキ]はい。それと───
[ミユキ]当時の連邦政府から監察官として───
[ミユキ]ミルチアに赴任していた人ですが───
[ミユキ]────
[シオン]間違いなかったのね?
[ミユキ]───はい。先輩の───言っていた通りでした。
[シオン](スオウ.ウヅキ/とうさん)はU-TIC機関の監察官だった。
[シオン]やはり父さんとミズラヒ博士の間には、
[シオン]何らかの接点があったって事ね。
[ドクトゥス]シオン───
[ミユキ]だからって、先輩のお父さんがミズラヒ博士と結託して、
[ミユキ]グノーシスを召還したと決まった訳じゃないじゃないですか。
[ミユキ]ほ、ほらよくあるでしょう?
[ミユキ]政府の官僚が無能で、現場の暴走を止められなくて大惨事になっちゃうって事。
[シオン]はぁ───?
[ドクトゥス]なんつー(喩/たと)えよ、それ。
[ミユキ]え、え、だってぇ───
[シオン]いいの、気にしないで。
[シオン]最初から予想していた事だし、仮にミユキの言うように無能な官僚だったとしても、
[シオン]これだけの事態を傍観していた事は明らかに罪よ。
[ミユキ]──────
[シオン]私が事件に関係する事を兄さんが快く思わない理由もこれではっきりしたし、
[シオン]むしろスッキリしたわ。
[ミユキ]先輩───
[シオン]そうよ───予想していたのよ、私は───
[シオン]だから───
[ミユキ]あ?アレンさんからだ。
[シオン]いいわ、こっちで取るから。
ce002_100
[ミユキ]せ、先輩!
[ドクトゥス]シ、シオン!
[アレン]こんばんは───って、あれ?
[アレン]ど、ど、どうしたんですか主任!
[ドクトゥス]シオン!
[アレン]主任!しっかりしてください!主任ー!!
[シオン]アレン───君───
[アレン]大丈夫ですか?主任。
[アレン]通信が繋がったと思ったら、急に倒れちゃったんでびっくりしましたよ。
[シオン]来てくれたんだ。
[アレン]ま、僕が一番近いですから。
[シオン]そっか。
[アレン]もっとも100万光年離れていても、真っ先に飛んで来ますけどね。
[シオン]くす。
[アレン]何か飲みます?
[アレン]さっきまでMCに来てもらっていたんですけど、恐らく過労だろうって。
[アレン]色々と無理してるんじゃないですか?
[シオン]うん───ごめんね。心配かけて。
[アレン]あ、だめですよ、まだ寝てなくちゃ。
[シオン]もう大丈夫よ。
[シオン]今日は色々あったから、そのせいね、きっと。
[アレン]主任───あの、ミズラヒ委員から伝言があるんですけど。
[シオン]ユリさんから?
[アレン]ええ、相談したい事があるから明日、デュランダルでお会いしたいって───
[アレン]でも、調子が悪いようでしたら、日時を変更してもらいますけど?
[シオン]心配性ね。もう大丈夫よ。
[シオン]あ、でも、明日って───
[アレン]いや───いいんですよ。
[アレン]ミズラヒ委員の話の方が重要ですし、
[アレン]僕との約束なんか気にしなくても───
[アレン]ディナーなんかしている暇ないですよ。
[シオン]ねぇ、ちょっと外に出ようか。
[アレン]え?えぇ、主任さえよければ僕は構いませんけど。
[シオン]んー、気持ちいい。
[シオン]私、夜の空気って好き。
[アレン]そうですね、ここら辺は環境保全地域ですから緑も多いんですよ。
[シオン]ごめんね。せっかくの明日のディナーの予定。
[シオン]こんな形で代用させちゃって。
[アレン]いーえ、とんでもない。僕としては場所なんてどこでも良かったんですよ。
[アレン]むしろこういったシチュエーションの方が大切だったり───
[シオン]え?シチュエーション?
[アレン]い、いや、何でもないです。こっちの話です。
[アレン]あちー!
[シオン]あっ!
[アレン]ああっ、す、すみません。
[シオン]良かった。
[シオン]もうちょっとで豪華なディナーが台無しになるところだったわね。
[アレン]豪華───って、これただのプロシュートですよ?
[シオン]もう───思い一つで世界の色は変わるのよ?
[シオン]軽食だって、立派なディナーになるんだから───
[シオン]あ───
[アレン]?
[シオン]前にもこんな事言ったかなって───
[シオン]ケビン先輩もね、こういう風に食事するの好きだったから。
[アレン]ケビンさんと───その、よく食事されてたんですか───?
[シオン]うん。
[シオン]私、新人だったからいつもおごられてばかりだったけどね。
[アレン]そう───ですか───
[カナン]いつまで、そこにいるつもりだ?
ce005_100
[ドクトゥス]さすが、簡単に後ろは取らせてもらえないわね。
[カナン]何の用だ?
[ドクトゥス]単刀直入に聞くわ。あなたは何者なの?
[カナン]何をいまさら──俺のパーソナルデータはすでに渡してあるはずだが?
[ドクトゥス]そんな、上塗りされた情報には興味がないわ。
[ドクトゥス]知りたいのは創られた時のものよ。
[カナン]───どういう意味だ?
[ドクトゥス]あら、誤魔化すつもり?
[ドクトゥス]ヴェクターの機密データにのみ記載されている、監視用プログラムの名称。
[ドクトゥス]プログラム.カナン。
[ドクトゥス]あなたの思考に組み込まれているはずよ。
[カナン]プログラム.カナンだと?ただのブラフだな。
[カナン]俺のデータベースには、そんなキーワードは存在しない。
[ドクトゥス]白を切るつもり?それほどまでに、何を隠そうとしているの?
[カナン]───待ってくれ、俺は本当に知らん。
[カナン]そんなプログラムが存在するのか?
[ドクトゥス]なるほど、本人にさえ知らされていない機能ってわけね。
[ドクトゥス]いいわ、信じてあげる。
[カナン]これは?
[ドクトゥス]ヴェクターから手に入れた、プログラム.カナンに関する断片情報よ。
[ドクトゥス]真偽を確かめたいのなら、自力でがんばることね。
[ドクトゥス]そうそう、忠告しておくけど、
[ドクトゥス]あなたがそのプログラムの存在を知らなかったとしても、それは、
[ドクトゥス]あなたの行動に何かしらの影響を与えているはずよ。
[ドクトゥス]もし、私達の邪魔をするようなら、それが貴方の意思でないとしても、
[ドクトゥス]遠慮なく処分させてもらうから。そのつもりでいて。
[カナン]────
[シオン]そろそろ時間かな?宇宙港だったわね、急がなくっちゃ。
[Jr.]よぉシオン。元気そうじゃねぇか!
[シオン]みんなも、変わりなさそうね。
[ジン]シオン!
[シオン]に、兄さん!?
[シオン]そっか、兄さんも一緒だったのすっかり忘れてたわ。
[ジン]久しぶりに会った兄に対しなんですか、その挨拶は?
[ジン]みなさんもう集まってるんですよ?
[ジン]あなたももう少し時間に余裕を持ってですねぇ───
[シオン]はいはい、みんな集まってるんでしょ?早く話を始めましょうよ。
[Jr.]くくく、シオンもぜんぜん変わんねぇな。
[Jr.]ユリさん達が待ってるぜ。こっちだ。
[ユリ]シオン、KOS-MOSの話は聞いている?
[シオン]KOS-MOS?いえ、どうかしたんですか?
[アレン]ミズラヒ委員、それは僕の方から。
[アレン]主任、K
OS-MOSの廃棄が決定したんです。
[シオン]廃棄?そんな──うそよ。
[ユリ]残念だけど、本当よ。
[ユリ]昨日をもって、廃棄処分となったわ。
[シオン]KOS-M
OS───
[ユリ]気持ちはわかるけど落ち込んでいる暇はないわ。
[ユリ]いいシオン、これから話す事をよく聞いて。
[ユリ]そして、どうするかを決断して頂戴。
[シオン
]?
[ユリ]まずこれを見て。
[シオン]これは?
[Jr.]オルムスとの戦闘中に出現した超球面体。
[Jr.]これにエルザが飲み込まれたんだ。
[ユリ]そう、現在この超球
面体は縮小を始めてるわ。
[ユリ]おそらくこのままプランクスケールまで縮小し、この次元から消滅するでしょう。
[シオン]そんな、じゃエルザは!?
[ユリ]このままの状
態では超球面体と共に、
[ユリ]位相空間へ飛ばされる事になる。
[ユリ]そうなれば、私達の力では救出は不可能となる。
[ユリ]この球対面を突破しない限りエルザを助ける
事はできないわ。
[Jr.]だが、デュランダルやE.S.の攻撃にもびくともしないんだぜ?
[ユリ]あの超球面体の表面は、虚数領域へと繋がっているわ。
[ユリ]通常攻撃
ではまるで歯が立たないも同然よ。
[ユリ]唯一の弱点は、クライン.ポイントと呼ばれる部分。
[ユリ]このポイントを高出力の兵器で撃ち抜き、
[ユリ]空間を逆転させる事
ができればあるいは───
[Jr.]むちゃくちゃだぜそんな事できんのかよ?
[シオン]そうか!KOS-MOSよ、KOS-MOSの相転移ユニット!
[ユリ]そう、KOS
***
[ユリ]あの超球面体を突破できるかもしれないのよ。
[アレン]でも、KOS-MOSは廃棄処分になったんですよ?いまさらどうしろと?
[アレン]第一、本社だって第三種兵装の使用許可なんか出さないですよ?
[シオン]それは───
[ユリ]そう、だからみんなに集まってもらったのよ。
[ユリ]KOS-MOS
は現在プロジェクトゾハルの施設内で処分される事になってるわ。
[ジギー]まさか、KOS-MOSを盗み出すと言うのか?
[ユリ]それ以外に、エルザを救う方法はないわ
。
[ユリ]潜入に関しては、私が手引きをしてあげる。
[ユリ]でも、危険な事には変わりはないわ。
[ユリ]決めるのはあなた達よ。
[シオン]いいわ、やります。
[シオン]エ
ルザのみんなも、KOS-MOSも、
[シオン]このまま見捨てる事なんてできないもの。
[ジン]シオン──
[Jr.]そうだな、ここであいつらにでっかい貸しを作っておけ
ば後々利用できそうだしな。
[ユリ]じゃ、決まりね。
[ユリ]超球面体の縮小がいつまでもつか分からない以上、すぐに行動を起こす必要がある。
[ユリ]決行は今夜よ。
[シ
オン]ええ、いいわ。すぐに準備に入りましょう───
[アレン]主任?大丈夫ですか?
[シオン]うん。私の方は───大───丈夫───
[ジン]シオン?
[シオ
ン]───
[アレン]主任!
[ジン]シオン───
[アレン]あ、ジンさん。
[ジン]ご苦労様。疲れたでしょう。
[ジン]ここは私が代わりますから、休んできてください。
[アレン]いえ、僕は大丈夫です。
[アレン]それより主任の診断の結果、どうでした?
[ジン]ここの医療スタッフでも倒れた原因は判らないそうです。
[ジン]過労か何かだろう──とのことでしたが───
[アレン]主任、ホテルでも一度倒れているんですよ。
[アレン]ここのところ忙しかったみたいだから、そのせいなのかな───
[ジン]そう───ですか───
[ジン]具合はどうですか?
[シオン]ごめん、心配かけて。
[ジン]スキエンティア───彼らとはまだ?
[シオン]なんだ、知ってたんだ。
[ジン]アレン君が忙しそうだって言ってましたからね。
[ジン]多分そうじゃないかと。
[ジン]お前は幼い頃から一度こうと思うと猪突猛進。
[ジン]やめろと言って聞くようなたまでもないでしょう。
[シオン]よく存じていらっしゃる。
[ジン]ま、息災ならいいんですよ。息災なら───ね。
[シオン]───?これ───漢方薬。
[シオン]もう───素直に渡せばいいのに、かわいくないなぁ。
[ユリ]身体は大丈夫?
[シオン]えぇ、疲れが溜まってただけですから。もう、こんなに。
[ユリ]うらやましいわね。
[シオン]?
[ユリ]だってそうでしょう?
[ユリ]グノシス.テロの後、ヴェクターを辞めてからのあなたは、
[ユリ]自分の信じた道を步んでいるように見えるわ。
[シオン]どうでしょう───自分ではよく解りません。
[ユリ]その点、私はまた性懲りもなくこんな事をしている───
[ユリ]それが正しい事かどうか、深く考える事を放棄してね。
[シオン]オメガの開発に携わっている事が、ですか?
[ユリ]そうね。あれはその目的も定かではない、絶対的な力を持った兵器よ。
[ユリ]本来あってはいけないモノ───
[ユリ]なのに私は、世間に自分を肯定させる為にその開発に携わっている。
[ユリ]ミズラヒという不名誉な名を消す為だけに───
[シオン]KOS-MOSも───本来あってはいけないモノなんでしょうか?
[ユリ]シオン。彼女は兵器ではないわ。
[ユリ]科学者の私がこんな事を言うのも変だけれど、
[ユリ]KOS-MOSは、何かとても大切なモノを持っているような気がするの。
[シオン]大切なモノ───
[ユリ]ヒトベースのレアリエンとは違い、KOS-MOSは完全な機械体。
[ユリ]タンパク質の集合体である我々と、機械の彼女に、
[ユリ]一体どれほどの差があるというのかしら。
[ユリ]どちらもこの宇宙を構成する波の一つ。違うのはその波折りの数だけ。
[ユリ]私達にココロが、意識があるのなら、
[ユリ]機械である彼女にもあるのは自明の理。
[ユリ]私はそう思うわ。
[シオン]KOS-MOSにはココロが宿っているんでしょうか───
[ユリ]あなたもそれを望んでいるのではなくて?
[シオン]そうなのかもしれません。
[シオン]でも───違うのかもしれない───
[ユリ]あなたがどんな思いで彼女を創ったのかは、私には(窺/うかが)い知れないわ。
[ユリ]でもね、何があってもKOS-MOSを、
[ユリ]そして何よりそのKOS-MOSを創った自分自身を信じてあげなさい。
[ユリ]それは創造した者の責でもあるのよ。
[シオン]ユリさん───
[Jr.]ユリさんは施設に戻ったのか?
[シオン]ええ、私達の潜入の為の準備をするって。
[Jr.]そんじゃ、こっちも準備を始めるとするか。
[Jr.]時間はあまり無い、各自必要な物をそろえてくれ。
[ケイオス]集合は、シオンの宿泊しているホテルのロビーがいいよ。
[ケイオス]市街地の方が変に怪しまれずに済むし、施設からも近いしね。
[Jr.]シオンはそれでいいのか?
[シオン]ええ、かまわないわ。
[Jr.]よし、行動開始だ!
[Jr.]みんな、準備はいいな。
[アレン]いいですか、相手は星団連邦軍の重要施設です。
[アレン]侵入者に対しては問答無用で攻撃してきますから。気を引き締めてくださいよ。
[Jr.]お前が一番心配なんだけどな。
[アレン]あ、ひどいなぁ。
[アレン]これでも、僕はあの施設の内部を一番理解しているんですよ?
[シオン]わかってる。頼りにしてるわよ。
[アレン]主任───
[ジン]和んでるところ申し訳ないが、あまり時間がありませんよ。
[ジン]早く出発しましょう。
[ミユキ]せんぱーい、こっち、こっち!急いでくださーい。
[アレン]こらこらこら、そんな大声出すんじゃない。
[アレン]見つかったらどうするんだよ、まったく。
[アレン]───で、準備の方は?
[ミユキ]ばっちり!セキュリティーに細工を施しましたから、中はフリーパスですよ。
[シオン]───今度はミスしてないでしょうね?
[ミユキ]信用ないなぁ、もぉ───
[ミユキ]危ないことするな、とかなんとか言っておいて、結局は手伝わせるくせに───
[シオン]仕方ないじゃない。他に頼れる人いなかったんだから。
[ミユキ]ドクトゥスはぁ?
[ミユキ]スキエンティアの連中だっているじゃないですかぁ。
[シオン]彼女らは別件で忙しいの。
[シオン]第一、これは私たちの問題でしょ?頼るわけにはいかないわ。
[ミユキ]あー。やっぱり、代打要員じゃないですかぁ。
[アレン]ぷっ、あははは。
[ミユキ]こらそこっ!笑うなぁ!
[Jr.]で、どうやって潜入する気だ?
[ケイオス]メインゲートは封鎖されてるはずだよね?
[アレン]大丈夫。この下のモノ.キャリアーを使えば潜入できます。
[アレン]あと、施設内の移動はトランスポーターを使ってください。
[アレン]ルートとしては、まず2番デッキから演習場に行きます。
[アレン]その後、演習場の先にある5番デッキのトランスポーターを利用すれば、
[アレン]KOS‐MOSのいるヴェクターの研究棟へ行けますよ。
[ミユキ]そうそう、後の事はこのミユキちゃんにお任せを!
[ミユキ]いざという時の用意もしてきましたからね。
[ミユキ](警備/ガード)との戦闘でも十分役に立って見せますよ!えへへへ。
[シオン]貴方の役目は、そのいざという時を起こさない為のものでしょう?
[シオン]しっかりしてよ、もう。
[Jr.]ぷっ、あははは。
[ミユキ]こらっ!笑うなぁって言ってるのにぃ!
[ケイオス]ぷっ、あははは。
[ミユキ]みなさん、お疲れ様でしたぁ。
[ミユキ]後はこのエレベーターで、研究棟のある階まで行くだけですから、
[ミユキ]もう安心ですよ。
[Jr.]なんだよ、意外と楽勝じゃん?
[ミユキ]だから、ばっちりだって言ったじゃないですか!
[ミユキ]えっへん!
[シオン]はいはい、頼りになるのは解ったから、早く行きましょう。
[ミユキ]では!───────あれ?おっかしいなぁ??
[シオン]どーしたの?時間が無いのよ、早くして。
[ミユキ]あの、それが───
[ミユキ]エレベーターが反応しないんですけど────
[シオン]─────ミユキ。あなた、またやったのねぇ?
[ミユキ]え?ええ?いや、ほら、大丈夫ですよ!?
[ミユキ]だって、こんな事もあるかと思って、
[ミユキ]ちゃんと、別のルートも用意してあるんですから!?ね?ね?
[シオン]本当に大丈夫なんでしょうね?
[ミユキ]い、いやだなぁ、大丈夫ですよぉ?さ、さぁ、行きましょう!
[シオン]─────
[シオン]どうなってるの?エレベーターが通り過ぎたわよ?
[ミユキ]え?え?あの?
[ミユキ]────どうしてでしょう?
[シオン]───あなた、またミスしたのね?
[ミユキ]えーそんなぁ───ちゃんと、確認したんですよぉ?
[ジン]これは彼女のミスではありませんよ。
[ジン]何者かが、意識的に我々を誘導しているようです。
[シオン]私たちを───誘っているの?
[ジギー]このエレベーターはどこに繋がっているんだ?
[アレン]えーとですね───
[アレン]このまま下がると、地下の大型格納庫まで行くはずですが───
[Jr.]なるほど、そこに何かがあるって事か。
[シオン]────
[Jr.]おい あれを見ろよ
[ジン]あれは
[ジン]オメガ───
[Jr.]あのバカ親父こんなモンまで揃えて
[Jr.]一体何をするつもりだ───
[Jr.]シオン
[アレン]主任
[アレン]大丈夫
[シオン]ちょっと立ち眩みがしただけだから
[アレン]身体の調子まだ悪いんじゃないですか
[シオン]平気平気 何でもないわよ
[アレン]主任───
[シオン]ちょっとね 貧血気味なのかも
[シオン]───あ
[アレン]え
[シオン]あの子───
[シオン]アベルくん
[シオン]君───たしか、アベル君よね?
[アベル]哀しい人───こっち───
[シオン]あ、待って!
[Jr.]なんだ?あのガキは。知り合いか?
[シオン]ううん。
[シオン]ただ、ユリさんがプロジェクトゾハルには欠かせない存在だって。
[アレン]あ、昼間言いそびれたんですけど
[アレン]オメガの専属パイロットなんですよ、あの子。
[アレン]この施設に住んでいるらしくて、CRでもよく見かけます。
[シオン]あの子がオメガの?
[シオン]───でも、どうしてこんな場所に一人でいるのかしら。
[Jr.]罠───か?
[シオン]誰が?何の為に?必然性ないでしょ?
[シオン]───それに、哀しい人って、誰の事かしら。
[アレン]もしかして、KOS-MOSの所に案内しようとしているんじゃ?
[Jr.]追ってみるか?
[ミユキ]あのーなんか、全然話が見えてこないんですけどぉ。何がどうなってるんですか?
[シオン]そうね。このままここにいても仕方ないし。
[ミユキ]あ、ちょっと先輩!
[アレン]うわっと
[シオン]何やってるのよ アレン君
[シオン]大丈夫
[アレン]───いっててぇ
[アレン]何だよここの床はぁ
[アレン]あ───
[アレン]主任
[アレン]あ あれ
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]KOS‐MOS──
[シオン]こんな所に──ひどい
[Jr.]しっかし 用済みとはいえ
[Jr.]最高機密をこんな場所に捨てちまうとはねぇ
[Jr.]わりぃ
[アレン]主任 大丈夫ですよ
[アレン]特に破損している部分はありませんすぐに 再起動出来ますよ
[シオン]何だろ このタスク───
[シオン]ミユキ 何か判る
[ミユキ]さぁ
[ミユキ]ただ 何かからのデータフィードバックみたいですね これ
[ミユキ]解析してみない事には判りませんけどここの機材ではどうしようもないですよ
[シオン]分かった とにかく再起動して ここから脱出しましょう
[シオン]ミユキ タスクに対してストーキングプログラムを流してみるから
[シオン]記録の方よろしく
[シオン]後で ドクトゥスに解析を頼んでおいて
[ミユキ]アイアイサー
[アレン]主任 立ち上げますよ
[シオン]うん お願い
[シオン]おはよう KOS‐MOS
[シオン]調子はどう
[KOS‐MOS]おはようございます シオン
[KOS‐MOS]駆動係数がポイント3低くなっていますがそれ以外は至って順調です
[KOS‐MOS]問題ありません
[シオン]そう───
[シオン]ごめんねKOS‐MOS
[KOS‐MOS]どうかしましたか シオン
[シオン]ううん 何でもないわ
[シオン]ちょっとだけ────嬉しいの
[Jr.]おっし。
[Jr.]じゃこんな所に長居は無用だ。とっとと外に出ちまおうぜ。
[アレン]そうですね。僕もそれに賛成です。
[シオン]うん───KOS‐MOS、戦闘モドいけるわね?
[KOS-MOS]はい、いつでもどうぞ。
[シオン]ミユキはバックアップに回って、KOS‐MOSの戦闘をサポートしてちょうだい。
[ミユキ]えー?私、後方に下がるんですか?
[ミユキ]まだ、そんなに活躍してませんよぉ────?
[シオン]あなたの仕事は戦う事じゃないでしょう?文句言わない!
[ミユキ]アイアイサァ───
[ケイオス]これ、使えそうだね。
[Jr.]ちょっと待ってくれよ。
[Jr.]───演習場へ繋がってるっぽいな。いけそうだぜ。
ce002_100
[ジン]シオン、大丈夫ですか?顔色がよくないようですが。
[シオン]え、なんでもないわ。私は───大───丈夫───
[ジン]シオン!?
[アレン]!?
[シオン]また──私を呼んでいる?貴方は誰なの?
[シオン]私は、何も求めてはいない。
[シオン]私を知りたい──?
[シオン]私も貴方を知りたい。教えて、貴方は誰なの?
[シオン]あなたが───ウ.ドゥ?
[ウ.ドゥ]お前は───世界に何を望む───?
[シオン]うっ───
[アレン]主任!
[モモ]シオンさん!良かった───
[アレン]主任───?
[シオン]え?私───どうして───
[シオン]一体───何が───?
[Jr.]本当に大丈夫なのかよ?
[シオン]うん───ごめんもう大丈夫よ。
[Jr.]なにぃ
[Jr.]──ったく。こんなものを飼ってるなんて、軍の連中は何を考えてやがんだ?
[ジン]あまり良い趣味とは言えませんね。
[シオン]とりあえずみんな大丈夫なようね。
[アレン]KOS‐MOSも無事奪還できましたし。
[ケイオス]そうとなれば、長居は無用だね。
[ケイオス]デュランダルへ戻って、急いでエルザの救出に向かおう。
[シオン]ええ。
[Jr.]ああ。
[青の外套者]───で、やつらをどうするんだ。
[青の外套者]このまま放っておくつもりなのか?
[ロート]愚問だな。
[ロート]やはり、シオンとKOS‐MOSの接触によって、羅針盤は大きく振れる。
[ロート]十三番目の鍵。───こちらから動かずとも、彼女達はあの場所に導かれる。
[青の外套者]すべては流れのままにってか?
[青の外套者]おい。最初から判っていたのか?こうなる事をよ。
[青の外套者]本当に怖い奴だなぁ。
ゲダルヤ宙域
[ケイオス]境界面の差異境界強度は910e
[Jr.]やべぇな 触れただけで即ボカンか
[シオン]グノーシス
[シオン]何故 この場所に
[Jr.]シオン 時間がありません
[Jr.]貴方はまっすぐ ポイントへ
[シオン]分かった
[シオン]準備はいい KOS‐MOS
[KOS‐MOS]起動完了 セーフティ解除
[シオン]射程内 いつでもいいわよ
[KOS‐MOS]了解
[Jr.]おい どうなってんだよ
[モモ]そんな
[モモ]KOS‐MOSさんでも歯が立たないなんて───
[アレン]主任 やっぱり無理があったんじゃ───
[シオン]KOS‐MOSを信じなさい
[シオン]大丈夫 あの子なら必ずやってくれるわ
[KOS‐MOS]兵装展開 最大出力
[シオン]やった
[Jr.]よっしゃあ
[Jr.]一気に突っ込め
[百式]E.S.、超球面体内部への突入を確認!表面の亀裂、閉じられました。
[百式]周辺宙域のグノーシス群、消滅!
[百式]E.S.全機、レーダーからロストしました。
[百式]これより通信機能がすべて使用不可能となります。
[メリィ]よっしゃ!関門突破や。
[シェリィ]喜んでばかりもいられないわ。
[シェリィ]グノーシスの消滅も、ちび様達の追撃の為でしょうし、
[シェリィ]問題はこれからよ。
[メリィ]ちび様達なら、きっと何とかするやろ。
[メリィ]うちらは、ただ信じて待つだけや。
[青の外套者]随分とご執心だな?
[青の外套者]肉なる衣を纏っていた頃への未練か、
[青の外套者]それとも貴様が依然として抱き続けている野心故か?
[ロート]──────
[青の外套者]ハハハ、不完全な母親の代わりに今度はその娘を───か?
[青の外套者](散逸/さんいつ)しつつあるグノーシスを誘う巫女───
[青の外套者]しかしよぉ、貴様も(酷薄/こくはく)な男だよなぁ、えぇ?
[青の外套者]その結果がどうなるか、知らない訳でもあるまい?
[ロート]新世界の為だ。貴様のその姿はただの飾りか?
[青の外套者]ふん、あんなモノが子宮になるってのはゾッとしないが、まぁいい。
[青の外套者]手ぇ貸してやるぜ。
[青の外套者]KOS-MOSをぶち壊せばいいんだろう?
[ロート]貴様には出来ん。
[ロート]KOS-MOSを破壊できるのは、T‐elosだけだ。
[青の外套者]はっ、そうかい。この俺はお姫様の従者役ってか。
[青の外套者]いいぜぇ、しっかり露払いしてやろうじゃねぇか。
[ジギー]内部スキャンの結果は?
[モモ]気温、華氏18度。大気圧0.94。降下地点の風速20m。
[モモ]大気生成は───窒素77%、酸素20%、アルゴン、炭酸ガス他微量。
[モモ]呼吸可能な状態です。
[Jr.]エルザの位置は?船長達と通信は可能か?
[ケイオス]物体下部に反応があるよ。
[モモ]回線、開きます。
[ハマー]おおおおお助かったー!これで、外に出られるぞぉ!!
[ハマー]ちびだんなー!よかったっス、本当によかったッス!!
[マシューズ]おい、こら、どきやがれ!!
[マシューズ]ったく、これぐらいの事で取り乱しやがってぇ。
[Jr.]なんだよ元気そうじゃねぇか。
[マシューズ]当たり前でさぁ。
[マシューズ]この程度で泣きが入るようじゃ、ジャンク屋なんてやってられませんぜ。
[Jr.]例外はあるようだけどな
[マシューズ]こら、そんなところで油売ってねぇでさっさと持ち場につけ!
[Jr.]いま、そっちに向かってる格納の準備頼むぜ。
[マシューズ]了解、歓迎しやすぜ。
[トニー]おおおおお助かったー!これで、外に出られるぞぉ!!
[Jr.]脱出できない!?なんでだよ?
[マシューズ]それが、こっちにもさっぱりでさぁ。ハマー!
[ハマー]ロジカルドライブがまったく反応しないんスよ。
[ハマー]修理も完璧、機能的にはまったく正常、
[ハマー]どこもおかしいところなんかないんスけどね。
[ハマー]実際、お手上げの状態ッス。
[Jr.]ロジカルドライブが動かないって──
[Jr.]それじゃ、どうする事もできねぇじゃんか。
[ハカセ]そうじゃな。
[ハカセ]このままじゃ、まず最初に(環境虫/バグ)の(活動維持物質/エサ)が底をつき、
[ハカセ]いずれは水も酸素も無くなるじゃろう。
[Jr.]ハカセ──
[ハカセ]おそらく、この奇怪な大地から、何かの影響を受けとるんじゃろう。
[ハカセ]こいつは調べて見るしかないのぉ。
[ジギー]原因は確かにこの大地のどこかにあるんだな?
[ハカセ]断言はできんな。
[ハカセ]じゃが、調べて見る価値はあると思うぞい。
[Jr.]わかった。
[Jr.]船長、いつでも発進できるよう、準備をしとけよ。
[Jr.]心配すんなよ、すぐに脱出させてやっからよ。
[Jr.]何だ───ここは
[モモ]空洞のようですね
[モモ]それもかなり広い
[Jr.]ヘブライ───いや古代アラム語か これ
[Jr.][視/み]よ──大いな──
[Jr.]ダメだ 分かんねぇ
[モモ][視/み]よ 大いなる地震あり
[モモ]これ主の[使ひ/つかい] 天より[降/くだ]り来たりてかの石を[転/まろ]ばし退け その上に[坐/ざ]したるなり
[Jr.]読めるのか モモ
[モモ]いえ パパの───
[モモ]無くなったY資料のデータベースの断片に
[モモ]記録されているのと同じ言葉なんです これ
[Jr.]ミズラヒの───
[シオン]危ない
[青の外套者]おいおい [躾/しつけ]がなってねぇなぁ
[青の外套者]他人の家に土足で上がり込むもんじゃねぇよ
[Jr.]テスタメント
[シオン]貴方 ネピリムの歌声に居た───
[青の外套者]ほう 覚えてたのか
[青の外套者]いいねぇ 俺も忘れた事はなかったぜ
[青の外套者]お前に
[青の外套者]見殺しにされた事をなぁ
[シオン]バ バージル中尉───
[シオン]そんな
[バージル]おっと 感傷的になる事はない
[バージル]別にお前と昔話をする為に
[バージル]こんな辛気臭い場所に閉じこもってた訳じゃねぇんだ
[バージル]俺は お前達のその機体に用があるんだよぉ
[シオン]待って 中尉
[シオン]あの時 確かに貴方を───
[シオン]でも あれは──
[バージル]言っただろうお為ごかしはヘドが出るってなぁ
[モモ]Jr.さん
[モモ]壁面の文字が
[バージル]ちっ
[バージル]もう 始まりやがったか
[Jr.]なっ 何だよこれ
[バージル]お前達はそんな事も知らずに乗っていたのか
[バージル]いや───“乗せられていた”んだっけな
[バージル]こいつはお笑いだ
[シオン]どういう事
[バージル]ここはそういう場所なんだよ
[バージル]お前達が使っているアニマの器にとってのな
[シオン]アニマの器にとって
[Jr.]訳分かんねーこと言ってんじゃねえっ
[バージル]全く 要領が悪い奴らだな
[バージル]少しは頭を使えってんだよぉ
[バージル]へっ 流石にコレだけの数は捌ききれねぇか
[シオン]中尉──貴方は確かに死んだはず
[シオン]なのに───
[バージル]どうしてここに居るのってかぁ
[バージル]生きてるか 死んでるか
[バージル]そんなもんは さして重要な事じゃない
[バージル]もっとも お前らの頭じゃ理解出来ないだろうけどな
[白の外套者]全く
[白の外套者]下らん事をベラベラと喋りすぎだぜ相棒
[バージル]何だぁ 新入りが水を差す気か
[白の外套者]時間だぞ
[白の外套者]それとも何か
[白の外套者]此処に残るつもりなのか
[Jr.]その声─── ア アルベド
[Jr.]おい 待てよ
[Jr.]アルベド アルベドだろ
[Jr.]俺を忘れたのかよ
[シオン]アニマの器───
[シオン]なぜ貴方達もE.S.を使ってるの
[Jr.]待てよ アルベド
[Jr.]な 何だ くそ
[Jr.]E.S.の制御が利かねぇ
[ジギー]こっちもだエネルギーゲインが落ちてるぞ
[ジギー]このままでは停止してしまう
[モモ]出力 尚も低下中
[モモ]ダメです 状態を維持出来ません
[バージル]だから言ったろうがここはそういう場所だってなぁ
[バージル]ま せいぜいガンバルこったな
[Jr.]くそ、ここから先は步いていくしかねぇな。
[シオン]バージル中尉の言っていた、そういう場所って───
[シオン]どういう意味かしら?
[ジン]おそらく、この先にその答えがあるのは間違いないでしょうね。
[Jr.]ここは──?地表に出たのか?
[Jr.]しかし、こんなモノが宇宙に浮かんでるなんて非常識にもほどがあるぜ。
[シオン]ここ──は。
[Jr.]どうしたシオン?
[シオン]この場所──確かに、見覚えがある。
[シオン]夢に出てきた、あの場所だわ───
[シオン]ネピリム────?
ce002_100
[シオン]うぅ、頭が───
[ケイオス]シオン?
[ケイオス]大丈夫、シオン?
[ケイオス]どうしたの?
[シオン]う、ううんなんでもない、大丈夫よ───
[ジン]これは、すごいですね。
[Jr.]何かの墓所のようだなおいてあるのは棺か?
[Jr.]中は空っぽだぜ。盗掘かなんかで、荒らされたあとなのか?
[ジン]ふむ、こんな場所に盗掘もないでしょうが確かに変ですね?
[モモ]Jr.さん!?これを!
[Jr.]なんだ、モモ?
[モモ]この棺に、アシェルの名前が───
[Jr.]!?
[Jr.]こっちには──ディナ?
[Jr.]マジかよ、全部E.S.の名前じゃねぇかよ?
[シオン]ここ、KOS-MOSの深層意識にあった場所だわ。
[シオン]でも、どうしてこんな場所に───
[シオン]KOS-MOS、あなたこの場所を知ってる?
[KOS-MOS]いえ、私のメモリーに現在のポイントのデータはありません。
[シオン]そうよね、あなたが開発されてからここを訪れた事はないわ。
[シオン]一体、どういう事なの───?
[シオン]T‐elos──
[シオン]どうして───ここに
[T‐elos]十三番目の鍵───
[T‐elos]目覚めの[刻/とき]は来た
[ジギー]何だ あいつは
[モモ]KOS‐MOSさん───
[Jr.]アレがT兵器って奴か
[Jr.]悪趣味な野郎だな
[Jr.]顔までKOS‐MOSそっくりにしてやがる
[ケイオス]この感じは───
[ケイオス]まさか───彼女は
[T‐elos]己の存在意義も理解出来ない人形───
[T‐elos]私が私で在り続ける為
[T‐elos]KOS‐MOS
[T‐elos]貴様を破壊する
[シオン]やったの
[Jr.]何でぇ
[Jr.]極秘兵器の割には大した事ねぇじゃん
[KOS‐MOS]シオン
[KOS‐MOS]敵性体の出力は私の4.75倍あります
[KOS‐MOS]形勢的に明らかにこちらが不利です
[シオン]え───何
[シオン]不利ってどういう事
[KOS‐MOS]敵性体は私が引き受けます
[KOS‐MOS]速やかに撤退して下さい
[シオン]そんな───
[シオン]あれだけの攻撃を受けて\n全くの無傷だなんて
[ロート]無駄な事だよ
[ロート]彼女の戦闘パターンは既に解析済みだ
[シオン]貴方
[シオン]───解析済みって
[シオン]もしかして あのタスク──
[ロート]君達には不本意かもしれないが
[ロート]彼女はこの場所で\nT‐elosに破壊される運命なのだ
[シオン]何でそんな事が言えるのよ
[シオン]どうして 貴方とT‐elosが\
ここに居るのよ
[赤の外套者]君を監視するのが 私の役目だからだ
[シオン]テ テスタメント───
[赤の外套者]驚いている暇があるのか
[赤の外套者]姫君が苦戦しているぞ
[シオン]KOS‐MOS
[KOS‐MOS]シオン
[KOS‐MOS]現在の私の能力では\n140秒程しかもちません
[KOS‐MOS]急いで下さい
[シオン]そんな
[シオン]貴方一人を残して行ける訳ないじゃない
[シオン]KOS‐MOS
[Jr.]てめぇ
[T‐elos]KOS‐MOS───
[T‐elos]貴様は何の為に存在する
[T‐elos]空虚な器でしかない貴様には\n何も成せはしない
[T‐elos]私の真の目醒めの為\n大人しく塵となれ───
[T‐elos]人形
[モモ]あれは───
[シオン]相転移砲
[シオン]まさか
[シオン]こんな至近距離で撃つつもりなの
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]そんな──KOS‐MOS
[シオン]嫌───だめよ
[T‐elos]私が
[T‐elos][秩序/KOS‐MOS]だ
[シオン]やめてぇええっ
[モモ]KOS‐MOSさんが
[Jr.]何だよ この光は
[シオン]KOS‐MOS
[赤の外套者]さぁ 今一度見せるのだ
[赤の外套者]君の命の煌めきを───
[メリィ]なんや 何が起こってんん
[百式]分かりません\n突然 超球面体が縮小を開始
[シェリィ]重力偏差が大きすぎる
[シェリィ]いけない こちらも巻き込まれるわ\n急いで 離脱を
[メリィ]ちび様
[メリィ]応答してんか ちび様
[ヴィルヘルム]始まったね
[ヴィルヘルム]再び あの場所で
[ヴィルヘルム]もう一度───
[シオン]綺麗───
[シオン]この満天の星空のどこかで、グノーシス現象の為に
[シオン]惑星が消えていっているなんて信じられない。
[ケビン]遙か昔、人は止むに止まれぬ事態に追われ宇宙へと進出し、
[ケビン]以来4000年の間、隣人と呼べる生命体との出逢いは叶わなかった。
[ケビン]誰もが人は孤独な存在であると諦めかけていたその時、グノーシスは我々に近づいてきた。
[ケビン]人という存在を消し去る為に───
[シオン]祖父がよく言ってました。
[シオン]森羅万象には必ず意味や理由がある、
[シオン]だからこそ宇宙に存在する事を許されるのだって。
[シオン]もしそうなら、私達は滅びる事を運命づけられている存在なのかもしれない───
[シオン]まるで宇宙が私達を拒絶しているかのよう───
[ケビン]僕達はその運命を自らの手で変えようとしている。
[ケビン]宇宙を拒絶しているのは、むしろ僕らの方なのかもしれない。
[シオン]その為に先輩はKOS-MOSを───?
[ケビン]僕の生まれた星はね、グノーシスによって滅ぼされてしまったんだ。
[ケビン]その時に母も───
[シオン]──────
[ケビン]僕だけが生きている。
[ケビン]何も出来なかった事への贖罪か、全てを奪った者への復讐か───
[ケビン]正直、解らなくなる時があるよ。
[ケビン]でもこれだけは言える。
[ケビン]たとえ宇宙がそれを望んでいなくても、彼女は僕らの希望なんだ。
[シオン]解ります。なんとなくだけど───
[シオン]私も、ミルチアで両親を亡くしたから───
[ケビン]シオン───
[シオン]何故自分がここにいるのか───自分のすべき事は何なのか───
[シオン]どこへ行こうとしているのか───
[シオン]全てが、まるで濃霧に隠された彼岸のよう───
[シオン]でも今は───先輩の望みを叶えてあげたい。
[シオン]そこに希望が待っているのなら───
[シオン]これ もしかしてお母様の形見の───
[ケビン]僕の步もうとしている道は間違っているのかも知れない
[ケビン]それでも───
[ケビン]一緒に步いてくれるかい
[シオン]先輩───
[ウ.ドゥ]シオン───
[ウ.ドゥ]お前は喜んでいるのか?
[シオン]喜んでいる?
[シオン]そうね──嬉しいわ、とても。
[ウ.ドゥ]嬉しい──?
[シオン]幸せなの──
[ウ.ドゥ]この──記憶が?
[シオン]ええ、素敵な思い出よ。
[シオン]あの人と過ごした日々。日溜まり───温もり───
[シオン]いつまでもこうしていたい。
[ウ.ドゥ]永久に───
[シオン]たとえ生まれ変わったとしても。
[ウ.ドゥ]永劫に───
[シオン]何度でも───
[ウ.ドゥ]何度でも───
[シオン]でも───
[シオン]ここ──は──?
[シオン]たしか、超球面体の中でエルザを救出して───
[シオン]そして、T‐elosとKOS‐MOSが───
[シオン]KOS‐MOS!?みんなは!?
[シオン]ここは、一体どこなの───?
[Jr.]動くんじゃねぇ!
[シオン]きゃぁ!
[モモ]待ってください、Jr.さん!
[ケイオス]Jr.、敵じゃないよ!
[Jr.]え!?あ───シオン?
[シオン]Jr.君!?ちょっと、いきなり何よ!?
[Jr.]いや、敵かと思ってよ。───すまねぇ。
[シオン]───とりあえず、どいてもらえるかしら?
[Jr.]ああ、わりぃ。
[シオン]みんな無事だったのね。良かった。
[モモ]いえ、それが───
[Jr.]KOS‐MOSもエルザの連中も見当たらないんだ。
[Jr.]おそらく、一緒に飛ばされたんだと思うんだけどな───
[シオン]飛ばされたって──もしかして空間転移したって事?
[Jr.]ああ、ここがどこかはまだ分からねぇけど、恐らくあの時の光で──
[シオン]そんな──
[シオン]そんな──ウソ──ウソよね──?兄さん──
[ジン]どうしたんです、シオン?
[ジン]!───まさか!?
[Jr.]───そのまさかだ。
[Jr.]間違いない───ラビュリントスだ。
[ジギー]ラビュリントス?ミルチアのか?
[ジギー]紛争時に倒壊したのではなかったのか?
[Jr.]あぁ、俺にも信じられねぇよ──
[Jr.]だが、間違いない。アレが存在してるって事は、ここは15年前のミルチアだ──
[モモ]まさか、過去に転移してしまったんですか?
[Jr.]どうかな。以前KOS‐MOSにダイブした時も、
[Jr.]俺達は、過去のミルチアを垣間見ている。
[ジギー]たしかに、その可能性は捨てきれないが──
[ケイオス]────
[シオン]!
[モモ]銃声です!
[Jr.]あっちだ!
[ケイオス]行こう!
[シオン]兄さん?
[ジン]静かに!
[連邦兵士]くそ!本隊と合流する前に死ぬわけにはいかねぇだろう!
[ジギー]戦闘用レアリエンだな。襲われているのは連邦の兵士か?
[Jr.]どうする?このままでは、そう長くはもたねぇぞ。
[シオン]怪我人を見殺しにはできないわ。助けましょう!
[連邦兵士]はぁ───はぁ───はぁ───なんだ──お前ら───
[連邦兵士]武器を───下に置け。
[連邦兵士]指示に───従わない場合───は射殺───す
[連邦兵士]う、うぐ───!
[シオン]そんな───バージル中尉!?
[Jr.]バージル?あの、テスタメントのか!?
[シオン]ええ、雰囲気は違うけど間違いないわ───
[シオン]でも、どうして───
[バージル]なぜ、俺の名前を?ぐっ!
[シオン]酷い怪我───
[バージル]触るな!
[シオン]動かないで!傷の手当てができないでしょう!
[バージル]───
[ジギー]どうする?
[シオン]どうするって──助けないと!
[Jr.]こいつ、テスタメントだったんだろう?
[シオン]そんなの、私にもわからないわよ。
[ケイオス]傷が深い。このままでは───
[ジギー]ここに放置する訳にもいくまい。
[ジン]そうですね、とにかく安全な場所を探しましょう。
[ジン]モモさん、手伝ってください。止血します。
[モモ]はい!
[ジン]これで、いいでしょう。今のうちに、早く落ち着ける場所へ。
[ジギー]人か!?
[シオン]あれは──?フェブ?
[シオン]あ、待って──
[モモ]シオンさん!バージルさんの容態が。
[ジン]いけない!このままでは、命に関わります。早くどこかで手当てを!
[Jr.]どこかって───どこだよ?
[シオン]待って!この先に教会があるはずよ。
[Jr.]教会?
[シオン]えぇ、この森で目覚めた時、妙な感じがしてたの。
[シオン]でも、ここがミルチアなら、彼女がフェブなら、ここは私のよく知っている場所──
[シオン]彼女の後を追えば、古い教会へ行けるはずよ。
[ジン]迷っている暇はない、そこへ彼を運びましょう。
[モモ]ここは───
[ジギー]たしか、KOS-MOSの意識の中で見た場所だな。
[シオン]そう───私はここでフェブロニアと出会った。
[シオン]ここは、私とフェブの思い出の場所なの。
[シオン]この中なら、彼を休ませる事ができるわ。行きましょう。
[シオン]誰か──いますか?
[シオン]怪我人がいるんです、中で休ませてもらえませんか?
[少女]お姉ちゃん、誰?
[シオン]!
[少女]フェブ、フェブ、お客さんだよ。
[シオン]アレは───私?
[少年]騒々しいな。
[少年]何ですか?あなた方は。
[シオン]───!
[少年]何かあったのかと聞いているんですが?
[シオン]あ、あの、近くで怪我人を見つけて。
[シオン]怪我の状態が酷くてあまり動かせないの。それでここへ。
[フェブロニア]怪我人──?
[フェブロニア]!!大変!早く、こちらへ!
[少年]待つんだ、フェブロニア。
[少年]この男は連邦軍の兵士だ。自分が何をしようとしているのか分かっているのか?
[フェブロニア]敵兵でも怪我人に変わりはありません!
[少年]困るんだよね。君はU-TIC機関のレアリエンなんだよ?
[少年]こんな場所に度々(篭/こ)もっている事自体問題だというのに。
[Jr.]U-TIC機関!?
[シオン]お願い、このままでは彼が死んでしまうわ。
[フェブロニア]わかっています。彼をその奥の部屋へ。
[少年]ふう───ミズラヒ博士にもう少し、
[少年]レアリエンの管理を厳格にしてもらった方がいいのかな。
[少年]君はただでさえ貴重なトランスジェニックタイプだ。
[少年]育成が完了するまで(損耗/そんもう)する訳にはいかないってのに───
[フェブロニア]勝手をして、すみません。でも、この人を見殺しにはできません。
[少年]フェブロニア───
[フェブロニア]兵を呼ぶつもりなら───お好きに。
[少年]しょうがないな。
[少年]こんな些末な事で、君のメンタルバランスに問題が起きるのは避けたいしね。
[少年]ここは不問という事にしておくよ。
[少年]外の車の中に、彼女の調整用の医療キットがあります。
[少年]レアリエンのものですが、何もないよりマシでしょう。
[シオン]ありがとうございます。
[少年]礼には及びませんよ。どうせ助かりっこありませんから、ね。
[シオン]───
[ジン]主要臓器の損傷が激しい。これではナノ治療でも無理だ───
[モモ]幹細胞の(萌芽/ほうが)が追いつきません。欠損している基細胞自体を移植しないと。
[ジン]くそ、だめか───
[フェブロニア]あの、私の───私の臓器を移植してください。
[フェブロニア]欠損分はそれで補えると思います。
[ジン]移植?
[ジン]───失礼だが、君はレアリエンだ。
[ジン]レアリエンから人間への臓器移植など今までに例はない。
[フェブロニア]私はトランスジェニックタイプ。
[フェブロニア]ミズラヒ博士によって、次世代レアリエンの雛形として設計されました。
[フェブロニア]私の体組成は人のそれに限りなく近く作られているんです。
[フェブロニア]細胞同士の親和性はあるはずです。ですから───
[ジン]仮にそうだとしても、君はどうする?
[ジン]臓器を取り出したら、今度は君自身が。
[フェブロニア]内循環を一時的に停止させれば、数時間は持ちます。
[フェブロニア]その間にラビュリントスに戻れば、そこで再生する事が出来ます。
[フェブロニア]私の事なら大丈夫。それより今は彼の命を。
[ジン]───
[フェブロニア]このままでは、彼は助からない。もう、他に方法はありません───
[ジン]本当にいいのですね?
[フェブロニア]はい。お願いします。
[フェブロニア]あの人は───移植は───上手くいきましたか?
[シオン]ええ。執刀医がヤブ医者で、どうなるか心配だったけど、なんとか。
[シオン]今は奥で眠っているわ。大丈夫。モモちゃん達が付いていてくれるから。
[フェブロニア]そうですか。良かった───
[シオン]しばらくここで横になっていた方がいいわ。
[シオン](再生/レプリケーター)処置が終わったとはいっても、体サイクルはまだ戻っていないから。
[フェブロニア]はい。そうさせていただきます。
[シオン]あの───彼を助けてくれて、ありがとう。
[少女]フェブ、大丈夫?
[フェブロニア]えぇ、大丈夫よシオン。なんともないわよ。
[シオン]──あなた、シオンちゃんっていうの?
[シオン]うん。お姉ちゃん達、あの緑の船でやってきたの?
[シオン]緑の船?
[シオン]うん。東の鍾乳洞の方に降りてきた見た事のないきれいな船。
[シオン]それに乗ってたんでしょ?
[シオン]───まさか、エルザ?
[ケイオス]うん。僕達と共にエルザがここに飛ばされていてもおかしくはない。
[ケイオス]調べてみる価値はありそうだね。
[少年]まったく、余計な事をしてくれたものだ。
[少年]こんな事では、僕の監督責任が問われるんだけどね。
[フェブロニア]私が勝手にした事です。あなたにご迷惑はかけません。
[少年]そう願いたいものだね。
[少年]君達、そろそろ機関からの迎えが来る時間だ。すぐに出て行ってもらえるかな?
[少年]君達がいると何かとややこしくなりそうなんでね。
[シオン]彼の事は?
[少年]悪いが、ここに放置させてもらうよ。
[少年]敵兵を助けたと知れたら、こちらも只ではすまないからね。
[少年]我々がいなくなったら、好きにすればいい。
[シオン]分かりました。
[シオン]シオンちゃん───お船の事、教えてくれてありがとう。
[シオン]うん、バイバイ。またね。
[シオン]──人?
[老人]──ん?なんだ新顔か?
[老人]よく飽きもせず、この年寄りをなぶりに来るものだな?
[シオン]あの──おじいさん、ここを管理されているんですか?
[老人]──?
[老人]お前達──U-TIC機関の者ではないのか?
[Jr.]俺達がU-TIC機関だって?随分な言われ様だなぁ。
[ケイオス]何か事情があるみたいですね。
[老人]お前さんらがU-TIC機関でないのなら関係のない話だ。
[老人]早々にこの場所から立ち去るといい。
[ジン]立ち去れと言われてもこちらにも事情がありましてね。
[ジン]どうしてもこの先に行かねばならない。
[老人]この先に?──ん?
[老人]──そうか。お前さんら、あの船を調べに来たのか?
[ケイオス]仲間が乗っているんです。
[老人]ふむ。だが、面倒に巻き込まれる事になるぞ。
[老人]今、私の孫娘のマイがそれの調査に行っておるが、
[老人]おそらく、U-TIC機関の連中もすでに中にもぐり込んでおるだろう。
[Jr.]U-TIC機関が?
[老人]そう、許せんのはU-TIC機関の連中なのだ。
[老人]あやつらは全てを奪っていった──
[老人]このダブリー鉱山の貴重な資源。それを糧に生きてきた人々の生活。
[老人]そして我が息子テスラの命までも──
[Jr.]落盤!?
[モモ]違います!これは、兵器による爆発です。
[老人]リューポルドだ、マイの奴め、戦闘は避けろとあれほど言っておいたものを。
[ケイオス]リューポルド?
[老人]──リューポルドはテスラが愛用したオーテックでな。
[老人]マイは父親の魂が宿ったリューポルドと共にこの土地を守っておる。
[ジギー]オーテック一機でU-TIC機関と戦闘とは、いささか無謀だな。
[ジギー]どうする?
[モモ]シオンさん!
[シオン]ええ。おじいさん、悪いけど洞窟に入らせてもらうわ!
[シオン]いい?
[老人]ふむ。迷惑をかけてしまって申し訳ないが、
[老人]もしマイに会ったら、戦闘をやめて、すぐに戻るように伝えてくれ。
[シオン]分かりました。あの、おじいさん、お名前は?
[老人]儂か?儂の名はアイゼン.メイガス。
[シオン]あれは──!
[ジン]──おそらく、リューポルドでしょう。
[ジン]被弾していたようにも見えましたが、
[ジン]──先を急いだほうがよさそうですね。
[マイ]そこの貴方達、止まりなさい!
[シオン]あなた──マイさん?
[シオン]おじいさんが心配しているわ。戦闘をやめて、戻りましょう。
[マイ]──お爺様が──?
[マイ]──うそっ!最近はU-TIC機関の連中も手が込んできてるわね。
[Jr.]おいおい!俺達はウソなんかついちゃいないぜ!
[Jr.]本当にアンタの爺さんに───
[マイ]子供を使って説得しようなんて、なんて卑怯な連中なの!
[マイ]はっ──!まさか、すでにお爺様も!?
[Jr.]話を聞けよ───
[ケイオス]安心して──僕達はこの先に停泊している船に用があるだけなんだ。
[ケイオス]通り掛かりに君のお爺さんに出会って──
[マイ]──この先の船ですって?やはり、貴方達U-TIC機関の兵士なのね。
[マイ]あの船を使ってこの鉱山を破壊するつもりなんでしょう!
[Jr.]どうもしないって。あのさ、俺達はU-TIC機関とは関係ないんだって。
[マイ]子供は黙ってて!
[Jr.]だから、子供じゃねぇって
[Jr.]──たく、 話にならねぇな、通してもらうぜ!
[マイ]ここから先に行かせる訳にはいかない
[マイ]これ以上貴方達の好きにはさせないわ
[シオン]お願い 私達の話を聞いて
[マイ]聞く必要なんかない
[マイ]これ以上私から大切なものを奪わないで
[マイ]私は絶対に許さない
[マイ]リューポルド
[マイ]父の無念
[マイ]思い知れ
[マイ]──くっ!!
[マイ]貴方達──私からリューポルドまでも奪っていくのね?
[マイ]分かってるわ、私だって覚悟は出来ている。
[マイ]さあ、殺しなさい!!──かつて私の父や鉱山の人達を殺したように!!
[Jr.]いい加減にしろよぉ、殺すつもりならとっくにそうしてるぜ。
[ケイオス]──安心していいよ、
[ケイオス]リューポルドへの攻撃も、動力系に一時的な障害を与えた程度だから。
[ケイオス]すぐに元通りになると思うよ。
[マイ]同情なんていらないわよ!
[シオン]同情なんかしてないわよ。
[Jr.]おい、シオン?
[シオン]あの船には大切な仲間が居るの。まだ邪魔をすると言うのなら、こちらも本気で行くわ!
[シオン]貴方がこの場所を大切に思っているのと同じくらい、私達はあの船が大切なの。
[シオン]貴方になら、この気持ちが理解できるでしょう?
[マイ]────
[アイゼン]マイ、マイ!!
[マイ]お爺様!?
[アイゼン]おお、怪我をしているではないか!?このオテンバ娘め!
[マイ]御免なさい──お爺様の話を持ち出すものですから、
[マイ]このU-TIC機関の連中がお爺様にまで手を出したかと──
[アイゼン]この方達はU-TIC機関とは何の関係もない。
[アイゼン]──ふうっ。全く、お前の無鉄砲にいつも悩ませられて、
[アイゼン]──もう少し女の子らしくは出来んのか?
[マイ]鉱山のみんなはU-TIC機関に怯えて逃げ出しちゃったのよ!
[マイ]私以外に誰がここを守るって言うの?
[マイ]それに────それにお父様が。
[シオン]ここは、貴方とお父さんをつなぐ場所なのね。
[シオン]心配しないで、あなたの思い出を踏みにじるような事はしないわ。
[マイ]───この先に、あなた達の船が停泊しているはずよ。
[シオン]──マイさん。
[マイ]───ふん、用が済んだらさっさと出て行って頂戴。
[マイ]これ以上の面倒はゴメンだからね。
[シオン]ありがとう。
[マイ]───フン!
[Jr.]まったく、気の強い所は、誰かさんそっくりだな───なぁ、シオン。
[シオン]───なんで、私を見るのよ?
[シオン]船長!みんなも───無事だったのね。
[ハマー]シオン!
[マシューズ]よう、ネェちゃん。お前さんも、元気で何よりだ。
[Jr.]まぁ、こいつらが簡単にくたばるとは思えないけどな。
[マシューズ]おいおい、ちび旦那そりゃないでしょう。
[アレン]主任!!よかったーもう会えないかと思いましたよぉ~
[シオン]アレン君!ねぇそれより、KOS-MOSは?誰か、あの子の事しらない?
[アレン]───主任あの、KOS-MOSなんですが───
[シオン]───どうかしたの?
[ハカセ]嬢ちゃん、E.S.もKOS-MOSも、とりあえず回収はしてある。
[ハカセ]だが、それ以上はどうしようもなかったんじゃ───
[シオン]え?どうしようもない───?
[ハカセ]自分の目で確かめるのが一番じゃ。
[ハカセ]助手二号、案内してやれ。
[アレン]主任──こっちです。
[トニー]シオン!
[シオン]KOS-MOS!?
[シオン]そんな──ウソでしょ?
[アレン]T‐elosとの戦闘で──コアを、傷つけられたんです。
[シオン]───!
[アレン](躯体/くたい)に対するダメージや制御系のプログラムならいくらでも修理はききます。
[アレン]でも、ブラックボックス部分が壊されては、
[アレン]僕達では手の施しようがありません───
[シオン]そんな事ないわよ──直せないわけがないわ。
[シオン]───アレン君だって、ハカセだっているじゃない!
[アレン]主任!解っているでしょう。
[アレン]コアを直せるのは、設計者であるケビンさんだけなんです。
[アレン]KOS-MOSはもう、動く事は無いんです───
[シオン]KOS-MOS───?
[シオン]いやよ、目を開けてよ、KOS-MOS?
[シオン]KOS-MOS───!!
[メリィ]そっちはどうや?何かわかったか?
[百式]いえ、依然として。
[百式]U.M.N.のどの帯域でも、エルザ及びE.S.の反応が探知出来ません。
[メリィ]ログも残ってへんの?
[百式]はい──
[シェリィ]そんな事が──
[シェリィ]何らかのアクシデントで転移したのなら、必ずログが残る筈なのに──
[百式]残る可能性は──超球面体ごとプランクスケールまで──
[メリィ]んなわけあるかいな!
[メリィ]もう、ちび様──どこ行ってしもうたんや。
[メリィ]ガイナン様も留守やっちゅうのに──
[メリィ]!ちび様か!?
[メリィ]!!
[シェリィ]ユリ.ミズラヒ委員。
[ユリ]その様子だと、何か問題が起きたみたいね。
[シェリィ]ちび様達が、調査対象ごと消失してしまい、私達はその捜索を。
[ユリ]そんな──彼らの行方はまだ判らないの?
[シェリィ]はい、残念ながら。
[ユリ]そう──
[シェリィ]ミズラヒ委員。
[シェリィ]状況確認の為に、連絡をくださった──という訳ではないようですね。
[ユリ]鋭いわね。
[ユリ]実は、連邦政府に新たな動きがあって、
[ユリ]それで急ぎあなた達に知らせようと──
[シェリィ]──深刻そうですね。それで新たな動きとは?
[ユリ]連邦政府が、ある宙域への侵攻作戦を開始する事になったのよ。
[メリィ]ある宙域への侵攻作戦?
[ユリ]オルムス発祥の地と言われる惑星ミクタム。
[ユリ]そこに対して、大規模な侵攻作戦を行うらしいの。
[ユリ]連邦艦隊は、既にミクタムに向けて発進したわ。
[ユリ]完成したばかりのメルカバを伴って。
[メリィ]メルカバやて!まさか、ディミトリ.ユーリエフ!?
[ユリ]ええ。このままではかつての戦乱が再び──
[ユリ]いえ、それ以上の事態が起こってしまう恐れがあるのよ。
[メリィ]オルムスを根絶やしにするつもりなんか!?
[シェリィ]私達は何をすれば?
[ユリ]状況次第ね。場合によっては──
[シェリィ]連邦軍を敵に回す事もあり得ると?
[ユリ]ディミトリがミクタムへと向かった理由。
[ユリ]あの男が、単なる制圧作戦で全軍を動かすとも思えない。
[メリィ]そこに何かがあるんやな?
[ユリ]モモに残されていたY資料の断片に気になる記述があったの。
[ユリ]移民船団の一派は、ロスト.エルサレムを脱出する際、あるモノを持ち出していた。
[シェリィ]あるもの?
[ユリ](永遠の連環/ツァラトゥストラ)。
[メリィ]ツァラトゥストラ?
[ユリ]それが何であるのかは、現在も調査中よ。
[ユリ]ただ、ディミトリもY資料を手に入れている。私達より完全に近い形で。
[ユリ]彼の行動は、それと関係があるような気がするの。
[メリィ]────
[ユリ]そちらにはE.S.とエミュレーターがある。
[ユリ]万一の事態の時は、ディミトリの暴走を止められるかもしれない。
[ユリ]これは、ヘルマー代表の意志でもあるのよ。
[メリィ]おっちゃんの?そこまで事態は逼迫してるっちゅー事か。
[ユリ]でも、肝心のエルザが行方不明では、どうにもならないわね。
[メリィ]まかしといてください!なんとしてでもちび様達は見つけます!
[メリィ]そんでもって、あのジジイが、アホな事しでかしそうになったら
[メリィ]おもいっきり、横っ面引っぱたいてやりますわ!
[シェリィ]そうね、その為にもちび様達を早く見つけないと。
[ユリ]いつも無理難題ばかり押しつけてしまって、すまないわね。
[ユリ]私も、急ぎそちらへ向かいます。
[シェリィ]ツァラトゥストラ?
[シェリィ]────
[シオン]ここは───?
[少年]──無理だな。欠損している基幹細胞自体を移植しないと助からない。
[フェブロニア]私の臓器を移植してください。欠損分はそれで補えると思います。
[シオン]あれは、フェブ?あ、そうかバージル中尉の手術だ───
[少年]待ちたまえ、そんな事をしたら君はどうなる?
[少年]こんな一兵士の為に、貴重なレアリエンを失う訳にはいかない。
[フェブロニア]細胞同士の親和性はあるはずです。
[フェブロニア]私の事なら大丈夫。それより今は彼の命を。
[シオン]あれ?兄さんじゃない──?
[少年]意志は堅そうだな。仕方ない、やってみよう。
[シオン]あの子は───
[シオン]ん──ゆ──め?
[シオン]そうか──
[シオン]あの時、あの少年が助けてくれたんだ───
[シオン]そうよね。あの時、兄さん達はいなかったんだし。
[シオン]彼は──誰だったのかしら?
[Jr.]アニマの器が無いって!?
[シオン]どうかしたの?
[アレン]いや、それがちょっと問題が───
[Jr.]おい、ちゃんと解るように説明してくれよ!
[ハカセ]だから、ないんじゃよ。アニマの器が。
[ハカセ]機体自体には何ら異常が見あたらんのじゃが、
[ハカセ]動力炉の部分だけが忽然と姿を消しおった。
[Jr.]そんなバカな事が───
[ジン]原因はなんです?
[ハカセ]さっぱり、お手上げじゃな。
[アレン]もしかして、タイムトラベルの弊害でしょうか。
[ハカセ]そうそう、弊害といえばなこのままだと、さらにヤバイ事になるかもしれんぞい?
[Jr.]なんだよ、まだあるのかよ?
[ハカセ]ええか、わしらは本来、この世界にあってはならない存在じゃ。
[ハカセ]そのしわ寄せが、少しずつではあるが、
[ハカセ]潜熱エネルギーとして蓄積されておる。
[ハカセ]このまま放っておけば、確実に崩壊するじゃろうな。
[Jr.]崩壊するって、何が?
[ハカセ]この宇宙がじゃ。
[Jr.]はぁ!?
[ハカセ]まぁ、宇宙は言い過ぎとしても、少なくともこの宙域くらいは消し飛ぶじゃろうな。
[ハカセ]そのくらいこの潜熱エネルギーというのは、凄まじいものなんじゃよ。
[Jr.]どうすんだよ。結構ヤバイじゃん、それ。
[ジギー]どうにかできないのか?
[ハカセ]うむ、できない事もないがのぉ。
[ハカセ]うまくこの潜熱エネルギーをフィールド内に固定し、時空連続体に干渉する事が出来れば、
[ハカセ]元の時代に戻れるかもしれんが。
[Jr.]なら、問題ないじゃん。さっさとはじめようぜ。
[ハカセ]人の話は最後まで聞かんか!理論的に可能かもしれんというだけじゃ。
[ハカセ]何よりこれだけのエネルギーを固定する為の、
[ハカセ]強固なフィールドを張るほどの出力を出す方法が、今のところ全くないんじゃからな。
[ハカセ]どうする事もできんのぉ。
[シオン]KOS-MOS───
[シオン]あなたはもう、目覚めてはくれないの?
[シオン]おはようと、言ってはくれないの?
[アレン]主任また、ここにいたんですか?
[アレン]あの、元の世界に戻れたら、きっとKOS-MOSを直す方法だって見つかりますよ。
[アレン]だから───
[シオン]アレン君───
[アレン]はい?
[シオン]ここが本当に、あのミルチアだと思う?
[アレン]──そうですね、にわかには信じられませんけど、
[アレン]モモちゃんが集めたデータは、間違いなく15年前のミルチアを指し示していますし。
[シオン]私にはわからない。
[シオン]確かに、ここはあの時のミルチアだわ。
[シオン]フェブも、バージル中尉も、幼い自分自身にも会った。
[シオン]でも、だからって簡単には理解できない。
[シオン]ここが本当にあのミルチアなら、
[シオン]あと数日後には、最悪の運命がこの星を襲う事になるのよ。
[シオン]信じられる?
[アレン]そういえば、ジンさんが言ってましたよ。
[アレン]ここが本当に過去の世界なら、僕達の行動いかんによっては、
[アレン]その後の未来に重大な影響を及ぼしかねないって。
[アレン]確かに、過去をいじくったら僕達にどんな影響が出るかわからないですからね。
[シオン]でもよ、もしそうなら、私達の手で過去が変えられるって事じゃない?
[シオン]アレン君は過去を変えたいと思わない?
[アレン]そりゃ、僕にだって変えたい過去は山ほどありますよ。
[アレン]───むしろそういう考えを持つ方が普通じゃないでしょうかね。
[アレン]後悔しない人間なんかいない。
[アレン]誰だってやり直せるものならやり直したいと思ってるんじゃないですか。
[アレン]でも、やっぱり状況が分からない内は、
[アレン]この世界に干渉するべきではないと思いますけどね。
[シオン]たしかに理屈ではそうかも知れないけど───
[シオン]でも──それでも。
[シオン]あぁもう、いろいろありすぎて頭がおかしくなりそう。
[アレン]主任───きっと疲れが溜まっているんですよ。
[アレン]もう少し、休んでいたらどうです?
[シオン]そうね、気分転換に、ちょっと街の様子を見に行ってくるわ。
[アレン]え、待ってくださいよ。状況がわからないのに、外に出るのはマズイですよ!
[シオン]何かしてないと、落ち着かないのよ。
[シオン]それに、こんなところにいたら状況だって分からないままだわ。
[アレン]ちょっと主任。待ってくださいよ!
[シオン]じっとしているなんて、耐えられないの。
[アレン]この世界に干渉するのはマズイですって。
[シオン]告げ口してもいいのよ?
[アレン]主任───
[シオン]大丈夫、街まで行ってくるだけよ。
[シオン]2~3時間で戻るから、みんなには心配しないでって伝えておいて。
[アレン]街って、情報だと連邦の降下部隊との交戦地域ですよ?
[アレン]なんだってそんなところに。
[アレン]あ、ま、待ってください。僕も行きますよ。
[シオン]いいわよ。
[アレン]よくないですよ。一人じゃ危険ですって。
[アレン]KOS-MOSが居ないんだから、僕が主任を守ります!
[アレン]主任?
[シオン]しっ!隠れて!
ce012_010
[シオン]U-TIC機関のトレーラーかしら?何かの事故ね。
[アレン]連邦に攻撃されたんでしょうか?
[シオン]さぁ、ここからじゃ詳しい状況は分からないわね。
[シオン]待って、誰か出てきたわ。
[U-TIC機関兵士]くそ、ひどいなぁ中はぐちゃぐちゃだぞ。
[U-TIC機関兵士]あ、ウヅキ監察官こちらです!
[シオン]え───父さん!
[アレン]は?父さんって、あの人が──!?
[シオン]えぇ、間違いない。スオウ.ウヅキ───私の父よ。
[スオウ]中の献体の様子は?
[U-TIC機関兵士]ダメです、調整槽ごと破壊されてますね。これでは使い物になりませんよ。
[スオウ]まったく、連邦軍も見境のない奴らばかりだな。
[スオウ]おかげで、計画にまた遅れが生じる。
[U-TIC機関兵士]どうしますか?
[スオウ]重要データだけ回収しろ。その他はすべて廃棄だ。
[スオウ]レアリエンは放っておけ、後で処理班に焼却させる。
[スオウ]いくぞ!
[シオン]───
[アレン]ううぇ、ひどい何もここまでやらなくても。
[アレン]えーと?形式番号DZ―2000330、
[アレン]戦闘用レアリエンのようですね。
[アレン]ちょっと、主任何してるんですか?
[シオン]これよ。
[アレン]それ、IDじゃないですか?
[シオン]コネクションギアを貸して。
[アレン]いいですけど、何をするんです?
[シオン]このIDを改竄して二人分のIDを作るのよ。
[アレン]な、まさか?
[シオン]U-TIC機関の研究員のようね。
[シオン]レアリエンのコーディネーターだわ。
[シオン]──中に予備の制服も置いてあるわね。
[アレン]わ、主任!?何やってんですか?
[シオン]調べたい事があるの。先に戻ってていいわよ。
[アレン]いいわよって、主任を一人にできないですよ!
[アレン]一体、どこへ行くつもりなんです?
[シオン]父が向かったのは、おそらくラビュリントスよ。
[シオン]やっぱり、父とU-TIC機関の間には繋がりがあったんだわ。
[シオン]それがなんなのか、調べないと。
[シオン]一緒に来るつもりなら、アレン君も早く着替えて。
[アレン]随分と物々しいですね。
[シオン]連邦の前戦が20kmまで迫っているんですもの当然ね。
[シオン]戒厳令が出ていない分、まだ余裕はあるみたいだけど。
[アレン]連邦軍は何故、一気に攻め込まないんでしょう?
[シオン]攻め込みたくても出来ないのよ。
[シオン]軍の主力を構成しているレアリエン部隊が使えないんじゃね。
[アレン]使えないって、どういう事です?
[シオン]忘れたの?
[シオン]まだ星団全域に拡大させてはいないけれど、
[シオン]U-TIC機関はレアリエンを暴走させる手段を持っているのよ。
[アレン]!!ネピリムの歌声!!
[シオン]そう、それにここには民間人も多いし、なによりゾハルがある。
[シオン]おいそれと恒星間兵器を撃ち込む訳にもいかないんでしょうね。
[警備兵]IDを。
[警備兵]ちょっとまて。お前達、第34特務輸送隊所属じゃないのか?
[警備兵]敵の襲撃を受けて壊滅したと報告されていたが?
[アレン]あ、いや、その、運良く気を失ってしまって───
[アレン]それで、難を逃れる事ができまして───
[警備兵]そうか、無事でなによりだった。で、積荷はどうなった?
[シオン]積荷?
[警備兵]レアリエンだよ。
[アレン]あ、それはすべて破壊されまして──
[警備兵]そうか───計画に支障が出なければ良いが───
[警備兵]もうすぐ、献体を使った接続実験が開始される。
[警備兵]急いだ方がいい。ミズラヒ博士を待たせると、ウヅキ監察官にどやされるぞ。
[警備兵]ミズラヒ博士なら4階に居るはずだ。
[アレン]あの、主任──ここって、
[アレン]以前、KOS-MOSのエンセフェロンにダイブした時に見た
[アレン]病院の一部じゃないですか?
[アレン]でも、病院の警備にしては、厳重すぎる気もしますけど───
[シオン]違う───
[アレン]え?
[シオン]ここ───病院なんかじゃない───
[シオン]間違いない。子供の頃は病院だと思っていたけど───
[シオン]計画に必要な被験者を集めた管理棟なんだわ、ここ。
[警備兵]待ちたまえ。この先はラビュリントスだ、
[警備兵]専用のIDが無ければ、通る事はできないぞ。
[シオン]やっぱり───この施設はラビュリントスの一部なのね。
[警備兵]どうした?
[アレン]あ、あの、IDならここに。
[警備兵]ダメだ。君達のIDでは、ここを通すわけには行かない。
[警備兵]すぐに、作業に戻りたまえ。
[シオン]!?
[アレン]!?
[ヨアキム]そこの二人!何をぼーっとしている!
[ヨアキム]各被験者のパーソナルパターンをセントラルへアップロードしてくれ。
[シオン]え?ヨ、ヨアキム.ミズラヒ博士───?
[ヨアキム]聞こえなかったのか?
[ヨアキム]被験者のパターンをアップロードしてくれと言ったんだ。
[シオン]あ、はい!えー、被験者のパーソナルこれか。
[ヨアキム]早くしたまえ!
[シオン]はい!現在リスト177までクリア。
[シオン]リスト281───アップロード完了まで後15。
[ヨアキム]配属されたてか?
[シオン]は、はい。
[ヨアキム]そうか。新しい助手が来る事は聞いていたが──
[ヨアキム]リスト281、どうかな?
[シオン]はい、リスト281──
[シオン]これって──病棟の患者のリストじゃない。
[ヨアキム]まだか!?
[シオン]あ、リ、リスト281クリア!アップ終了しました。
[シオン]あの、この被験者は?
[ヨアキム]これはアニマの器へリンクが可能な被験者のデータだ。
[ヨアキム]これから彼らの恐怖を制御し、ゾハルへの接続実験を行う。
[ヨアキム]聞いてなかったのか?
[シオン]あ、いえすみません。
[アレン]主任、見てくださいこれ。アニマの器ですよ!
[シオン]ええ。でもどうしてこんな場所に?
[アレン]さぁ、今のところはさっぱり。
[アレン]それにしても、人をアニマの器にリンクさせるってどういう事でしょう───?
[シオン]見てここ。ゾハルだわ。
[アレン]ほんとだ。
[シオン]これを見る限り、アニマの器は
[シオン]ゾハルへアプローチする為の、仲立ちの役割があるみたい。
[アレン]あれってE.S.の動力炉じゃなかったんですか?
[シオン]動力炉というよりはトランスミッター、ううん、翻訳機みたいなものね。
[シオン]人とゾハルの仲立ちとなった結果の副産物。
[シオン]ここで調整が行われて、完成された物を私達が使っていたんだわ。
[シオン]でもこのデータ──何故レアリエンを中継させる必要があるのかしら。
[アレン]恐怖の制御がどうとか言ってましたけど、
[アレン]それと何か関係があるんでしょうか?
[シオン]うーん、わからないわね。
[アレン]し、主任。これ───
[シオン]母さんの名前───?
[シオン]何故、被験者リストに母さんが───!?
[ヨアキム]おい、君!
[シオン]あ、はい!
[ヨアキム]助手のケビン.ウィニコットを呼んできてくれ。
[ヨアキム]フェブロニアの容態を知りたいのでな。
[シオン]ケビン.ウィニコット?
[アレン]それって、ケビンさんの事じゃ!?
[ヨアキム]どうした?早く呼んできたまえ。
[シオン]はい!
[アレン]どういう事でしょう?
[アレン]ケビンさんがこんな場所にいるなんて、聞いた事もありませんよ?
[アレン]ただの人違いでしょうか?
[シオン]私だって初耳よ。
[シオン]ケビン先輩も、ヴェクターに入社する前の事は話してくれなかった。
[シオン]でも、レアリエンの構造学に詳しかったり、ヒルベルトエフェクトの理論構築をしたり、
[シオン]ミズラヒ博士の助手をしていたとしたらそれらも納得できるわ。
[少年]なんですか、君達は?ノックもなしに失礼な!
[シオン]あ──あなたは!?
[少年]ん?以前どこかでお会いした事が──?
[シオン]い、いえ。あの、もしかしてウィニコットさんですか?
[ケビン]なんです、僕の名前がそんなに珍しいのですか?
[シオン]あ、いえ───失礼しました。
[シオン]あの、ミズラヒ博士がお呼びです。
[シオン]フェブロニアの容態を報告しろと。
[ケビン]もう、そんな時間か───
[ケビン]わかりました。準備をするので、博士にはすぐに上に行くと伝えてください。
[シオン]あの少年がケビン先輩───?
[アレン]確かに、面影がありますけど。でも雰囲気、違いません?
[シオン]そうね──でも、間違いないと思う。
[シオン]彼はケビン先輩よ。U-TIC機関に関わりがあったなんて───
[アレン]──主任、主任!
[シオン]何?
[アレン]これ、見てください!
[シオン]グノーシス現象に対抗する為の兵器群の主幹OSについて。
[シオン]グノーシス戦における人型兵器の有用性?
[シオン]──秩序に従属する戦略的多目的制御体系に関する基礎理論?
[シオン]ちょっと、これって、KOS-MOSの基礎理論じゃない?
[アレン]間違いありませんよ。この時期から基礎構造部分の研究をしていたんですよ。
[アレン]やっぱり、彼はケビンさんだったんだ。
[アレン]て、何やってるんですか主任!?
[シオン]何って、これのバックアップを取るのよ。
[アレン]え!?ここでですか!?そんな無茶な。
[シオン]無茶なのは分かってる。
[シオン]でもこれがあればKOS-MOSを再起動できるかもしれないのよ?
[シオン]ごめん、作業が終わるまで彼の気を引いててちょうだい。お願い。
[アレン]気を引くって言っても───
[ケビン]まだ居たんですか?
[アレン]え、いや───あ、あのお聞きしたい事があるんですが?
[ケビン]なんです?
[ケビン]すぐに接続実験が始まるんですよ?後にしてくれませんか。
[アレン]あの、すぐに済みます。
[アレン]実はレアリエンに関する精神安定の有用性についてなんですが───
[アレン]主任──早くしてくださいよ。もう、誤魔化しきれませんよぉ。
[ケビン]まったく、いい加減にしてください。僕は急ぎますので。
[ケビン]すぐに部屋を出て行ってください。
[シオン]あ、あの───すみませんでした!
[シオン]ほら、アレン君行くわよ!
[アレン]え、あ、はい~。
[警備兵]どうした?
[シオン]あの、扉が開かなくて──
[警備兵]当たり前だ、この先は特別管理区なんだ。許可なく入る事はできないぞ。
[シオン]その、私達、被験者管理棟に資料を届けるように言われて。
[警備兵]IDを。
[シオン]はい。
[警備兵]確認した。ロックを解除するから、すぐに行きたまえ。
[アレン]主任、あれ!
[シオン]あ!
[警備兵]今度はなんだね?
[シオン]あ、あの映像はなんですか?
[警備兵]ん?おい、その映像はどこのだ?
[警備兵]あぁ、地下の隔離研究棟の監視カメラの映像だな。どうかしたのか?
[シオン]あ、いえちょっと気になったもので。
[警備兵]お前達には関係のない場所だ。余計な詮索をせずに、さっさと持ち場に戻れ!
[シオン]すみません。
[アレン]主任、アレは確かにアニマの器でしたよ。
[シオン]ええ、間違いないわね。
[シオン]ここで、アニマの器とゾハルの接続実験が行われてるんだわ。
[シオン]失礼します。資料をお持ちしました。
[スオウ]ああ。そこに置いといてくれ。
[シオン]と、父さん──?
[スオウ]時間が押しているぞ、フェブロニアとのリンク状況は?
[研究員]献体側の数値が安定しておりません。
[研究員]やはり、フェブロニアの回復が万全でないと。
[スオウ]多少の負担は構わん。実験は続行するぞ。
[シオン]母さん───!
[スオウ]おい、君、すまんが解析データのログを(転送/フォワード)してくれ。
[スオウ]シーケンス306でのエラーの原因を確かめたい。
[シオン]───何よ、これ母さんを使っての実験ってどういう事?
[スオウ]君、どうした?早くデータの確認をしたまえ!
[シオン]この人───あなたの家族じゃないんですか?
[スオウ]───ん?
[シオン]一体、何の実験ですか?実の家族を被験者に仕立てるだなんて!
[アレン]し、主任───!?
[スオウ]何を言ってるのか解らんが。
[シオン]身内を被験者として差し出す非道さの事を言ってるんです!
[シオン]いいえ、彼女だけじゃないわ。どれだけ多くの人をあなた達は───!
[スオウ]必然性があるからここに居る。それだけだ。
[シオン]何の必然性ですか?このパーソナルデータ、ちゃんと見てるんですか?
[シオン]明らかに意識下で苦しんでるじゃないですか!病人をこんな事に───
[スオウ]バカな、単なる数値の問題だろう。
[スオウ](穿/うが)って見るからそのように見えるだけだ。
[スオウ]彼女は何も感じない。何も語らない。
[スオウ]こんなものは単なる末梢神経の反射反応に過ぎない。
[シオン]行為を正当化しようとして、こじつけているだけです!
[スオウ]何だというのだ?こじつけているのは君だろう。
[スオウ]大体、たかがいち研究所員である君に、
[スオウ]本計画に口を挟む権利があるのかね?身分を弁えたまえ!
[シオン]くっ───
[少女]───父さん?
[シオン]あ──
[スオウ]シオン!?
[スオウ]また無断で入って来ていたのか?あれほど駄目だと言ったろうに。
[シオン]───
[シオン]でも、母さんの病気───心配だったから。
[スオウ]今日はお見舞いの日じゃないだろう?すぐに家に帰るんだ。
[スオウ]母さんの事は父さん達に任せなさい。
[シオン]でも───
[スオウ]シオン!
[シオン]あの、私が送ります!
[スオウ]───君が?
[シオン]はい、あのすみませんでした。
[シオン]疲れで、気持ちが不安定になってまして──
[スオウ]ふむ、そうか───では娘の事を頼む。
[シオン]さ、おねぇちゃんと一緒に行こう。
[シオン]お母さん、きっと良くなるから大丈夫よ。
[シオン]お医者さんだって沢山付いてくれてるし、ね?
[シオン]うん───
[シオン]えっと───お家の場所、B-32区でいいのよね?
[シオン]───
[シオン]どうしたの?
[シオン]まだ、帰りたくない───
[シオン]ん───でもお父さんのお仕事、夜までかかるし。
[シオン]兵隊さん───
[シオン]兵隊?
[シオン]怪我した兵隊さんのお見舞い───
[シオン]あ───あの教会に行きたいの?
[シオン]うん。お花もって行ってあげるの。
[シオン]そっか。じゃ、行ってみようか。
[シオン]こっち、外のお庭にお花があるの!
[シオン]ここ!
[シオン]綺麗ね──これ、シオンちゃんが育てたの?
[シオン]うん!フェブがね、種をくれたの。
[シオン]あのね、もっともっといっぱいお花を咲かせるの。
[シオン]そしたらきっと母さんも喜んでくれるから。
[シオン]そうね、きっと喜んでくれるわ。
[シオン]さぁ、兵隊さんのお花を選びましょうか。
[シオン]うん!
[ケビン]仕事を放棄して、こんな所で保育士の真似事ですか?
[シオン]ウィニコットさん──これも、仕事です。
[ケビン]それは失礼。
[ケビン]しかし悠長なものですね。(戦時中/こんなとき)だというのに造園とは。
[シオン]こんな時だからこそですよ。
[シオン]戦争という不自然な状況に対して、
[シオン]創造という行為で抗う事のどこがいけないんですか?
[ケビン]互いの存在を賭けて戦うのは人の本質であり業だ。
[ケビン]それに抗おうとする方が不自然なんですよ。
[シオン]ケビン.ウィニコットさん───でしたよね?
[ケビン]おかしな人だなぁ。そんなに僕の名前が変ですか?
[シオン]あなた───本当にケビンさんなんですか?
[シオン]もう、行こうよ。
[シオン]あ、うん教会に行こうね。
[シオン]失礼します!
[シオン]シオンちゃん?まって、どこに行くの?
[シオン]こっちの方が近道なの。
[シオン]あ──そっか。──そうだったよね。
[シオン]おねぇちゃん、早く!
[シオン]うん、行こうか。
[ジン]ふむ──順調に回復してますよ。
[ジン]でも、もうしばらくは安静にしていてください。
[バージル]ちっ、余計な事をしやがって。てめぇら、何モンなんだ?
[バージル]U-TIC機関でも、連邦の人間でもなさそうだし、
[バージル]ただの民間人にしては怪しすぎるな?
[ジン]言ったはずですよ、ゆっくり休みなさいと。
[ジン]事情があって素性を明かす訳には行きませんが、
[ジン]少なくとも、貴方の敵ではありません。
[ジン]余計な事に神経を使う必要はないでしょう。
[ジン]シオン?
[シオン]え、そ、そうよ。シオンちゃんよ!
[ジン]あ、ああ。ど、どうしたんですか?
[シオン]あの──これ!
[バージル]な、なんだよ?
[バージル]花?俺に花か?
[シオン]うん、綺麗に咲いたから。お見舞い!
[バージル]おい、待てよ。ふざけんなよ、こんなモン────
[シオン]もらってくれないの?
[バージル]ん──い、いや──あ、ありがとうな。
[シオン]うん!怪我、はやく治してね。
[バージル]くそ、がらじゃねぇ。
[シオン]うふふ。
[バージル]何、笑ってんだよ!
[シオン]ごめんなさい。なんか、最初の印象と違ったので、
[シオン]おかしくて──
[バージル]悪かったなぁ、どうせ花なんか似合わねぇよ。
[シオン]ううん、違うの。よく似合いますよ。
[バージル]ちっ。
[フェブロニア]楽しそうですね。
[シオン]あ、フェブ!
[シオン]フェブロニア──さん。
[フェブロニア]元気になられて、よかったですね。
[バージル]それ以上近寄るな、レアリエン!
[シオン]バージル!?
[バージル]そいつは、U-TIC機関のレアリエンだ。
[バージル]そいつ等の為に、何人の仲間が殺されたと思ってるんだ!
[シオン]やめて、バージル。彼女は貴方の命を救ってくれたのよ?
[バージル]余計な事してくれたぜ!
[バージル]貴様の一部が、俺の中に入ってると思うと反吐が出る!
[バージル]体が満足に動く状態なら、すぐにでも自害してやるぜ!
[シオン]言いすぎよ、バージル!
[バージル]てめぇには、関係ねぇだろう─────
[フェブロニア]悲しい事を言わないでください。貴方の命を救う為に、どれだけ皆さんが苦労したか。
[フェブロニア]そんなに軽々しく、命を捨てるなんて言わないで。
[バージル]レアリエンが人の命を語るのかよ!
[フェブロニア]ええ、確かに私はレアリエンです。
[フェブロニア]私達は、人間の役に立つ為に作られました。
[フェブロニア]私の妹達も、その為の辛い実験に耐えています。
[フェブロニア]でも人間を憎む気持ちはありません。
[フェブロニア]それが、私達の生きている証だから。
[バージル]くだんねぇな。何が生きている証だよ。
[バージル]そんなもん、インプットされたプログラムに過ぎねぇよ。
[フェブロニア]そう思って頂いて構いません。でも、
[フェブロニア]今の私のこの気持ちは、プログラムなんかじゃない。
[バージル]は?気持ちだ?
[フェブロニア]私は、貴方に生きていてもらいたい。
[バージル]────ちっ。気分が悪くなっちまった、休ませてもらうぜ。
[シオン]フェブ───
[フェブロニア]私達は決して、人を不幸にしたいと思っているわけではありません。
[シオン]うん、分かってる。 いつか解り合える時が来るわよ。
[フェブロニア]さぁ、シオン。お祈りをしましょう。
[シオン]フェブは、何をお祈りするの?
[フェブロニア]可愛い妹達の為に。素敵な未来をお与え下さいって。
[シオン]そっか、セシリーとキャスも、また一緒に遊んでくれるかな?
[フェブロニア]ええ、二人共シオンに会えるのを楽しみにしていたわ。
[フェブロニア]シオンは、何をお祈りする?
[シオン]あのね、私は母さんが早く元気になりますようにって。
[シオン]あと、兵隊さんも元気になりますようにって!
[フェブロニア]ええ。 そうね、一緒にお祈りしましょう。
[ジン]シオン、行きましょう。
[シオン]兄さん───
[マーグリス]レアリエンの暴走とは──考えたものだな。
[マーグリス]その第一人者が仕掛けた、トロイの木馬。
[マーグリス]──シナリオとしては、いい線をいっている。派手さはないが──
[セラーズ]ミズラヒをスケープゴートにすると言い出したのは、ウィニコットだ。
[セラーズ]あの歳で、大した策士ぶりだよ。
[マーグリス]調整済みのレアリエンを運んだ輸送部隊が、
[マーグリス]連邦に襲撃されたのは聞いているか?
[セラーズ]なあに、レアリエンを数体失っただけだ。計画の進行に支障はない。
[セラーズ]連邦の動きが気にはなるがな。
[マーグリス]降下作戦の詳細はすべて把握済みだ。
[マーグリス]ここの要人の撤退までの時間稼ぎはできている。
[セラーズ]助かる。
[マーグリス]──で、どうだ?Y資料、解析できたのか?
[セラーズ]いや──断片らしきファイルは見つけたが──
[セラーズ]奴は、頑として口を割らんしな。
[セラーズ]ウィニコットに探りを入れさせているが、どうかな。
[マーグリス]ゾハルの稼働が叶えばいい。後の事はそれからだ。
[セラーズ]段取りは?
[マーグリス]ゾハルの回収に合わせて、貴様達も拾ってやる。
[セラーズ]期待しないで待っているよ。
[セラーズ]いざとなれば、ネピリムの歌声ごと宇宙へ上がる事も出来るからな。
[フェブロニア]よかった、食べてくれたんですね。
[フェブロニア]お口に合いました?
[バージル]────
[フェブロニア]でも、この調子なら、すぐにでも外に出られるようになりますよ。
[バージル]あのガキは、今日はいないのか?
[フェブロニア]シオン?あの子なら、お花を摘みに行っていますよ。
[バージル]そうか──
[バージル]なぁ、一つ聞いてもいいか?
[フェブロニア]私に答えられる事でしたら。
[バージル]どうして助けた?
[バージル]俺はお前達の敵だぞ──
[フェブロニア]そのようですね──でも、私には関係のない事。
[フェブロニア]───あなたを助けたかった、それだけです。
[バージル]納得できねぇな。
[バージル]俺は、お前達レアリエンを処理する為に、この星に降下してきたんだぞ。
[バージル]俺を助ければ、お前が殺されるかもしれないと考えなかったのか?
[フェブロニア]ええ、全然。助ける事に必死だったから。
[バージル]そんな理屈──わからねぇよ。
[フェブロニア]命を助けるという事がそんなにおかしな事ですか?
[バージル]俺はレアリエンを殺せと命令されてたんだ。軍人にとって命令は絶対だ。
[フェブロニア]命の重さと等しいものなんてありません。
[フェブロニア]それは軍人もレアリエンも同じなのではないでしょうか。
[フェブロニア]私は貴方に生きていてもらいたい。そう思ったから、こうしてあなたと一緒にいるんです。
[フェブロニア]少し眠られたらどうですか?
[フェブロニア]今は体力を回復する事に専念しないと。
[バージル]俺に──指図するな。
[フェブロニア]はい。
[バージル]────食事、うまかった。
s060010_21feb
[ケビン]へぇ
[ケビン]こんな場所で育つなんてね
[ケビン]よく枯れなかったものだ
[シオン]枯れないもん
[シオン]毎日ちゃんとお水あげてるしお薬だって
[ケビン]なるほどね
[ケビン]ま この先枯れない保証はないけどね
[ケビン]一つ聞きたいんだけどさ
[ケビン]こんな場所に花を植えてどうしたい訳
[ケビン]どうせ植えるなら裏庭の花壇にでも植えればいいのに
[シオン]だめ
[シオン]そこじゃ母さんのお部屋から遠いもん
[シオン]ここなら母さんのお部屋に近いし
[シオン]父さんにも見て貰えるから
[ケビン]ウヅキ監察官が 花なんかに興味を持つとは思えないけどね
[ケビン]いいかい
[ケビン]僕達が生きる為には
[ケビン]他の生き物を支配し 破壊し食べなければならない
[ケビン]これは生物が生きていく為の本能だ
[ケビン]君の行為には 何の意味もないんだよ
[シオン]そんな事ない
[シオン]綺麗なお花が咲けば
[シオン]みんな優しい気持ちになってくれるよ
[シオン]父さんだって きっと───
[ケビン]どうかな
[シオン]フェブが言ってたもん
[シオン]だからここに植えたの
[ケビン]ふーん
[ケビン]僕には理解出来ないね
[シオン]ねぇ
[シオン]そこに居るなら手伝ってよ
[シオン]そっちのお花にお水をあげて
[ケビン]え
[ケビン]何で そんな事しなきゃならないんだ
[シオン]だって 暇そうにしてるんだもん
[シオン]ぐずぐず言わないで
[シオン]ほら 早くしてよ
[ケビン]な よせよ
[ケビン]冷たいな
[ケビン]どうしてくれるんだよ
[シオン]ずぶ濡れだぁ
[ケビン]まったくいい災難だ
[ケビン]で どうすればいいんだって
[シオン]お水をあげるの
[シオン]そっち あとこっちも
[シオン]だめぇ
[シオン]もっと優しくしてあげなきゃ
[シオン]お花さんが可哀想だよ
[ケビン]優しくって たかが花だろ
[シオン]違うの
[シオン]貸して こうやるのよ
[スオウ]シオン
[シオン]はーい
[シオン]じゃ ちゃんと お水あげてね
[ケビン]え
[ケビン]おい
[ケビン]しょうがないな───
[スコットクン]へぇ、これがKOS-MOSの基礎理論ですか?
[ハカセ]ほうほう、ふむふむ。なかなかよく計算されとるわい。
[Jr.]で、どうなんだよ?
[シオン]KOS‐MOSを直す事は可能ですか?
[ハカセ]わからん!
[アレン]わからんって───
[ハカセ]この持ち帰ってきたデータと、嬢ちゃん達が新たに設計した筐体があれば、
[ハカセ]たしかに、元の形に戻す事は可能じゃ。
[シオン]だったら──
[ハカセ]それでもじゃ。
[ハカセ]それでも、こいつには未知の部分が多すぎるんじゃよ。
[ハカセ]修理が完璧でも、再起動できるかどうか───
[スコットクン]僕達の専門分野であるエルデカイザーとは、まったく別のモノですからねぇ。
[ハカセ]まったくじゃ、こいつは合体どころか変形さえできんからのぉ───
[アレン]おいおい、問題はそこじゃないでしょう──
[ハカセ]何かいったか?
[アレン]あ?いえ、何も。
[ハカセ]まぁ、とりあえず、やるだけはやってみるわい。
[ハカセ]こいつを好きにいじくれる機会なぞ、そうはないからのぉ。
[ハカセ]うひょひょひょひょ。
[スコットクン]そうですよね。 うへへへへへ。
[アレン]───主任、本当に大丈夫ですか?
[アレン]ハカセ達に任せたら、輪をかけて悲惨な状況になるかも───
[ハカセ]聞こえとるぞ、このスカタン!
[ハカセ]ことメカに関しては、手を抜くことなどせんわい!安心してまかせておけい。
[ハカセ]それより、こんな所にゾロゾロおられたら作業の邪魔じゃわい!
[ハカセ]さっさと出て行け!
[スコットクン]ラウンジで流行のゲームを遊んでみたらどうです?
[スコットクン]少々中身をいじくってみたので、楽しめると思いますよ。
[Jr.]へー。まぁ、気分転換にはいいか。行ってみようぜ、シオン。
[アレン]そうですね、主任、僕もお供しますよ。
[ハカセ]まて。お前はここに残るのじゃよ。助手二号。
[アレン]は?
[ハカセ]当たり前じゃろ!
[ハカセ]臨時助手の分際で、もう仕事をサボるつもりか!
[スコットクン]さぁさぁ、張り切っていきましょう!アレンさん。
[Jr.]なかなかおもしろかったじゃん。あの二人にしてはいい仕事してるぜ。
[ジギー]どうだ?少しは気がまぎれたか?
[シオン]うん。ごめんね、みんなに心配かけてたみたいで。
[Jr.]気にすんなよ、仲間だろ?何かあったら、遠慮なく言えよ。
[シオン]ありがとう。
[シオン]ちょっと部屋で休んでるわ。何かあったら、呼び出しをお願い。
[Jr.]ああ、わかった。
[スコットクン]ハカセ、二次(装甲/エクステリア)の取り付け終わりました。
[ハカセ]よし、再起動させてみるぞい。助手二号!
[アレン]はいはい。さぁ、KOS-MOS。目覚めの時間だぞ。
[アレン]────ダメじゃないですか!
[ハカセ]おかしいのぉ?嬢ちゃんの持ってきたデータでコアの修復は完璧なはずじゃぞ。
[ハカセ]一体、どこに問題があるんじゃ?
[スコットクン]ハカセ、やっぱりアレですよアレ。
[ハカセ]おお!やはりアレか!
[ハカセ]愛と勇気じゃな!
[スコットクン]愛と勇気ですよ!
[アレン]────いや、問題はあなた達だと思うんだけどなぁ───
[ハカセ]おい、助手二号!
[アレン]あ、はい!?
[ハカセ]何をボサッとしとる!はよ、嬢ちゃんを呼んで来んか?
[ハカセ]専門家の意見を聞いてみたい。
[アレン]専門って、あの僕もその専門ですけど?
[ハカセ]お前さんじゃ、頼りにならんじゃろ!早よぉ、呼んで来い!
[アレン]────はいはい。
[スコットクン]ハカセ、リアクターの出力が不安定ですよ?
[スコットクン]さっきの余った部品、必要だったんじゃないんですかね?
[ハカセ]細かい事を気にするんじゃない。きっと計器の故障じゃろう?
[ハカセ]ちぃと、叩いてみぃ。
[シオン]───私はこれから先起こる事を知っている
[シオン]それは多くの人を不幸にし
[シオン]この世界に取り返しのつかない傷跡を残した
[シオン]今なら その全てを変える事が出来るかもしれない
[シオン]KOS‐MOS───
[シオン]貴方だったらどうする
[シオン]いつものように[論理的/ロジカル]ではないと私をたしなめる
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]貴方は多くの人の運命を前に
[シオン][論理的/ロジカル]だからと見過ごしてしまえるの
[シオン]誰?
[アレン]僕です。アレンです。あの───ちょっといいですか?
[シオン]いいわよ───どうしたの?
[アレン]どうも───ってうわっ!
[シオン]何?早くして頂戴、風邪引いちゃうわ。
[アレン]い、いや、そういう事じゃなくて───ええと───
[アレン]あ、あのぉ───ハ、ハカセがぁ───
[シオン]ハカセが、どうかしたの?
[アレン]えと───KOS-MOSの再起動がうまくいかないので
[アレン]主任の意見が聞きたいとハカセが───
[シオン]そう───いいわ、すぐに──
[シオン]何!?
[アレン]主任!?
[アレン]大丈夫ですか、主任?主任!?
[アレン]ぐはぁ!
[シオン]爆発はどこ?
[アレン]えぇぇと、KOS-MOS調整室のようです。
[シオン]何してるの?行くわよ、アレン君!!
[アレン]あ、待ってくらふぁいよぉふにーん!
[ハカセ]このぉ
[ハカセ]とっ とっ 年寄りに何をするんじゃ
[ハカセ]最近の若い奴は 礼儀を知らんのか
[スコット]ハカセ──
[スコット]暴漢に礼儀は関係ありませんよぉ
[トニー]おい おい おい おい
[トニー]誰だぁエルザにこんなマネしやがったのは
[トニー]船長
[トニー]ここは俺とちび旦那に任せて
[トニー]ハカセとスコットクンを
[Jr.]くそ 何で 奴がエルザに居るんだ
[Jr.]ハマー セキュリティーはどうなってんだよ
[ハマー]こっちが聞きたいッスよ
[ハマー]セキュリティーは全く正常
[ハマー]猫の子どころか虫だって入れっこないッス
[マシューズ]誰のせいでもねぇよ
[マシューズ]相手があのバケモンじゃあな
[ジギー]どいてろ
[Jr.]おい おっさん
[ジギー]心配するな
[ジギー]今の俺は至って冷静だ
[ジギー]ヴォイジャー
[ジギー]何故ここに居る
[ジギー]貴様らの目的は何だ
[Jr.]おっさん
[シオン]Jr.君 大丈夫
[Jr.]こっちに来るな シオン
[Jr.]ここはヤバイ
[シオン]あれは───黒のテスタメント───
[シオン]KOS‐MOS
[ケイオス]シオン いけないっ
[シオン]KOS‐MOSを──離し──
[シオン]ヒ───ヒルベルトエフェクト
[Jr.]すげぇ──前よりも数倍パワーが上がってるぜ
[シオン]KOS‐MOS 貴方──
[KOS‐MOS]シオン あの敵性体を倒す為に力を貸して下さい
[シオン]ええ 分かったわ
[シオン]行くわよKOS‐MOS
[KOS‐MOS]了解 最大出力で対応します
[ジギー]ヴォイジャー
[ジギー]いつまでこんな事を続けるつもりだ
[ジギー]これで この程度の事で
[ジギー]お前の渇きが癒されるとでも言うのか
[ジギー]答えろ エーリッヒ
[ジギー]それで勝ったつもりか
[KOS‐MOS]チェックメイトです
[赤の外套者]いつまで遊んでいるつもりだ
[赤の外套者]時間の掛け過ぎだ 下がれ
[赤の外套者]彼女が目覚めたのならば次の手を考えねばならん
[ヴォイジャー]残念ですが 時間切れのようです
[ヴォイジャー]この私を傷つけた報いいずれふさわしい場所で決着を
[ヴォイジャー]ごきげんよう ジャン?ザウアー
[モモ]助かったんですか───
[ジン]ええ 助かりましたよ
[ジン]このまま戦っていたら
[ジン]我々の方がただでは済まなかったでしょう
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]貴方 心配ばっかりかけて───
[KOS‐MOS]シオン 私の機能停止中に
[KOS‐MOS]貴方の精神にかなりの負担をかけていたようですね
[KOS‐MOS]申し訳ありません
[シオン]そうよ 本当に──心配したんだから───
[シオン]本当に良かった──コス──モ──
[KOS‐MOS]シオン
[ジン]シオン
[アレン]主任
[ジン]シオン
[シオン]?
[シオン]あなたは──ヨアキム.ミズラヒ博士───?
[ヨアキム]波というものは、どこか人と人の関係に似ているとは思わないかね?
[ヨアキム]寄せて、引いて───互いの距離を確かめ合うかのように───
[ヨアキム]そんな営みを永劫に繰り返している。
[シオン]──────
[ヨアキム]お嬢さん───君は、お父さんの事は好きかね?
[シオン]え?
[ヨアキム]思えば、親子というものも、この波に似ているな───
[シオン]あの───あなたと父とは───その
[シオン]───どういった関係だったんですか?
[ヨアキム]知ってどうするね?
[ヨアキム]知ったとて、今の君にとって益のある事とは思えないが───
[シオン]私は───
[ヨアキム]言葉というものは、聞き取る側の思い一つで、どうにでも変化するものだよ。
[ヨアキム]良き言葉にも、悪しき言葉にも───な。
[ヨアキム]伝えようとしても、伝わらない言葉もある。
[ヨアキム]良かれと思った事が、必ずしも良き方向に向かうとは限らん───
[ヨアキム]君も科学者なのだろう?だったら解る筈だ。
[シオン]それでも知りたいんです!でないと私は───
[シオン]私はどこに立っていればいいの───?
[ヨアキム]あの男の言葉は───ただの(枷/かせ)だ。
[シオン]あの───男───?
[ヨアキム]あれは───(我執/がしゅう)に取り込まれた男だ。かかわる者全てを不幸にする。
[ヨアキム]私は視たくはないんだ───君の哀しむ姿はね───
[シオン]誰の事を言ってるんですか?私にはそんな人───
[ヨアキム]私はサクラと約束をした。
[ヨアキム]生まれくる新しい意識がみな幸せに暮らせる世界を創る事を。
[ヨアキム]君にも、そんな世界で暮らして欲しい。そう願っているよ。
[シオン]ミズラヒ博士───
[ヨアキム]望まない事はしない方がいい。自分に、素直になりなさい。
[ヨアキム]そうすれば、彼女は応えてくれる───
[シオン]KOS‐MOS───
[シオン]に、兄さん───
[シオン]私───
[ジン]過労による貧血ですよ。まったく、少しは休んだらどうです?
[ジン]それとも、藪医者の言う事は聞けませんか?
[シオン]───ごめん気をつける。
[シオン]兄さん──あのね父さんに会ったわ。
[ジン]そうですか───
[シオン]父さんと何を話したのか聞かないの?
[ジン]聞くも何も、ろくに会話などできなかったのでしょう?
[ジン]そんな器用な真似の出来るお前じゃない。
[シオン]いじわるなのね。
[ジン]───
[アレン]主任───?
[シオン]U-TIC機関にはアニマの器があったわ。まだ完全ではないみたいだけど、
[シオン]ミズラヒ博士の口調からして、ゾハルの稼働にアニマの器は欠かせない物に違いないわ。
[シオン]彼らの実験を阻止出来れば、ミルチアの事象変移は防げるに違いない。
[シオン]そうすれば───
[ジン]母さん達を助ける機会が生まれるかもしれない───ですか。
[シオン]それに、アニマの器が使えれば、
[シオン]ハカセの言っていた元の世界に戻るのに必要なエネルギーが
[シオン]得られるかもしれないんでしょう?
[シオン]ミズラヒ博士が本当は何をしようとしていたのかも、判るかもしれないし。
[ジン]たしかに、それは可能かもしれない。
[ジン]しかし、それにはリスクが大きすぎます。
[シオン]でも、このままでも私達がどうなるか分からないじゃない!
[シオン]止めても無駄だからね。
[シオン]今の自分にとって不要な過去だもの。必ず変えて見せるんだから。
[ジン]シオン───今の自分が自分で在る為に、過去は必要なんですよ───
[ハカセ]なるほどのぉ──
[ハカセ]確かに、アニマの器があるのなら
[ハカセ]そのエネルギーを使って元の世界に戻る事ができるかもしれんぞ。
[ジギー]いつまた奴らが襲ってくるかもわからん、
[ジギー]E.S.が稼動できるようになれば、それだけ助かる。
[ケイオス]でも、それがある場所はラビュリントスの深部なんだろう?
[ケイオス]そう易々と潜入させてはくれないだろうね。
[シオン]偽造したIDがあるわ。これをうまく使えば、潜入は容易よ。
[ハカセ]どちらにせよ、我々がこの世界に存在する事により
[ハカセ]宇宙全体のひずみが拡大しておる。
[ハカセ]このままでは、ワシらが消えてしまうどころか、
[ハカセ]最悪、宇宙が崩壊してしまうじゃろう。
[Jr.]わかった。すぐに潜入の準備をしてくれ。
[Jr.]後にミルチア紛争と呼ばれる第三次降下作戦も後数日で決行される。
[Jr.]急がなきゃならないぞ。
[モモ]────
[シオン]あれよ。あのゲートからラビュリントスへ侵入できるわ。
[ジギー]警備兵がいるな───
[Jr.]IDがあるなら、問題ねえだろう?
[アレン]いえ、それが──このIDではこれ以上先に進む事はできないんですよ。
[ジギー]ほかにルートがないのなら、強行突破するしかあるまい。
[Jr.]だな、遅かれ早かれ戦闘は避けられないんだ。とっとと片付けちまおうぜ!
[シオン]この番号───
[KOS-MOS]どうしました、シオン?
[シオン]KOS‐MOS、この扉の奥ってどこに繋がっているかわかる?
[KOS-MOS]15年前のデータとの差異がなければ、
[KOS-MOS]この先には特殊機材搬出用のエレベーターがあり、
[KOS-MOS]おそらく重篤神経症治療施設へ繋がっていると思われます。
[シオン]やはり───母さんの病室に繋がっているのね。
[Jr.]おい、どうしたんだ?何かあったのか?
[シオン]いえ、なんでもないわ。先を急ぎましょう。
[Jr.]ん、あれは?
[セラーズ]いいか、娘の人形に現を抜かすのもかまわんが、
[セラーズ]本来の目的を忘れてもらっては困る。
[セラーズ]作戦はすでに始まっているのだ。
[ヨアキム]貴様とウィニコットの立案したものだ。
[ヨアキム]私がいなくても、なんら問題はなかろう?
[セラーズ]いつまでもその気の抜けた状態を続けるのならば、
[セラーズ]貴様に代わりこの私が実験の指揮を執らせてもらうぞ。
[ヨアキム]いまさらだな。好きにするがいい。
[ヨアキム]私にはもう関係のない事だ。
[Jr.]ヨアキム.ミズラヒ博士か?
[モモ]パパ───
[Jr.]おい、モモ!
[ヨアキム]ん?君はなんだ?ここは、子供の来る所では────
[モモ]あ、あの、すみません迷ってしまって───
[ヨアキム]ははは、お嬢ちゃんはウソをつくのが下手なようだな。
[ヨアキム]ちょっと、手伝ってもらえんかね?
[モモ]あ、はい!
[モモ]あの、博士は何の研究をしているんですか?
[ヨアキム]ん?
[ヨアキム]私はね、お嬢ちゃんのようなレアリエンを作っているんだ。
[モモ]え!?あの私──
[ヨアキム]隠さなくてもいい、分かるよ、私にはね。
[ヨアキム]───私は娘を病気で亡くしてね。
[ヨアキム]もしその(意識/こころ)を取り戻せたら、娘を生き返らす事ができるかもしれない。
[ヨアキム]そう思っていた。
[ヨアキム]その為にU.M.N.、ゾハル、そしてウ.ドゥといったものを研究していたんだ。
[モモ]死せる人の意識の復活───
[ヨアキム]そうだ。 (U . M . N ./ウーヌス.ムンドゥス.ネットワーク)───その名の通り、
[ヨアキム]U.M.N.はこの宇宙が誕生したその瞬間から存在する、根本原理、
[ヨアキム]集合的無意識の場と言われている。
[ヨアキム]私はゾハルの研究を通して、(U.M.N./そこ)には人の意識らしきものが存在する事を突き止めた。
[ヨアキム]意識はU.M.N.から生まれ、U.M.N.へと還る───
[ヨアキム]その術を見出せば、私の悲願をも現実の物とできる筈だった。
[ヨアキム]だが───娘の意識は消えてしまった。
[ヨアキム]芽生えつつある新たな意識は、娘のそれとは違うようだ。
[モモ]─────
[ヨアキム]だが、私はそれで良かったと思っている。
[ヨアキム]この子は全てのレアリエンの希望となるだろう。
[ヨアキム]その希望は、迫りつつある宇宙の拡散を止める手段と成り得るかもしれない。
[ヨアキム]私達の二人目の娘───サクラは───きっとそれを願っていたんだ。
[モモ]サクラさん───っていうんですか?
[ヨアキム]あぁ。妻と私と、二人でつけた名前だ。
[ヨアキム]君のように可愛い子だったんだよ。
[ヨアキム]君達の為にこの世界は存在し続けなければならない。
[ヨアキム]彼らを止めなければ。
[モモ]彼ら?
[ヨアキム]あぁ、済まなかったね。こんな年寄りの話につき合わせてしまって。
[ヨアキム]さぁ、いきなさい。君の事を心配している人がいるはずだよ。
[モモ]───パパ。
[Jr.]モモ、大丈夫か?
[モモ]パパと、お話したんです。パパが私は二人目の娘だって──
[モモ]私達の為に世界を守るんだって───
[モモ]モモ──モモ───
[Jr.]あぁ、わかってる。よかったな───
[ジギー]待て!
[シオン]アレは───ケビン先輩と父さん?
[シオン]ここは──?
[ケイオス]彼の個室みたいだね。
[モモ]シオンさん、これ!?被験者のリストですよ!
[シオン]やっぱり、ケビン先輩もU-TIC機関の計画に絡んでいたの───
[モモ]シオンさん!この名前!!
[シオン]そうよ、私の母の名前よ。母は、ここで実験の犠牲になってるのよ。
[シオン]信じていた人の手にかかってね。
[モモ]違います!その下の名前です!
[シオン]下?
[シオン]シオン.ウヅキ───!
[シオン]そんな?どうして私の名前が!?
[シオン]兄さん、ちょっとこれはどういう事!?
[シオン]まさか、何か知ってるのね?そうなんでしょ?
[ジン]────
[シオン]そんな、兄さんも父さんと同じなの───
[シオン]すべてを知っていて、母さんを───
[ジン]違う、違うんですシオン!
[シオン]何が違うのよ!?やましい事がないなら説明してよ!
[ジン]シオン───
[シオン]!?
[シオン]何!?こ、これは────そんな──
[ハカセ]ほう、これは戦闘用のレアリエンか?
[Jr.]間違いないな。
[Jr.]ミルチア紛争時にU-TIC機関が使用した試作型の戦闘用レアリエンだ。
[シオン]これ───母さんを殺したレアリエンじゃない───
[シオン]なんで、こんな所にいるのよ?
[ハカセ]なんでも何も、ここで開発されてたんじゃろ。
[シオン]うそよ───そんな───ケビン先輩が母さんを────?
[シオン]絶対にウソよ!
[Jr.]おい、シオン!
[ジン]大丈夫ですか?なんなら作戦を中止して──
[シオン]──大丈夫、ちょっと混乱しただけ。
[シオン]紛争が始まれば、ここも戦場になる。そうなれば手遅れになるわ。
[シオン]このチャンスを逃したら、アニマの器の奪取は不可能よ。
[ジン]シオン───
[Jr.]おい、人がいるぜ?
[ケイオス]シッ、声が大きいよJr.、気づかれたらおしまいだよ。
[Jr.]わりぃ。
[シオン]!
[シオン]あれは──父さん!
[ジン]大佐───
[マーグリス]進捗の方はどうなっている?ハインライン卿が気にしておられる。
[スオウ]ほう、ハインライン卿が。
[スオウ]ここは、セルギウス卿の管轄だと思っていたが───?
[マーグリス]セルギウス卿はプロトオメガにしか興味がない。
[マーグリス]あの俗物には、過ぎたおもちゃだがな。
[スオウ]───なるほど。連邦の人間はいくらでも誤魔化す事はできるが、
[スオウ]オルムスの権力者は、いろいろ面倒でいかんな───
[マーグリス]連邦の第三次降下作戦も、まもなく開始される。
[マーグリス]それに合わせて、システムを起動させねばならん。
[ケビン]すでに、計画は最終段階です。
[ケビン]システムの方はセラーズ博士が担当しています。僕はアニマの器の調整を。
[マーグリス]ロスト.エルサレムの消失。その時、神の遺物は広大な宇宙に飛散してしまった。
[マーグリス]我々の目的は、それらを集め、本来の姿へと戻す事だ。
[マーグリス]かの地へと還る為。
[マーグリス]その為のゾハルとアニマの器だ。
[スオウ]これが、ゾハルか。
[マーグリス]そうだ、ゾハルとアニマの器とは元々一つだった。
[マーグリス]───いや、一つになる筈であったと言うべきか。
[マーグリス]連結実験に遅れが出ているようだが、
[マーグリス]ミズラヒの相手は、少々荷が重すぎたようだな。ウヅキ監察官。
[スオウ]ミズラヒ博士は関係ない。
[スオウ]使用できるトランスジェニックタイプがフェブロニア一体では、
[スオウ]あまり無理は出来ん。
[ケビン]所詮消耗品でしょう。また製造すればいいだけの事。
[マーグリス]なぜ、レアリエンにこだわる?
[マーグリス]実験ならば、あの患者どもを使えばすむ事だろう?
[ケビン]恐怖ですよ。
[マーグリス]恐怖?
[ケビン]レアリエンは人とは違い恐怖を感ずる事はない。
[ケビン]だから使えるのです。
[マーグリス]レアリエンでも恐怖を感じると聞いた事があるが?
[ケビン](存在消滅/し)の恐怖は万物に共通です。
[ケビン]だがレアリエン同士は無意識で固く結ばれている。
[ケビン]互いを拒絶し合う事は決してない。
[ケビン]たとえ(物質として/にくたいが)消滅したとしても、無意識下では常に繋がっている。
[ケビン]そこが人と違う点です。
[スオウ]ゾハルを制御する為には、レメゲトンを使い、
[スオウ]アニマの器からU.M.N.を介して、人の意志を伝えなければならない。
[スオウ]だがそれは、ウ.ドゥとの直接の接触をも意味する。
[スオウ]ウ.ドゥは人が根元的に持つ恐怖を顕在化する。
[スオウ]人は他者を拒絶する。自己の存在を拒絶された人は孤独に支配される。
[スオウ]孤独───それは、消滅より怖い事ではないだろうか。
[スオウ]人とは脆い存在なのだよ。
[スオウ]レメゲトンのオリジナルソースが手に入ればまた違うのだろうが───
[スオウ]断片的なデータを基にしたエミュレートだけでは、限界があるようだ。
[スオウ]その為に、トランスジェニックタイプのレアリエンを一体、
[スオウ]無駄にしてしまった。
[シオン]レメゲトン───!?
[ケビン]人のウ.ドゥに対する恐怖を抑える為の防壁───
[ケビン]レアリエンの意識にどうしても負担がかかってしまう。
[スオウ]とにかく、問題はこちらで解決する。心配はいらん。
[スオウ]ある企業も協力を申し出ている。非公式だがね。
[マーグリス]ヴェクターか───大丈夫なのか?
[スオウ]結果が全てだ。いつの世も企業とはそういうものだろう。
[スオウ]しかし、ヴェクターの関与があると知れば、
[スオウ]あのセルギウス卿が黙っていなかろう。
[マーグリス]知らなければ済む事だ。いずれ(主/あるじ)も変わる。
[スオウ]不穏当だな、司令。壁に耳ありというぞ。
[シオン]父さん───酷い───
[シオン]母さんも、私も、みんなを裏切っていたなんて───
[ジン]────
[ハカセ]ほほう いい設備じゃのぉ
[ハカセ]こりゃ 腕が鳴るわい
[Jr.]ここか───
[シオン]あのケージにアニマの器が収められてる筈よ
[ハカセ]ほいっほいっ ほいっほい ほいっと
[モモ]すごい──
[Jr.]見ろよ
[Jr.]こいつは───シメオンだ
[シオン]───ディナやゼブルンの名前もある
[KOS‐MOS]アニマの器が格納されているケージは
[KOS‐MOS]シメオン ディナ ゼブルンルベン レビ イサカル
[KOS‐MOS]ガド ヨセフ ダン ナフタリ ユダの11器
[KOS‐MOS]内 E.S.として稼動可能状態にあるものは3器です
[KOS‐MOS]アシェルのケージは空の状態で放置されています
[シオン]ちょっと待ってよ どういう事
[シオン]ヴェクターで開発された機体が何でここにあるの
[ジン]先ほどのマーグリスの言葉通り
[ジン]ここの兵器管理をしているハイアムズ社のハインラインと
[ジン]ヴェクターのヴィルヘルム
[ジン]両者の間で アニマの器に関する
[ジン]何かしらの取引きがなされていたのかもしれませんね
[ジン]武器商人達が裏で繋がっているなんて
[ジン]ありふれていてゴシップ記事にもなりはしないでしょう
[Jr.]面子とか利益とかそんなものに意味がなくなるほど
[Jr.]重要なモノってことか
[ハカセ]この
[ハカセ]何をごちゃごちゃ言っとる
[ハカセ]各自 E.S.の準備
[ハカセ]それぞれのカーゴの前に転送させるんじゃ
[ハカセ]スコットクン
[ハカセ]アニマの器を取り出してくれ
[スコット]はい ハカセ
[Jr.]おい、アシェルはどうなるんだよ?ケージは空っぽなんだぜ!?
[ハカセ]わかっとるわい!
[ハカセ]あわよくば、他の器で代用しようかとも思ったが、どうやら、そうもいかんようじゃ。
[Jr.]まさか、アシェルは使えないのかよ!?
[ハカセ]ったく、びーびー口うるさい奴じゃのぉ。
[スコットクン]アシェルには、ちゃんと別のリアクターを用意してありますよ。
[ハカセ]もとはエルデ用に開発してたものじゃからな性能はピカイチじゃぞぉ!
[Jr.]ピカイチじゃぞぉ───ってそんな変なモノ使って大丈夫なのかよ!?
[Jr.]ケイオス──なんとか言ってやってくれよぉ。
[ケイオス]───まぁ、ハカセを信じるしかないんじゃない。
[ケイオス]他に選択肢はないんだしね。
[ハカセ]ひょひょひょひょ。
[Jr.]なんか、すっげー不安になってきた───
[スコットクン]うへへへへへ。
[ハカセ]よし これで 文句はないじゃろう
[ハカセ]すぐにでも 戦闘可能じゃ
[Jr.]へぇー
[Jr.]さすがに 腕は確かだな
[Jr.]何だよ
[Jr.]見つかったのか
[ハカセ]そりゃそうじゃ
[ハカセ]組み立ての為にここのメインフレームを使用してるんじゃ
[ハカセ]見つかって当然じゃろう
[スコット]無断で作業してまーすって
[スコット]言ってるようなモノですからねぇ
[Jr.]ケイオス───
[ケイオス]取り合えず早く逃げた方がいいかな
[Jr.]何だよ、これ?まさか、また止まっちまうんじゃねぇだろうな!?
[ケイオス]違う。これは、アニマの器が僕達の意識と共鳴しているんだ。
[Jr.]俺達の意識と共鳴だって?
[ジン]なるほど。
[ジン]我々の意識とアニマの器が同調を始めているという事ですか。
[Jr.](テスタメント/バージル)の言っていた“乗せられてる”って、まさかこの事──!?
[シオン]でも一体何の為に?この現象が、何者かの意志だとでもいうの?
[ジギー]分からんな。ただの酔狂で言った台詞とも思えないが。
[Jr.]────
[ケイオス]いまのところは、まだ大丈夫みたいだ──
[ケイオス]でも──このまま同調が進めばいずれアニマの器は──
[Jr.]どうしたケイオス?
[ケイオス]え?あ、うん。──E.S.の事なんだけど、
[ケイオス]これまでよりもパワーのコントロールがシビアになっているみたいなんだ。
[ケイオス]振り回されないように気をつけて。
[Jr.]ああ、分かった。
[ケイオス]ヴィルヘルム──君はこの力で何を成そうとしているんだ?
[U-TIC機関兵士]アニマの器が奪取されたらしいぞ?
[U-TIC機関兵士]バカな!一体どうやって!?
[ペレグリー]何を騒いでいる!?
[U-TIC機関兵士]はっ!何者かが施設に潜入、
[U-TIC機関兵士]アニマの器3器が奪取されたとの事です!
[ペレグリー]アニマの器を?連邦の兵か?
[U-TIC機関兵士]わかりません。ただ、敵は
[U-TIC機関兵士]形式不明のA.M.W.S.にアニマの器を搭載し、逃走中との事です。
[ペレグリー]A.M.W.S.にアニマの器を搭載した───?
[ペレグリー]まさか、こちらよりも先にE.S.を完成させているとでも言うの?
[U-TIC機関兵士]如何いたしましょう!?
[ペレグリー]恒星間戦略統合兵器の準備を!
[U-TIC機関兵士]えっ…!?
[ペレグリー]発進の準備をしろと言っている!何か問題があるか?
[U-TIC機関兵士]──“あれ”は、まだテスト段階です。
[U-TIC機関兵士]実戦で使用するのはあまりにもリスクが高すぎるかと───
[ペレグリー]構わん!どんな手段を用いてでも、そのA.M.W.S.を確保しろ!
[Jr.]よし ここから脱出出来る急げ
[シオン]──何
[KOS‐MOS]敵の通信が割り込んでいるようです
[KOS‐MOS]チャンネルを補正すれば盗聴が可能ですが
[シオン]お願い
[通信]──ハルを狙った不審者が──
[通信]被験者──護衛を──
[通信]猶予──ない接続実験の中止──ありえん
[通信]ナンバー21655アオイ.ウヅキが
[通信]病棟で準備中───
[シオン]アオイ.ウヅキ
[通信]被験者の移送──急がせろ
[シオン]母さん
[KOS‐MOS]シオン どこに行くつもりですか
[KOS‐MOS]現状において単独行動の危険性は───
[シオン]ごめん───母さんを助けないと
[KOS‐MOS]シオン
[ケイオス]Jr. あれ
[Jr.]シオン
[Jr.]おい どこに行くつもりだ
[ジン]シオン 危険です
[ジン]戻りなさい
[Jr.]くそ 追うぞ
[ケイオス]ダメだ Jr.
[Jr.]何
[ジン]敵の機動兵器か
[Jr.]邪魔すんじゃねぇ
[モモ]Jr.さん あれを
[Jr.]まだ動けるのかよ
[ジン]KOS‐MOS シオンの位置は
[KOS‐MOS]第13管理棟内を移動中です
[Jr.]連れ戻す
[Jr.]追手か
[Jr.]ちっゾロゾロとキリがねぇ
[ジン]Jr.君
[ジン]一旦 引くべきです
[Jr.]しかし それじゃシオンが
[ジン]大丈夫 あれも子供ではない
[ジン]自力で何とかするでしょう
[ジン]それよりもここにいては 我々が危ない
[ジギー]Jr. どうする
[ジギー]もう もたないぞ
[ジン]早く脱出を
[Jr.]───くそ
[Jr.]一旦 エルザに帰還するぞ
[シオン]この先にあるエレベーターから母さんの病室へいけたはずだわ。
[U-TIC機関兵士]敵が 搬入口を破って逃走したらしいぞ
[U-TIC機関兵士]A.M.W.S.隊で捜索させろ
[U-TIC機関兵士]すぐに マーグリス指令へ報告を
[シオン]確か ここから母さんの病棟に上がれるはず───
[赤の外套者]シオン───
[シオン]テ テスタメント───
[シオン]邪魔をしないで
[シオン]貴方と遊んでいる暇はないのよ
[赤の外套者]シオン───
[シオン]気安く私の名前を呼ばないで
[赤の外套者]僕の事を
[赤の外套者]忘れてしまったのかい
[赤の外套者]迎えに来たんだよ
[赤の外套者]シオン
[シオン]そ そんな────
[U-TIC機関兵士]そこで何をしている
[U-TIC機関兵士]居たぞ 侵入者だ
[U-TIC機関兵士]逃がすな 取り押さえろ
[シオン]いや やめて
[シオン]離して───
[シオン]先輩
[シオン]ケビン先輩
[シオン]やめて 触らないで
[シオン]いやぁあああ
[シオン]赤いテスタメント───
[シオン]あれは間違いなくケビン先輩だった。
[シオン]死んだはずのケビン先輩。───あれはただの幻なの?
[シオン]違う──バージル中尉も確かに存在していた。
[シオン]死んだはずの人間が、テスタメントとして甦る───
[シオン]ケビン先輩は、迎えに来たと言ってた。
[シオン]では、テスタメントは私達の敵ではないの───?
[マーグリス]奴か?アニマの器を奪い去った連中の仲間というのは。
[ペレグリー]えぇ。
[ペレグリー]先ほどから意味不明のうわ言をつぶやくだけで、
[ペレグリー]こちらの質問にはすべて黙秘を通しているわ。
[マーグリス]ペレグリー、気がついたか?
[マーグリス]あの目────奴とそっくりの目だ。
[ペレグリー]────
[マーグリス]我らに逆らい続ける、あの目はそういう者の目だ。
[マーグリス]ウヅキ監察官とケビン.ウィニコットを呼び出せ。
[マーグリス]あの二人も尋問に参加させろ。
[U-TIC機関兵士]はっ!
[ペレグリー]監察官を尋問に?どういうつもり?
[マーグリス]この女、少し前に二人に接触を図っていたらしい。
[マーグリス]その直後の、アニマの器を狙っての襲撃。
[マーグリス]実に見事な手並みだ、感銘さえおぼえる。
[ペレグリー]こちらの手の内を知られていると?
[マーグリス]なんにせよ、こやつの素性をはっきりさせなければ、
[マーグリス]今後の計画に支障が出る可能性がある。
[スオウ]ウィニコット!
[ケビン]ウヅキ監察官?
[ケビン]どうしたのです?話なら後にしてもらえませんか?
[スオウ]アスラ27式を使うとはどういう事だ!?アレはあくまで実験用として、
[スオウ]第一まだ不安定な状態なのだろ?
[スオウ]暴走すれば、制御ができなくなるぞ。
[ケビン]だからなんです?
[ケビン]戦闘で、予定通りの性能は出せる。それで十分でしょう。
[スオウ]ばかな!現状では、敵味方の区別をつける事ができないのだぞ?
[スオウ]無差別に破壊活動を行なう兵器を使用するつもりか!?
[ケビン]どの道、ネピリムの歌声が使用されれば、全ては解決します。
[ケビン]ゾハルの目覚めによってね。
[スオウ]レメゲトン翻訳の過程で生まれた、ネピリムの歌声を使うというのか?
[スオウ]考え直せ!今ならまだ、27式も歌声も止められる!
[ケビン]ゾハルを稼働させるには他に方法がないんです。
[ケビン]すでに、降下部隊が市街地まで来ているんですよ。
[ケビン]ここであのシステムを使わなければ、今までの苦労が水の泡になる。
[ケビン]貴方だって、その為に連邦を裏切ったのでしょう?
[スオウ]違う──私は───
[ケビン]何が違うのです?あなたは娘を救う為に、自分の妻さえ差し出したのだ。
[ケビン]いまさら、何をためらう事があるのです?
[スオウ]貴様に何がわかる!
[スオウ]アレは───仕方がなかったのだ。
[ケビン]そう、仕方がないんですよ。僕らの理想の実現の為にはね。
[ケビン]このミルチアの犠牲は避けられないものだ。
[スオウ]────
[U-TIC機関兵士]監察官!あ、ウィニコット博士もご一緒でしたか。
[スオウ]なんだ?
[U-TIC機関兵士]マーグリス司令から不審者の尋問に立ち会われるようにと───
[ケビン]尋問に?僕もか?
[U-TIC機関兵士]はい。詳細は知らされておりませんので、直接司令にお聞きください。
[スオウ]どういう事だ?
[ケビン]アニマの器を奪取した連中の仲間だと聞いています。
[ケビン]ただの賊ではないという事でしょう。
[シオン]マ──マーグリス!
[マーグリス]ほう、この私の事を知っているのか?
[マーグリス]やはり、ただのネズミではなさそうだな。
[シオン]!
[マーグリス]面白い女だ。
[マーグリス]なるほど、(間諜/かんちょう)の類ではないらしいな。考えている事が顔に出すぎだ。
[シオン]───何を聞いても無駄よ。
[マーグリス]下らぬ虚勢など、張る意味はないぞ。
[マーグリス]語らせる方法などいくらでもあるのだからな。
[マーグリス]だが、その前にこの二人の質問に答えてもらおうか。
[シオン]────
[スオウ]正直に答えてくれ。君はアニマの器の事をどこまで知っているのだ?
[シオン]───
[ケビン]黙秘しても無駄ですよ。
[スオウ]あまり手荒なマネはしたくはないのだ、答えてくれないか?
[シオン]平然と身内を犠牲にするような男に、何も話す事などないわ。
[スオウ]何を言っている───そのような事、君に関係はないだろう───
[スオウ]第一、私はそんなつもりで!
[シオン]では、どんなつもりだというの?アオイ.ウヅキはあなたの妻でしょう!?
[シオン]それをこんな連中にいい様にさせるなんて!
[スオウ]なんなのだ君は───!?
[ケビン]なかなか元気じゃないですか───
[ケビン]いいですか。あなた達がアニマの器を、
[ケビン]機動兵器のリアクターとして利用している事は、すでに確認済みだ。
[ケビン]U-TIC機関どころか、ヴェクターでさえ研究中の極秘事項なのですよ。
[ケビン]その技術、一体どこで手に入れたのです?
[シオン]やはりね、これでハッキリした。
[シオン]このゾハルの研究にはオルムスだけじゃない、ヴェクターも絡んでいるのね。
[マーグリス]───女。オルムスの名、どこで知った?
[マーグリス]その態度、あの男を思い出させる。不愉快だな。
[マーグリス]覚えておく事だ、好奇心は時に身を滅ぼす。
[マーグリス]これから貴様には、すべてを語ってもらう事になる。
[マーグリス]無論、殺しはしない。死ぬより辛い目に会う事になるがな。
[モモ]フェブロニアさん!どうしたんですか?
[フェブロニア]皆さんにお知らせしたい事が。時間がありません、はやく!
[アレン]─────
[ジン]──アレン君、いつまでそこに立っているつもりなんです?
[アレン]あ──あのどうして主任を助けに行かなかったんですか?
[アレン]すぐに引き返していれば、連れ戻す事ができたかもしれないのに。
[ジン]アレのワガママで、皆を危険な目にあわせるわけにはいかないでしょう。
[アレン]でも、だったら、今からでも助けに行けばいいじゃないですか?
[ジン]先の潜入で、ラビュリントスの警備も強化されているでしょう。
[ジン]下手に手を出しても、よけい立場が危うくなるだけです。
[アレン]それは、わかりますが、でも、
[アレン]そんな悠長な事を言っていては、主任が危険に───
[アレン]ジンさんは主任の事が心配じゃないんですか!?
[ジン]────
[アレン]あ、あの、すみません───言い過ぎました。
[ジン]アレン君───あれが心配なのは皆同じです。少し、落ち着きましょう。
[ジン]シオンは、先だってのグノーシス.テロが切っ掛けで、
[ジン]父───スオウ.ウヅキが連邦を裏切り、
[ジン]U-TIC機関へのレメゲトン提供の橋渡しとなっていた事を知ってしまった。
[ジン]父が、U-TIC機関に関与していた事実を、私が隠していた事もね───
[ジン]あれはね、信念なんてものじゃなく、
[ジン]半分は私や父親に対する当て擦りで行動しているんですよ。
[ジン]そんな(脆弱/ぜいじゃく)な土台の上に立った信念なんてものは、
[ジン]些細な(契機/きっかけ)によって崩壊する。
[ジン]だからこそ心配だ。あれの行く先に待っている真実───
[ジン]ここにはシオンが知ってはいけない“何か”があるような気がする───
[アレン]“何か”───って?
[ジン]それはまだ何とも───
[ジン]ただ最近、あれがよく倒れる事があるというのが気がかりでね。
[アレン]最近、主任が体調を崩しがちな事ですか?
[ジン]ただ体調を崩しているだけなら、ね。さして心配じゃない。
[アレン]というと───?
[ジン]あれの母親がね───同じ様な病状だったんですよ。
[アレン]主任──お母さんと同じ病気───?
[モモ]ジンさん!大変です!シオンさんが大変なんです!
[アレン]主任が!?
[ジン]どうしたのです?
[モモ]今、フェブロニアさんが来ていて、とにかくブリッジへ来てください!
[Jr.]で、どうしたってんだ?
[フェブロニア]貴方達のお仲間に危険が迫っています。
[フェブロニア]彼女は今、ラビュリントスに監禁されています。
[フェブロニア]マーグリス司令は、彼女から無理やりにでも情報を引き出そうと───
[ジン]大佐が───
[アレン]まさかもう、手遅れなんて事は───
[フェブロニア]それは大丈夫です。ある人が、彼女を助ける為に動いてくれています。
[フェブロニア]しかし、そう長くは誤魔化しきれないでしょう。
[Jr.]そうか───
[Jr.]だが、今の戦力でU-TIC機関とやりあうとなると、
[Jr.]こちらにもそれなりの損害が出る───
[ジン]そうでもありませんよ。
[Jr.]ジン?
[ジン]気がつきませんか?貴方やケイオス君にならわかるはずでしょう。
[ジン]これから何が起こるのか。
[Jr.]───そうか!
[ケイオス]この世界が歴史どおりに進んでいるとすれば、
[ケイオス]もうすぐ第三次降下作戦が開始されるはず。
[ケイオス]そうなれば、U-TIC機関は連邦の降下部隊と全面対決を行う事となる。
[ジン]そして我々は、その戦闘状況の一部始終を知っている。
[ジン]この状況を利用しない手はないでしょう?
[ケイオス]彼らの隙をついて、シオンを助け出そうって事だね。
[Jr.]おもしれぇ、やってやろうぜ!
[ジン]さぁ、行きましょう。
[アレン]え、僕もですか?
[ジン]シオンが心配なのでしょう?
[ジン]アレには、支えになる人物が必要なんです。あなたの力を貸してください。
[アレン]わかりました。お供いたします!
[ケイオス]Jr. あれを
[Jr.]ああ 解ってる
[Jr.]始まったんだ この星の悪夢が
[ジン]連邦の降下作戦が始まったようですね。少々時間をとりすぎましたか──
[ジン]仕方ありません。一旦、引くとしましょう。
[ケビン]────
[シオン]お花が──お花がぁみんな、死んじゃった───
[シオン]お花、死んじゃったよぉ。
[ケビン]だから言ったろう、こんな事に意味はないって。
[ケビン]こんなもので、誰もやさしくなんかなれないんだよ。
[シオン]そんな事ないもん。
[シオン]もっと、もっといっぱい咲けば。みんな気づいてくれる。
[ケビン]無駄だよ、そんな事してもまた荒らされるだけさ。
[シオン]そんな事ない!
[ケビン]ちょっと、どこに行く気だ!
[シオン]フェブからお花の種をもらってくる。
[ケビン]所詮 他者を導くことなんて出来はしないんだ
[ケビン]僕達の力には 限界がある──
[ケビン]それが出来るのは
[ケビン]神の力を持つ者だけだ───
[マーグリス]────関係者及び被験者は、既に退避シェルターに移送中だ。
[マーグリス]念の為、このブロックも閉鎖させる。お前達もすぐに退避しろ。
[スオウ]マーグリス司令。フェブロニアはどうした?
[セラーズ]彼女なら、外に出て行ったと聞いているぞ?
[スオウ]こんな時に、何を考えているのだ!?
[セラーズ]試作型のレアリエンなど放っておけばよかろう。
[セラーズ]必要なデータはすべて揃っている。
[セラーズ]しかし───思ったよりも連邦の展開が早いな。数も多い。
[セラーズ]防衛部隊はまだ上がっていないようだが───
[マーグリス]心配は無用だ。プロトオメガが迎撃にあがる手はずになっている。
[セラーズ]プロトオメガを?アレを使うのか?
[マーグリス]セルギウス教皇のご意思だ。
[マーグリス]それに今回からは27式も投入される。
[マーグリス]貴様達が計算した通りの性能ならば、
[マーグリス]連邦の降下兵など、数分と持たん。
[スオウ]おろかな───先走りおって。
[スオウ]27式はまだ未調整だぞ。考え直すべきだ!
[マーグリス]設計責任者であるウィニコットは、すでに使用可能だと言っている。
[マーグリス]予定通りの能力は維持出来るとな。
[スオウ]たしかに能力的には、これまでの戦闘用レアリエンの遙か上をいくだろう。
[スオウ]だが、あれはもうレアリエンとは呼べない。我々にとっても危険過ぎる。
[セラーズ]かまわんだろう。
[セラーズ]アレを使う事で、さらに正確なデータを得る事ができる。
[セラーズ]それに、すでにネピリムの歌声の準備も完了している。
[セラーズ]ゾハルが稼働すれば、連邦など物の数ではない。
[スオウ]貴様らは正気か!?レメゲトンの翻訳作業はミズラヒ博士が中止したのだ!
[スオウ]不完全なあの歌声を本気で使用するつもりなのか?
[スオウ]この星を滅ぼす事になるのだぞ!?
[マーグリス]何をいまさらためらう。すべては我らの理想の実現の為、
[マーグリス]この計画はその為のモノだ。
[スオウ]マーグリス───
[セラーズ]悪いが、これ以上あの狂人にすべてを任せておくわけにはいかん。
[セラーズ]私も好きにさせてもらうよ。
[スオウ]────
[ケイオス]かなり、慌しくなってきているようだね。
[Jr.]U.R.T.V.も降下してるんだ、ここもすぐに戦場になる。
[Jr.]あと数時間で、ラビュリントス内部にも、
[Jr.]連邦の部隊が入り込んでくるはずだ。
[Jr.]ぐずぐずしている暇はねぇ。早くシオンを助けに行くぞ!
[シオン]!?
[スオウ]大丈夫か?
[シオン]───あなたは。
[シオン]何をされても、私は何も喋らないわよ。
[スオウ]分かっている。すまないが、騒がないでくれ。
[シオン]────
[スオウ]連邦の降下作戦が開始された。ここにいたら、君は確実に殺されてしまうだろう。
[スオウ]脱出するなら今しかない。
[シオン]!?私を───逃がしてくれるの?
[スオウ]あぁ、そうだ。
[スオウ]君は、私を快く思っていないようだが、
[スオウ]私とて、好きでこんな事をしているわけではない。
[シオン]自分の妻を犠牲にする男の言葉なんて信じられないわ。
[スオウ]誰から聞いたのかわからんが、その情報は少々正確さに欠けるようだ。
[スオウ]───いや、確かに私は妻を、家族を犠牲にしているな。
[スオウ]だが、信じてほしい。私は家族を守りたかっただけだ。
[スオウ]この世界のすべてを敵にまわしたとしてもね。
[シオン]────どうして?
[シオン]こんな事をすれば、連邦だけじゃない、
[シオン]U-TIC機関からも裏切り者にされるわ?
[シオン]殺されるかもしれないのよ?
[スオウ]自業自得だよ。罪のない者が殺されるよりはマシだろう。
[スオウ]それより、君に頼みたい事がある。
[シオン]頼み?
[スオウ]私の娘を覚えているな。
[シオン]──シオン?
[スオウ]そうだ、娘は郊外の教会にいるらしい。
[スオウ]頼む、娘を助けにいってくれないか?
[シオン]そんな事、貴方が自分で───
[スオウ]できるなら、そうしている。
[スオウ]──君も見ただろう?私の妻は、上の病棟から動く事ができんのだ。
[スオウ]私が彼女を守ってやらねばならん。
[シオン]!
[スオウ]おかしな話だと思うかもしれないが、
[スオウ]君ならシオンを助けてくれると思えるのだ。
[スオウ]君が───妻に似ているからなのかも知れんな。
[シオン]わかりました──娘さんは私が助けます。
[スオウ]すまない。
[スオウ]少しじっとしていてくれ。今、拘束を解く。
[スオウ]さぁ、急ごう。ここも、すぐに戦場になる。
[スオウ]!?
[ペレグリー]ウヅキ監察官。あなた、何をしてるのかわかってるのかしら?
[スオウ]ペレグリー!
[ペレグリー]その女からは、まだ必要な情報を引き出してないのよ?
[スオウ]やめたまえ、もう十分だろう。
[スオウ]これ以上この娘からは、何も情報を得る事などできん。
[ペレグリー]それは、こちらが判断する事。それとも、また私達を裏切るつもりなのかしら?
[スオウ]また?私は何も───
[ペレグリー]とぼけるつもり?
[ペレグリー]貴方が、連邦の士官に情報をリークしているのはわかっているのよ。
[スオウ]───く
[シオン]情報をリーク?
[ペレグリー]計画が発動された今、貴方に価値はないわ。
[ペレグリー]その娘ともども処分してあげる。
[ジン]申し訳ないが、それはできない相談ですね。
[ペレグリー]!?ジン───ウヅキ?
[ペレグリー]なるほど、データを受け取っていたのは貴方だったのね。
[ペレグリ]親子ともども、コソ泥のような真似が上手いじゃない。
[ジン]ペレグリー。
[ジン]───貴方もその悪役ぶり、ずいぶんと板についているようですね。
[ペレグリー]落胆した?
[ペレグリー]そうよ、いつまでも貴方が知っている小娘ではないの。
[ペレグリー]───貴方も少し老けたんじゃない?
[ジン]貴方は、若いままだ。うらやましい限りですよ。
[ジン]できれば、このような場所で再会したくはありませんでしたが。
[ペレグリー]変わらないわね。いつだってそうだった。
[ペレグリー]貴方は、他人を認める事ができない人なのよ。
[ジン]貴方こそ、私の気持ちなど考えず、
[ジン]大佐の下へ下ったのではありませんか。
[ペレグリー]下った?いいえ、私は還ったのよ。本来在るべき場所へとね。
[ジン]大佐が、貴方の還るべき場所だと?
[ジン]何故です!?貴方は何故そこまで大佐の事を───
[ペレグリー]貴方は、私の都合など考えない。
[ペレグリー]貴方は自分の都合で、人を操ろうとするだけ。
[ペレグリー]貴方には、決して理解できない。すべては私の血の宿命よ。
[ペレグリー]心配しないで、もう悩む必要はないわ。
[ペレグリー]今ここで、引導を渡してあげる!
[スオウ]何が起きたのだ?
[シオン]心配ないわ。私の仲間が助けに来たみたい。
[スオウ]そうか、ならば安心だな。先ほどの事、よろしく頼む。
[シオン]ええ、かならず。
[ジン]シオン!
[シオン]兄さん──
[シオン]父さんが、父さんが──私を助けに来てくれたの──
[ジン]えぇ、わかっていますよ。
[シオン]父さん、母さんを助けるって言ってたわ。
[シオン]自分を犠牲にしても家族を守るって───
[ジン]そう、父さんは、最後までお前の事を心配していた。
[シオン]兄さん、教会に子供の私がいるの。あの子を助けないと。
[シオン]父さんとの約束を守らなきゃ───
[モモ]危ない Jr.さん
[Jr.]くそ
[Jr.]下に居る人間の事を考えて戦えよな
[ケイオス]ごめん───
[シオン]この歌───
[ケイオス]ネピリムの歌声
[Jr.]終焉への[葬送曲/レクイエム]
[Jr.]滅びの歌だ
[シオン]急ぎましょう
[シオン]もう時間がないわ
[フェブロニア]傷、だいじょうぶですか?
[バージル]ああ。───やけに外が騒がしいな。何かあったのか?
[フェブロニア]戦闘が起こっているようですね。
[バージル]戦闘?連邦の降下作戦か!
[バージル]───お前は戦わないのか?
[フェブロニア]私は、戦闘用ではありませんから。でも、必要とあれば───
[バージル]俺は、戦闘するレアリエンを何度となく見てきたし、
[バージル]レアリエンとはそういうものだと教えられた。
[バージル]奴らは子供でも(躊躇/ちゅうちょ)なく手にかけるとな。
[フェブロニア]レアリエンは指示されない限り、人も同族も殺しません。
[フェブロニア]それを命令するのはあなたがた人です。
[バージル]すべては人のなせる(業/わざ)──か
[バージル]お前は、どこか違うような気がするな───
[バージル]普通のレアリエンとは臭いが違うというか───
[フェブロニア]私、ハーフだから──
[バージル]ハーフ?
[フェブロニア]シオンちゃん──どうしたの
[シオン]フェブ───
[シオン]空が──人が───
[バージル]戦闘用レアリエン
[バージル]まずい 暴走してるぞ
[バージル]やめろ
[フェブロニア]シオンを連れて逃げて下さい
[バージル]よせ そいつらは正気じゃない
[フェブロニア]いいんです
[フェブロニア]私の事は構いません
[フェブロニア]早く
[バージル]止めろ
[バージル]無茶はよせ
[バージル]邪魔をするな
[バージル]そいつから離れろ
[フェブロニア]あ───
[フェブロニア]に──げ───
[バージル]フェブロニアー
[バージル]やめろ──
[バージル]やめろぉおおおおっ
[バージル]てめぇら──
[バージル]てめぇらはこんな事の為に──
[バージル]これじゃあ [人間/俺達]と同じじゃねぇかっ
[バージル]おい 走れるか
[バージル]走れるのか
[バージル]よぉし いいか
[バージル]お前はここから 一人で逃げるんだ
[バージル]だが 街には行くな
[バージル]このキーを使えば
[バージル]森の奥からラビュリントスに抜けられる
[バージル]家族の下に帰るんだ
[バージル]分かったな
[バージル]よし
[バージル]早く 行けぇっ
[シオン]バージル
[バージル]こっちに来るな
[バージル]すぐにここから離れろ
[シオン]フェ───ブ
[バージル]何をしている
[バージル]早く 逃げろ
[バージル]くそ──くそ!!バカやろう───
[シオン]しっかりして!
[シオン]フェブはあなたを生かす為に犠牲になったのよ!さあ、立って!
[バージル]うぅ、くそ──くそ!
[バージル]──シオン!
[シオン]え!?
[バージル]おい、たしかレアリエンは情報を共有できるんだろう?
[シオン]えぇ、個体の情報を共有する事が可能よ。
[バージル]シオンがヤバイ、早く助けなければ──
[シオン]シオンちゃん──を?
[バージル]あいつにラビュリントスへ通じる旧ゲートのカギを渡して逃がした。
[バージル]こいつらは、仲間にその情報を伝えてるはずだ!
[バージル]早く追いかけないと、あいつが危ない!
[シオン]わかったわ!掴まって!
[バージル]すまない───
[シオン]あの、どうしてシオンちゃんを助けようと思ったの?
[バージル]おかしな事か?俺は軍人だが人間だ、そういう心も持っている。
[バージル]共食いするようなレアリエンとは違う!
[シオン]────
[バージル]どうした?
[シオン]これを持っていて。
[バージル]───なんだこれは?
[シオン]これは、レアリエンの自爆用のコードよ。
[バージル]!お前、どうしてこんなものを───
[シオン]説明はできないけど、役に立つかもしれないでしょう。
[シオン]用心の為よ。
[バージル]───わかった。
[Jr.]ダメだ、表はすでに敵がいるぞ!
[バージル]くそ、奴らだ!
[ジギー]まずい、シオンこのままでは囲まれるぞ!
[ジン]シオンこちらへ、表の敵は少ない、突破しますよ!
[モモ]シオンさん、急いで!
[シオン]もう少しよ、がんばって!
[バージル]俺を置いていけ───この身体じゃあんたらの足手まといになる。
[シオン]弱気な事 言わないで
[シオン]らしくないわよそんなの
[バージル]へ らしくないか───
[バージル]確かにな
[シオン]ちょっと 何をするの
[シオン]扉を開けて
[バージル]───頼む
[バージル]あいつの事 守ってやってくれ
[シオン]バカなこと言わないで
[シオン]貴方も一緒に逃げるのよ
[バージル]そういや───アンタの名前
[バージル]まだ聞いてなかったなぁ───
[シオン]バージル
[シオン]バ──ジル───
[バージル]ククク、感動的だな。素晴らしい茶番だよ。
[シオン]バージル──!
[シオン]!
[バージル]いいザマだな、こうなったらモノと変わりない。
[バージル]いや、もともと単なる(道具/モノ)だったっけな。
[シオン]ひどい───フェブは、あなたを守ろうとして。
[バージル]勝手に守ろうとして、勝手に死んじまっただけだろう?
[バジル]俺に何の責任がある?
[シオン]バージル───
[バージル]だいたい、お前はどうなんだ?
[バージル]レアリエンの人権だなんだと口うるさいお前が、あのコードを俺に教えるとはなぁ。
[バージル]どういう風の吹き回しだ?
[シオン]私は───貴方を助けたいと思ったからだから──
[バージル]だから、レアリエンをなぶり殺しにした?
[シオン]やめて!違う──そうじゃない!
[バージル]何を恥じる?それこそが人の本質だ。
[バージル]人は、破壊衝動によって律せられている。
[バージル]破壊こそ他者への探索行為、自己の確認行為として機能する。
[バージル]そして、本能に抗えぬ自分を慰める為、贖罪を見いだそうとする。
[バージル]俺はその言葉通り存在しようとした───
[バージル]お前もその為に今まで生きてきたんだろう!?
[バージル]レアリエンを解体し、無機物に意識を夢想してきたお前だ。
[バージル]父親への憎しみ、母親が殺された事への怒り、惨めな自分を慰める行為。
[バージル]罪の意識から逃れたいだけで、したくもない事をしているだけ。
[バージル]偽善者──なんとお前に相応しくない言葉だろう。
[バージル]もっと自分に素直になれよ!
[シオン]あなたに私の何が解るっていうの!
[バージル]解るさ。俺とお前は同類だからな。
[バージル]お前を動かしているモノは一体何だ?
[シオン]────!
[バージル]そう、復讐さ。
[バージル]復讐でしか、俺もお前も己を律する事は出来ない。それが真実だ。
[バージル]理想なんてものはすぐに崩れ去る。
[バージル]希望なんてものはな、現実という(朝暘/ちょうよう)の前には夜露に等しい存在なのさ。
[バージル]この俺がそうだった。
[バージル]だが、知った。変わらないんだよ。
[バージル]意識の限界だ。全てが閉塞したこの世界の限界なんだ。
[バージル]そう、“俺達”にはそれが解った。
[シオン]やめて、聞きたくない!
[シオン]バージル、あなたは子供の私を守ってくれた───なのに──何故?
[シオン]どうしてこんな──心の傷をえぐり出すような事をするの──
[シオン](テスタメント/あなたたち)はどうして私の目の前に現れるの! どうしてそっとしておいてくれないの!
[バージル]おいおい、そうじゃないだろう?
[バージル]お前はこう思っているはずだ。俺が存在していてよかった。
[バージル]あいつが存在していて嬉しかったってな。
[シオン]────そんな、そんな事。
[バージル]こいよ、来ればお前にも見える筈だ。
[バージル]そして選択しろ!お前が本当に望むものを!
[バージル]逢ったんだろう、奴と。奴は、俺達と共に在る!
[シオン]────わからない彼はテスタメントだったのよ、
[シオン]簡単に受け入れられるわけないじゃない!
[バージル]お前の(意識/こころ)はそうは言ってないぜ?
[バージル]疼くんだろ、(情念/こころ)が。会いたいんだろうあの色男に?
[バージル]奴も、お前に会いたがってる。
[シオン]やめてよ!それ以上、何も言わないで!
[ジン]シオン!彼の話に耳をかしてはいけない!
[バージル]全く
[バージル]うるさい外野どもだなぁ
[バージル]少し黙っていてもらおうか
[フェブロニア]もう やめて
[フェブロニア]お願い──
[フェブロニア]これ以上 シオンを惑わせないで
[バージル]今さら のこのこ出て来やがって何のつもりだ
[シオン]フェブ──
[フェブロニア]ルイ なぜ自分自身を否定するの
[フェブロニア]それでは 何も変えられはしない
[フェブロニア]己が半身を失い尚[彷徨/さまよ]う人々と同じなのよ
[バージル]ふん お前だって似たようなものだろうが
[バージル]この半身を失ってなぁ
[フェブロニア]お願い 自分を受け入れて
[フェブロニア]貴方は 誰も憎んではいない
[フェブロニア]憎しみを持てない自分を否定したいだけ
[バージル]解ったような口をきくな
[フェブロニア]私には解る
[フェブロニア]貴方だって私達レアリエンを理解してくれたわ
[バージル]───その結果がこれだ
[バージル]確かに理解したぜ
[バージル]全てが無駄だったってな
[フェブロニア]ルイ───
[バージル]うるせぇんだよ
[バージル]俺がいつまでも[フェブ/てめぇ]の事を気にかけていると思ったのか
[バージル]貴様らレアリエンなんぞに未練はない
[フェブロニア]いいえ 気が付いている筈よ
[フェブロニア]貴方は再びこの場所に戻って来た
[フェブロニア]それこそが テスタメントとして存在し続けようとした理由だから
[フェブロニア]貴方が貴方であった証だから
[バージル]理由だと 証だと
[バージル]────ふざけるな
[バージル]俺は何一つ後悔しちゃいない
[バージル]俺は 俺自身を 世界を肯定したからこそここに“在る”んだ
[バージル]世界を否定しようとしている奴らに
[バージル]この意志を理解出来るものか
[フェブロニア]世界を否定なんかしていない
[フェブロニア]私達は 混沌より生まれる新たな秩序を信じたいだけ
[フェブロニア]私達の想いひとつで世界の色は未来は変わると信じたいだけ
[バージル]夢物語だ そんなもの
[バージル]儚い希望にすがっているだけだ
[フェブロニア]願い望めば どんなことでも叶う
[フェブロニア]私達の関係もそうだった
[フェブロニア]でしょう ルイ
[バージル]俺を残して死んじまった女が今さら何を
[フェブロニア]そう その事が貴方の意識をこの場所に繋ぎ止め
[フェブロニア]苦しめる結果となった
[フェブロニア]私は この呪縛から貴方を解放したいの
[バージル]もう 俺に関わるな
[バージル]お前は既に死んだ女だ
[フェブロニア]ルイ
[フェブロニア]肉体は滅んでも 私はここに居る
[フェブロニア]貴方と共に居るわ
[フェブロニア]もう 苦しむ必要はない
[バージル]俺はお前を救えなかったんだぞ───
[フェブロニア]いいえ 私は貴方に救ってもらったわ
[フェブロニア]想いを交わすことで 世界の色は変わるんだって教えてもらった
[フェブロニア]それだけで十分よ
[バージル]お前は俺を恨んではいないのか
[バージル]俺に関わらなければこんな事にはならなかった
[バージル]お前だって───
[バージル]そうだ 俺の望みは───
[バージル]フェブ───
[フェブロニア]行きましょう ルイ
[フェブロニア]彼女が導いてくれる人とレアリエンの未来へ───
[シオン]待って フェブ
[シオン]私はこれからどうしたらいいの
[フェブロニア]シオン 辛いかもしれないけれど
[フェブロニア]それは貴方が自分自身で決めなければならない事
[フェブロニア]大丈夫貴方は自分の信じるようにすればいいわ
[フェブロニア]自分を信じて 心を開くの
[フェブロニア]彼女は貴方の側に 居るのだから
[シオン]フェブ──
[シオン]行かないでよ フェブ───
[シオン]私には 何も分からないのよ───
[フェブロニア]ありがとう シオン
[シオン]フェブ───
[ジン]シオン───!
[シオン]兄さん──?
[ジン]立つんです、シオン。
[ジン]辛いでしょうが、今は子供のあなたを助けなければ───
[シオン]うん。
[シオン]きゃーーー!
[シオン]いやー!助けて───!
[シオン]シオンちゃん!
[ジギー]まずい、行くぞ!!
[シオン]大丈夫、もう大丈夫よ。
[シオン]うぐっぐし。
[シオン]まって、どこに行くの!?
[シオン]母さんが、病院に父さんと母さんがいるの。
[シオン]───お姉ちゃん、母さんを助けてぇ。
[シオン]うん、わかってる。一緒に助けに行きましょう。
[Jr.]おい、シオン!?
[シオン]この状況で、子供を一人にできないでしょう。
[シオン]それに、この子の気持ちを一番理解してるのは───
[シオン]この子は私が必ず守るわ。
[シオン]う、うぅ。
[アレン]主任!また?
[シオン]だ、大丈夫、大した事ないわ。
[シオン]早く、病室に───母さんを。
[シオン]あ、シオンちゃん!まって、一人で行ってはダメ!
[ヨアキム]これが、お前の望んだ結果か、セラーズ?
[セラーズ]老いぼれが、いまさら何の用だ?
[セラーズ]まさか、止めにきたのか?これを?
[ヨアキム]レメゲトンは──神の御言葉は、唱えてはならんのだ!
[ヨアキム]あれは、我々が考えていたモノとは違うのだ!
[セラーズ]だが、ゾハルは稼働させられる!
[ヨアキム]ゾハルの解析は完全ではない!
[ヨアキム]何の為にこの宇宙に存在しているのか、
[ヨアキム]それを突き止めなければ我々に未来はない!
[ヨアキム]現状で未完成のものを使えば、どうなるか分からぬお前でもあるまい?
[セラーズ]ハインラインはそれでもかまわんといっている。
[セラーズ]この星がどうなろうと、データが得られればいいだけの事だ。
[セラーズ]それとも、この俺を責めるのか?
[セラーズ]このシステムの生みの親であるお前が?
[ヨアキム]────
[セラーズ]もう止められはしない。すべては始まってしまったのだよ!
[スオウ]連邦の兵がこんな所にまで───
[スオウ]急がねばならんか───
[シオン]母さん いるの
[スオウ]シオン
[シオン]母さん
[スオウ]あれは アスラ27式
[スオウ]シオン
[シオン]父さん
[スオウ]早く 中に入れ
[シオン]何 どうしたの
[スオウ]いいから 早く
[シオン]父さん 何するの
[シオン]開けて 父さん
[スオウ]ジン
[スオウ]ジン
[スオウ]くそ 繋がらないのか──
[スオウ]ジン このメッセージを聞いたらすぐに戻って来てくれ
[スオウ]シオンを シオンを助けてやってくれ
[スオウ]頼む 時間がない
[スオウ]早く
[シオン]父さん──助けて 父さん
[シオン]怖いよぉ
[シオン]母さん──怖いよぉ
[シオン]父さん
[シオン]いや
[シオン]いやぁあああ
[ジギー]ここもすでに、襲われた後か───
[シオン]そんな────
[シオン]KOS-MOS、シオンちゃんの反応は!?
[KOS-MOS]病室内に生体反応を確認。シオンのものと断定します。
[KOS-MOS]他、形式不明のレアリエンのものと思われる反応が3つ。
[シオン]シオンちゃん!
[シオン]シオンちゃん
[シオン]シオ───
[シオン]このバケモノ
[シオン]母さんから離れろ
[シオン]父さん──
[シオン]母さん───
[シオン]どうして───
[シオン]ごめん──ごめんね───
[シオン]やっぱり止める事が出来なかった
[シオン]戻さなきゃ───
[シオン]戻さなきゃ───
[シオン]流れちゃうよ───
[Jr.]シオン──
[シオン]戻さなきゃ───
[シオン]母さんが──流れちゃう───
[シオン]戻して───
[シオン]誰か───戻してよぉ───
[Jr.]シオン
[シオン]いや──
[シオン]こんなのいやぁ
[シオン]いやぁああああああああ
[シオン]シオンちゃん
[シオン]何よ これ
[シオン]どうなってるの
[シオン]何で グノーシスが───
[Jr.]危ない シオン
[ジン]KOS‐MOS
[KOS‐MOS]ヒルベルトエフェクト展開
[シオン]そんな──
[シオン]ウソよ こんなの──
[アレン]主任
[ジン]シオン 気をしっかり持つんです
[ジン]流されてはいけない
[シオン]兄さん──
[シオン]どうなってるの
[シオン]ねぇ これは夢よね
[シオン]私が 私がグノーシスを呼び出してるのよ
[シオン]そんなの何かの間違いよ───ね
[シオン]こんな事ありえないわよ───
[シオン]ねぇ
[シオン]誰か教えてよ
[ジン]シオン
[ジン]落ち着くんだ
[シオン]嫌よ───こんなの
[シオン]ねぇ 誰か───ウソって言ってよ
[アレン]主任
[シオン]イヤよ───
[シオン]いや
[シオン]いやぁああああああ
[Jr.]一体どうなってやがる?15年前にはこんな事おきなかったぞ!?
[ジン]我々が見ているのは、過去の出来事ではない。
[ジン]これは──存在しなかった現実。
[ケイオス]───アベルの方舟。
[Jr.]1年前にミルチアに出現した奴か!?
[ジン]しかし、何故今またこの場所に!?
[ケイオス]───そうか、彼らはこの為にシオンを!
[ケイオス]この世界は過去の世界なんかじゃない。
[ケイオス]過去の人々の意識を“一時的に復元”して、
[ケイオス]シオンの“心の内に創られた(現在/いま)”なんだ。
[ケイオス]過去に達成できなかった事を、(現在/いま)のシオンを使って矯正するつもりなんだ。
[ケビン]そうだ全てはここから始まる予定だった
[ケビン]アベルの目覚めの為には彼女二人の力による共鳴が必要だった
[ケビン]過去にミルチアを襲ったグノーシス
[ケビン]あれは ウ.ドゥとリンクしたアルベドやミズラヒが呼び寄せたものではない
[ケビン]ウ.ドゥの求めに応じ
[ケビン]幼いシオンが単独で呼び寄せたものだったのだ
[シオン]───せ 先輩
[アレン]そんな──ケビンさん
[Jr.]おい、ケビンってあのKOS-MOS設計者の!?
[アレン]うん───でも、どうして───
[Jr.]あれが、シオンの恋人だった───
[モモ]でも、あれはテスタメント───
[シオン]せ、先輩──なの?
[シオン]本当にケビン先輩なのね───?
[ケビン]そう、僕だよシオンどうしたんだい?顔を忘れてしまったのかい?
[シオン]ううん───忘れてない。忘れた事なんかない。
[シオン]でも、どうして───
[ケビン]迎えに来たんだよシオン。
[シオン]────ねぇ──教えて。なぜ、今まで姿を隠していたの?
[シオン]どうして、テスタメントなんかに───
[ケビン]僕は力を必要としていた。この姿はその為のものだ───
[ケビン]でも、目に見える姿など関係ない。
[ケビン]僕は僕、何も変わってはいない。
[シオン]でも───この時代のケビン先輩は、
[シオン]ゾハルの研究の為に多くの人を、レアリエンを、
[シオン]私の母の命を───
[ケビン]仕方なかったんだ。辛い思いをさせてすまなかったシオン。
[ケビン]だが、解って欲しい。すべては君の為なんだ───
[シオン]私の為?これが?すべて私の為だというの?
[ケビン]すべては君の為僕はいつも君の事を考えていた。
[ケビン]僕と共に行こう、僕には君が必要なんだシオン。
[シオン]先輩───
[Jr.]何様のつもりだよ!?
[Jr.]人の傷口を、平気でかき回すようなマネしておいて、
[Jr.]これが、シオンの為だって言うのかよ!
[ケビン]部外者は黙っていてもらおう!
[Jr.]部外者だって!てめぇ!
[ケビン]わからないのか?お前達では、シオンを救う事はできない。
[ジン]どういう意味です?納得の行く説明をしていただけるのでしょうね。
[ケビン]ジン.ウヅキ───。貴方もすでに気づいているはずだ。
[ケビン]シオンの身に何が起きているのかを。
[ジン]────
[ケビン]そう、シオンは彼女の母親と同じ病に侵されている。
[シオン]!?
[ケビン]シオン、君には人と違う能力が備わっている。
[ケビン]だが、その力の影響により、いずれ、命を失う事になる。
[ケビン]最近の頭痛はその為のものだ。
[シオン]私が───母さんと同じ病気に?
[ジン]───そこまで知っているという事は、
[ジン]当然、貴方には原因も理解できているのでしょうね?
[ケビン]この施設に集められた被験者達は、
[ケビン]力の差はあれ、皆シオンと同じ能力を持っている。
[ケビン]被験者達はウ.ドゥとの対話が可能であり、
[ケビン]ウ.ドゥへその意思を伝達する事ができる。
[Jr.]ウ.ドゥと対話するだって!?
[ケビン]そうだ───だが、それは自らの死を意味する事だ。
[ケビン]被験者達は、ウ.ドゥとの直接接触の負荷にその意識が耐えきれず、
[ケビン]やがて、昏睡状態となり死んでいく───
[アレン]だったら、そんな実験をやめさせればいいじゃないですか!?
[アレン]ウ.ドゥとの接触を断てば、病気の進行も食い止められるでしょう!
[アレン]何も無理してウ.ドゥと会話する事なんかない!
[Jr.]できねぇよ──
[アレン]!?
[Jr.]ウ.ドゥとの接触を断つ事なんてできねぇんだ。
[Jr.]奴は、別の領域から俺達を監視している。奴から逃れる事はできない。
[ジン]ウ.ドゥが望んで接触をしている?
[ジン]あの波動に意識が存在するというのですか?
[ケビン]解っただろうシオン。僕は、君を救う為にテスタメントとなった。
[ケビン]この姿──そしてこの力がなければ君を助ける事ができない。
[ケビン]君を助ける事ができるのは(テスタメント/ボク)とT‐elosだけなんだ。
[アレン]T‐elos?T‐elosが主任を救うだって?
[アレン]ちょっと待ってくださいよ!じゃ、KOS-MOSは一体何なんですか!?
[アレン]KOS-MOSも、貴方が設計したものでしょう!
[ケビン]KOS-MOSは、T‐elosの為のデータ収集と、
[ケビン]シオン自身のモニタリングの為に作られた単なる試作品にすぎん。
[アレン]KOS-MOSが試作品!?だから処分しようとしたんですか!?
[ケビン]そうだ、KOS-MOSはシオンに近すぎたのだ。
[ケビン]KOS-MOSの力の源泉はゾハルを“扉”とし、ウ.ドゥからもたらされる。
[ケビン]KOS-MOSが能力を使う度に、
[ケビン]ウ.ドゥと感応する資質を持ったシオンは、その命を削られていく。
[ケビン]シオンとKOS-MOSの意識が近くなればなるほどシオンに負担が掛るのだ。
[アレン]KOS‐MOSが主任の命を縮める────
[シオン]KOS‐MOSが 私を──殺すの
[ケビン]シオン 僕と一緒に来て欲しい
[ケビン]このままでは 君の未来はない
[ケビン]君を救う為にはこの方法しかないんだ
[ケビン]頼むシオン
[ケビン]僕は 君を失いたくはないんだ
[シオン]先輩───私───
[ケビン]分かってる
[ケビン]もう いいんだ
[ケビン]僕はここに居る
[シオン]私 嬉しいの───
[シオン]ケビン先輩に会えて良かったって思ってる
[シオン]ずっと ずっと会いたかったから──
[シオン]もう 二度と会えないと思っていた───
[シオン]だから 私──わたし───
[ケビン]約束するよ
[ケビン]もう 君の側を離れない
[ケビン]ずっと一緒だ───
[シオン]先輩───
[シオン]兄さん
[シオン]何よ 何をするのよ
[ジン]シオン 申し訳ないが
[ジン]お前をこのまま行かせる訳にはいきません
[ジン]確かに彼の言ってる事は実にもっともらしく聞こえる
[ジン]だが だからこそ
[ジン]私はお前の事を信じる事が出来ない
[ケビン]ジン?ウヅキ───
[シオン]ふざけないでよ
[シオン]やめてよ兄さん
[シオン]ケビン先輩なのよ
[シオン]心から愛した大切な人なのよ
[ジン]お前こそ 解らないのですか
[ジン]彼は既に人ではない
[シオン]違う 違うわよ
[シオン]先輩は───ケビン先輩は
[シオン]昔のまま───あの時のままの優しいケビン先輩よ
[Jr.]くそ
[シオン]どうして──どうしてみんな邪魔をするの
[ジン]シオン 下がりなさい
[ジン]KOS‐MOS
[ジン]シオンを連れて脱出を
[ケビン]KOS‐MOS やめるんだ
[ケビン]シオンと共に 私の下に来なさい
[アレン]KOS‐MOS
[アレン]ダメだ 行くんじゃない
[ケビン]KOS‐MOS
[KOS‐MOS]ケビン?ウィニコット
[KOS‐MOS]申し訳ありませんが私は貴方の命令を聞くように
[KOS‐MOS]プログラムされてはおりません
[ケビン]創造主に逆らうつもりか
[KOS‐MOS]貴方が創造したKOS‐MOSは
[KOS‐MOS]既にT‐elosによって破壊されました
[KOS‐MOS]私の設計者はシオン?ウヅキ及びアレン?リッジリーの両名です
[ケビン]馬鹿な
[KOS‐MOS]シオン 脱出します
[シオン]やめなさい KOS‐MOS
[シオン]私は 行きたくない
[KOS‐MOS]申し訳ありません
[KOS‐MOS]危険回避の為の処置です
[T‐elos]KOS‐MOS
[T‐elos]逃げるのか
[ケビン]やめろ T‐elos
[ケビン]無理に追う必要は無い
[ケビン]機会はいくらでもある
[ケビン]戻れ
[ハマー]船長 KOS‐MOSッス
[ハマー]バイクでこっちに向かって来てるッスよ
[マシューズ]二人だけか
[マシューズ]船を止めろ 収容するぞ
[KOS‐MOS]船長 このまま着艦します
[KOS‐MOS]姿勢維持をお願いします
[マシューズ]おい 無茶すんなよ
[マシューズ]デリケートな船なんだぞ
[マシューズ]傷つけたら ただじゃ済まさねぇぞ
[KOS‐MOS]善処致します
[ハマー]KOS‐MOSとシオンの回収 OKッスよ
[KOS‐MOS]船長 ラビュリントス内にまだ他の者が残っております
[マシューズ]分かってるよ
[マシューズ]トニー 行けるな
[トニー]あったぼうよぉ
[トニー]このトニー様の腕を信じろって
[セラーズ]何をしているミズラヒ!
[セラーズ]バカな事をするな!
[セラーズ]そんな事をすれば、ゾハルが暴走するかもしれんぞ!
[ヨアキム]分かっている。だが、この現象を止めるには、もはやこうするしか手はない。
[ヨアキム]この星を滅ぼしてでも、世界を救わねばならん。
[セラーズ]気でも狂ったか!止めろ!
[ヨアキム]お前達こそ、自分のしている事を理解しているのか?
[ヨアキム]アレは、人の手によって御せる代物ではないのだ。
[セラーズ]娘の再生の失敗でやけになっているのか?
[ヨアキム]失敗?確かに娘をよみがえらせる事はできなかった。
[ヨアキム]だが、新たな可能性がうまれた。
[ヨアキム]その為に、私は───
[セラーズ]やめろミズラヒ!
[セラーズ]!
[ヨアキム]よく見ておくのだな。これが私の責任の取り方だ!
[セラーズ]ミズラヒ!
[ヨアキム]モモ───
[ヨアキム]私はお前の為に
[ヨアキム]この星と この星の人々を犠牲にする事を選ぶ
[ヨアキム]この 私の罪は決して消える事はないだろう
[ヨアキム]だが いずれお前が生まれる時に
[ヨアキム]この世界が平和であれば それでいい
[ヨアキム]その為になら喜んでこの身を地獄の業火に投げ入れよう
[ヨアキム]ハレルヤ
[ヨアキム]海はその中にある死人を[出/いだ]し
[ヨアキム]死も[陰府/よみ]もその中にある死人を[出/いだ]したれば
[ヨアキム][各自/おのおの]その[行為/おこなひ]に[随/したが]ひて[審/さば]かれたり
[ヨアキム]かくて死も[陰府/よみ]も火の池に投げ入れられたり
[ヨアキム]此の火の池は第二の死なり
[ヨアキム]全て[生命/いのち]の[書/ふみ]に記されぬ者は
[ヨアキム]皆火の池に投げ入れられたり
[ヨアキム]サクラ 私はお前の居る場所には行けないだろう
[ヨアキム]こんな私を お前は責めるのだろうな
[ヨアキム]誰だ
[ヨアキム]ユリ──すまなかった
[ヨアキム]モモを
[ヨアキム]私達の子供を頼む───
[ジギー]まずいぞ
[ジギー]このままでは この施設ごと倒壊する
[ジン]ええ 分かっています
[ジン]脱出しましょう
[Jr.]おい シオンが
[アレン]シオンちゃん
[モモ]Jr.さん アレを
[Jr.]エルザか
[ジン]行きましょう
[ヴィルヘルム]一つ目の覚醒は、うまくいったようだね。
[ケビン]はい。残るアニマの器も滞りなく。
[ヴィルヘルム]アニマの器──この宇宙を散逸から防ぐ為、
[ヴィルヘルム]太古、聖女によって別たれた、神の半身──
[ヴィルヘルム]このまま、宇宙のフェイルセイフを発動させる訳にはいかない。
[ヴィルヘルム]神の半身は、“我々の手で”制御しなくてはならないんだ。
[ケビン]心得ております。全てを、はじまりの(刻/とき)へ──
[マシューズ]みんな、無事か!?
[ジギー]ああ 問題はないようだ。
[マシューズ]ハマー、船体の損傷状況と、現座標チェック急げ。
[ハマー]了解ッス。──!?
[ハマ]あ、あ──
[Jr.]あれは──!
[ケイオス]アベルの方舟!
[マシューズ]どういうこった!?さっき、過去のミルチアと一緒に消えた筈じゃ!?
[マシューズ]おいハマー!ここは一体どこだ!?
[ハマー]座標でたッス!
[ハマー]ポイント座標KZ255、Y724。超球面体と接触したポイントのままッス。
[マシューズ]あんだって──?
[モモ]U.M.N.コラムパルス受信。時間軸確認。
[モモ]現在です!
[Jr.]──て事は。やはり俺達は過去の世界には──
[ケイオス]ああ。僕らはずっと“この場所”で、
[ケイオス]シオンの意識下の世界に閉じこめられていたんだ。
[ケイオス]“あれ”を目覚めさせる為に。
[アレン]二人の力の共鳴って、過去に達成できなかった事って、
[アレン]まさかこういう事──?
[モモ]大変です!アベルの方舟から、強力な波動が!
[マシューズ]何!?
[モモ]衝撃波、来ます!
[アレン]そ そんな──
[アレン]わ 惑星が──
[モモ]アベルの方舟が転移します
[マシューズ]消えた──のか?
[ハマー]船長!デュランダルから通信が!
[マシューズ]あんだって?
[マシューズ]いるのか? デュランダルが!?
[ハマー]あい。すぐ近くのようッス。
[ハマー]こっちを捉えたから、収容するって。
[Jr.]向こうは無事なんだな!?
[ハマー]大丈夫みたいッス。
[Jr.]わかった。とにかく合流しよう。
[百式]エルザの船影捉えました。合流ポイントまで、400。
[ユリ]先に現れたアンノウンの方は?
[百式]現在、U.M.N.内を移動中です。
[百式]移動経路上のコラムから、特殊な波動が発せられており、
[百式]惑星の消失もこの波動によるものと推測されます!
[メリィ]特殊な波動やて?
[百式]はい。グノーシスが人と接触した際に発する、個体振動パターンに酷似した。
[ユリ]共時性連鎖現象──だとでもいうの?
[百式]消失現象は拡大の一途をたどっています。
[百式]このままでは72時間以内に、連邦の約半数が消失してしまいます!
[ユリ]なんてこと──
[メリィ]移動中の対象は何か判ったんか?
[百式]いえ。ただこの波形は、
[百式]1年前に旧ミルチアに出現した、巨大グノーシスのモノと一致します。
[シェリィ]あの巨大グノーシス?
[メリィ]アベルの方舟っちゅうやつか──
[ユリ]ミズラヒのY資料の記述によれば、
[ユリ]アベルの方舟は、(永遠の連環/ツァラトゥストラ)を求めるとあるわ。
[メリィ]ちゅうことは、行き先はひとつやな。
[シェリィ]惑星、ミクタム──
[ディミトリ]連邦所属の惑星が次々と消滅しているそうだ。Y資料の記述通りだな。
[ディミトリ]レメゲトンの解放によってアベルは目覚めた。
[ディミトリ]アベル目覚めし時、その揺りかごたる方舟現る──
[ディミトリ]其は、(永遠の連環/ツァラトゥストラ)を求むるモノなり──
[ディミトリ]現にゾハルは活性化している。それを感じるのだ。
[セラーズ]アベルか──何者だ?あの子供は。
[ディミトリ]旧知の友──といったところか。私がU.M.N.の航宙士をしていた頃からの。
[ディミトリ]もっとも向こうは、常に隔離施設の中。直接会ったのは数度だったがな。
[セラーズ]何百年も昔の話だぞ。その時からあのままなのか?
[ディミトリ]驚く程の事はあるまい。
[ディミトリ]この私だって、そういう意味では何百年も存在しているのだから。
[セラーズ]ミズラヒのY資料には、オメガの制御の為に不可欠な存在であると記されている。
[セラズ]確かにゾハルの波動の仲立ちとはなっているが、
[セラーズ]資料の記述自体は何千年も前に存在した物を、ミズラヒが復元したものだ。
[セラーズ]だとすれば、あの少年は“その時代から”存在していた事になる。
[セラーズ]常識で理解できる(範疇/はんちゅう)を超えとるよ。
[ディミトリ]今の私にとってはなくてはならないパートナーさ。
[ディミトリ]神に対抗する唯一の兵器、オメガの操作デバイスなのだからな。
[ディミトリ]その動力炉たるゾハルを得、そして神の世界へ昇る為の最後の遺物、
[ディミトリ]ツァラトゥストラをこの手にすれば──
[セラーズ]貴様、本気で“神”と戦うつもりなのか?
[ディミトリ]さぁてな。ククククク──
[ペレグリー]どういう事なの?マーグリス。
[ペレグリー]総帥から艦隊を動かす指示は下りていないのよ?
[マーグリス]オメガは奴らの手中にある。そしてこれだ──
[ペレグリー]これは──現在U.M.N.を移動中のアンノウン。
[マーグリス]アベルの方舟だ。
[ペレグリー]太古の昔、救世主が磔刑に処せられたときに現れたという、アベルの方舟。
[マーグリス]これの向かっている先がどこか判るか?
[ペレグリー]──まさか、ミクタム?
[ペレグリー]1年前の旧ミルチアにも現れたこれが、何故今ミクタムに。
[マーグリス]そこまではわからん。
[マーグリス]だが連邦のザルヴァートル共もミクタムへと向かっている。これをただの偶然と思うか?
[マーグリス]あの星には“何か”がある。
[ペレグリー]それで艦隊を?
[ペレグリー]あの星は私達の発祥の地というだけではないというの?
[マーグリス]ツァラトゥストラ──聖女の胎。
[マーグリス]ロスト.エルサレムへの回帰には欠かせないとされるものだ。
[マーグリス]ミクタム──
[マーグリス]いや、アブラクサスは、代々聖女を信奉していた者達が漂着した星だ。
[マーグリス]連邦から入手したY資料にも、それと思わせる記述があった。
[ペレグリー]ミクタムにはツァラトゥストラが眠っていると、
[ペレグリー]そうあなたは考えているのね?
[マーグリス]ああ。もしそうだとすれば、このまま奴らにあの地を踏ませるわけにはいかん。
[ペレグリー]総帥の命に、背く事になったとしても?
[マーグリス]────
[ウ.ドゥ]シオン──
[ウ.ドゥ]お前の心に、満ちているのは不安か?悲しみか?
[ウ.ドゥ]それとも喜びなのか?
[シオン]解らない。私にも自分が解らない。
[ウ.ドゥ]お前は恐れているのか?
[ウ.ドゥ]何を恐れる?何故恐れる?
[ウ.ドゥ]世界から孤立するのが怖いのか?
[ウ.ドゥ]他人から拒絶されるのが怖いのか?
[ウ.ドゥ]やがてくる死が怖いのか?
[シオン]怖い───私は怖い───
[シオン]独りになるのが怖い───
[ウ.ドゥ]孤独とは何だ?死よりも恐れるものなのか?
[ウ.ドゥ]何故お前は、そのような表情をする?
[シオン]解らない───何もかも解らない──
[シオン]助けて──お願い、誰か助けて───
[シオン]私が誰なのか───教えて───
[シオン]先輩───私、どうしたらいいの───
[シオン]このまま、何もできずにこの世界から消えてしまうの?
[シオン]ねぇ───先輩───
[シオン]兄さん───?
[シオン]兄さん、どうして──?なぜ、行かせてくれなかったの?
[シオン]どうして邪魔をしたの?
[ジン]────
[シオン]あのままケビン先輩の下に行けば、楽になれたかもしれないのに。
[ジン]───本当にそう思いますか?
[シオン]兄さんに何が分かるの!?あの人の事、何も知らないくせに!
[シオン]このままだと、私は死ぬのよ。母さんみたく──
[シオン]兄さんはそれでも構わないというの!?
[ジン]バカな事を言うもんじゃない──
[ジン]妹が死ぬのを喜ぶ兄などいるわけがないでしょう。
[シオン]だったら、だったら邪魔をしないでよ。ケビン先輩の下に行かせてよ!
[シオン]私の人生からこれ以上何も奪わないで!
[ジン]シオン───
[シオン]出て行って!
[KOS-MOS]このまま部屋を出て行っても、よろしいのですか?
[ジン]まったく、情けない──
[KOS-MOS]現在、シオンのメンタルバランスは極端に不安定な状態にあり、
[KOS-MOS]あなたに対する態度も、それが原因と考えられます。
[KOS-MOS]しばらく時間を置く事で、元の精神状態に戻ると思われます。
[ジン]そうではありませんよ。
[ジン]あんなシオンを目の前にして、何もしてやれない自分が情けないのですよ。
[ジン]これでは、他人と変わらない!
[ジン]兄として、結局私は何もしてあげる事ができない───
[ジン]KOS-MOSあのテスタメントの言葉を信じるわけではないが、
[ジン]本来ならば、あなたをシオンのそばに置くべきではないのかもしれない。
[ジン]だが、今のシオンを助けてやれるのはあなただけでしょう。
[ジン]お願いします。あれの力になってあげてください。
[シオン]KOS-MOS────
[KOS-MOS]大丈夫ですか、シオン?
[シオン]───ねぇ、教えて。ケビン先輩の言ってた事は本当なの?
[シオン]KOS-MOS、貴方は私を殺すの?
[KOS-MOS]現在の私のシステムとシオンの生命活動に関連性はありません。
[KOS-MOS]しかし、システムの設計者であるケビン.ウィニコットの言葉である以上、
[KOS-MOS]無視できる情報とも言い切れません。
[KOS-MOS]現状、私はあなたの命を奪うような行動を取れないように制限されております。
[シオン]なぜ、貴方は私を守ろうとするの?
[KOS-MOS]ヴェクターの社員を守る事はプログラムの優先事項として登録されています。
[シオン]そうじゃない、貴方は私を守ろうとしている。
[シオン]そんな優先事項をプログラムした覚えはないわ。
[KOS-MOS]シオン、貴方を守る事は最優先事項として登録されています。
[シオン]それをプログラムしたのはケビン先輩?
[KOS-MOS]わかりません。
[KOS-MOS]制御プログラムとは独立した、
[KOS-MOS]コアモジュールからの直接割り込みによるものと判断できます。
[シオン]コア?あなたの心が私を守ろうとしているというの?
[KOS-MOS]心ですか?それは私にも判断できません。
[シオン]分からないわよね───そうよ、私だってどうしたらいいのか、分からないの。
[シオン]別に、兄さんに辛く当たりたいわけじゃない。
[シオン]みんなを信用していないわけじゃないの。
[シオン]あなたも、兄さんもエルザのみんなだって、
[シオン]心配してくれているのはすごく分かる。
[シオン]でも、本心では私を厄介者だと思っていないの?
[シオン]この宇宙を崩壊に導いた元凶。その私が死ねば、グノーシスが消えるかもしれないわ。
[シオン]みんな、それを願っているのではないの?
[シオン]怖いの、すごく不安なのよ。誰も私を救ってはくれない。
[シオン]みんなに見捨てられたら───私───
[シオン]あなたは、ずっと側にいてくれる?
[KOS-MOS]────
[シオン]独りになるのはいやだよ、 KOS-MOS───
[シオン]助けて───ケビン
[Jr.]そうか──俺達が、あそこにいた間にそんな事が──
[百式]3時間ほど前、ミクタム周辺宙域では、
[百式]連邦とオルムスの(先鋒/せんぽう)隊が戦闘を開始したとの情報が入ってきています。
[ジン]惑星消失現象の方はどうなっています?
[百式]現在、星団連邦に所属している惑星の約半数が消滅した模様です。
[ジギー]要するに、あのアベルの方舟が、この現象を引き起こしている──
[ジギー]そういう事なんだな。
[Jr.]その方舟の方は?
[百式]アベルの方舟は通常空間に現出。
[百式]やはり、ミクタムを目指しているようです。
[百式]メルカバもアベルの方舟を追っているようです。
[百式]接触予測時刻は(1730/ひとななさんまる)。
[Jr.]あと2時間ないってか。クソ親父め──
[Jr.]聞いての通りだ、あの親父の真意、どう見る?ヘルマーのおっさん。
[ヘルマー]ディミトリの考えてる事だ、我々にはそう簡単に悟らせはしないだろう。
[ヘルマ]だが、奴がこの事態をどの程度予測していたかは分からぬが、
[ヘルマー]メルカバを持ち出し、オメガを手に入れたとすると狙いは一つだな。
[Jr.]方舟に取り込まれたオリジナルゾハルか!
[ユリ]その為のオメガとアベル。──そして、ミクタムに眠る“モノ”
[モモ]やはり目的はオルムスの根絶なんでしょうか?
[Jr.]そうじゃねぇだろうな。
[Jr.]親父にとっちゃ、オルムスなんて既に眼中にはないだろう。
[Jr.]親父は──ウ.ドゥに対して、異常なまでの恐怖心を持っていた。
[Jr.]親父の行動全ては、それに根ざしているようにも思える。
[Jr.]Y資料を手にした親父は見つけたんだ。その“恐怖を克服する手段”を。
[ヘルマー]ふむ───代表理事との連絡はまだ取れないのか?
[シェリィ]はい、方舟出現時からフィフス.エルサレムとの通信が途絶えたままです。
[カナン]惑星消滅はすでに全宇宙へと拡大している。連絡がつかんのも無理はない。
[ヘルマー]そうだな───このミルチアとて、(惨憺/さんたん)たる状態だよ。
[ヘルマー]住民を順次脱出艇に乗せて打ち上げてはいるが果たして間に合うか──
[ヘルマー]いや、それ以前に消滅現象が惑星ではなく、
[ヘルマー]我々そのものに作用するのだとしたら──
[カナン]まったく、人類とは度し難い生物だな。
[カナン]こんな時にこそ、力をあわせなければならぬものを───
[ヘルマー]残念だが君の言うとおりだ、カナン。
[ヘルマー]ミルチア艦隊はそのほとんどを脱出艇として使用している。
[ヘルマー]君達へまわす戦力はもう残されておらん。
[ヘルマー]こちらからの通信も、これが最後となるだろう。
[Jr.]おっさん───
[ヘルマー]今後は、独自の判断で行動してくれ。悔いの残らぬようにな。
[ヘルマー]最後の最後まで、君達の力に頼る事になって、申し訳ないと思っている。
[ヘルマー]ミズラヒ委員、後の事を頼む────
[百式]ミルチアからの通信、途絶しました。
[Jr.]───くそ!!
[シオン]ここまできて、何をぐずぐずしているの。
[Jr.]シオン───大丈夫なのか?
[シオン]───ええ、大丈夫よ。調子はいいわ。
[アレン]でも、あれだけの事があったんですから、無茶をしない方が───
[シオン]やっぱり、私がいない方がいい?
[シオン]また、グノーシスを呼び出すかもしれないし、
[シオン]敵に寝返るとも分からない邪魔者だから?
[Jr.]そうじゃねぇよ。みんな、お前の体を心配して───
[シオン]私の体の事は、私が一番よく分かってる。余計な心配はしないでいいわ。
[ジン]シオン───
[シオン]ねぇ、今はこんな事で言い争いをしている場合じゃないでしょう?
[シオン]ディミトリ.ユーリエフが、個人的な目的の為に
[シオン]ゾハルを利用しようとしているのなら、
[シオン]それがなんなのか突き止めないと。
[シオン]結果が判ってからじゃ遅いのよ!
[Jr.]あぁ、わかってる!シオン──今は少しでも多くの戦力がほしい。
[Jr.]大丈夫なんだな?
[シオン]何度も言わせないで、私は大丈夫よ。
[Jr.]よしっ!ゲートアウトと同時に、エルザ発進!
[Jr.]連邦、オルムス双方の戦闘の間隙を突いて、E.S.でメルカバ内部に突入。
[Jr.]中枢にいると思われる、オメガとディミトリ.ユーリエフを確保する。
[Jr.]デュランダルは後方に待機!
[Jr.]各自、出撃準備だ!
[カナン]急げルベド。既にメルカバはアベルの方舟と接触したぞ。
[Jr.]わかっている。
[カナン]いいか、メルカバは、単体での迎撃能力はそう高くはない。
[カナン]なぁに、護衛艦隊を突破できれば、突入は簡単だ。
[Jr.]よく言うぜ、これは連邦法を無視した独自の作戦だぞ。
[Jr.]オルムスはもちろん、連邦艦隊、グノーシス、
[Jr.]周りにいるすべてが敵じゃねえかよ。
[カナン]お前達の腕なら、特に問題はないだろう?
[カナン]期待しているぞ。
[Jr.]けっ、スカシやがって。
[Jr.]トニー、リクエストがかかってるぞ!
[トニー]任せておけって、オンステージの始まりだぜ!
[セラーズ]誰を探しているのかね?
[セラーズ]残念だが、君達の望む結果はここで得る事はできないと思うがね。
[ジン]セラーズ博士?
[ジン]なるほど、ユーリエフの裏には貴方がいたのですね。
[ジン]だが、オルムスに取り入ったはずの貴方が、何故再びユーリエフの下に?
[セラーズ]私にとっては、器など何でもかまわんのだよ。
[セラズ]望むものを手に入れる為、あらゆる手段を講じる。
[セラーズ]私はそうやって、自らの道を開いてきたのだ。
[Jr.]その結果、どれだけ罪のない人間を巻き込んだと思っているんだ!
[セラーズ]U.R.T.V.、貴様とて同じだろう。
[セラーズ]お前は自分が生き残る為に、どれだけの仲間を犠牲にしてきたのだ?
[Jr.]俺は───
[セラーズ]そう、大事をなす為には、些細な犠牲など無視して当然だ。
[セラーズ]だが、それでもあの男の場所までたどり着く事はできなかったのだ。
[セラーズ]私の作ったものは、すべてできの悪い模造品でしかなかった───
[セラーズ]なぜだ!私と、奴とどの程度の差があったというのだ!?
[セラーズ]いや、これこそが、奴との差だったのかもしれん。
[セラーズ]所詮私も、奴という人間のできの悪い模造品だったのだ。
[Jr.]悪いが、老人のたわ言に付き合ってる暇はねぇんだよ。親父はどこにいる!
[セラーズ]さてな、私が教えるまでもなく、貴様になら分かるのではないか?U.R.T.V.よ。
[Jr.]─────どういう事だ?
[セラーズ]貴様らは仲間同士、繋がっているのだろう?
[セラーズ]ならば、貴様の仲間が今どこにいるのか探ればいい。
[Jr.]───ガイナン?そんな───まさか!?
[セラーズ]まさか──か。やはり知らなかったと見えるな。669本来の目的を。
[Jr.]本来の目的だって?
[セラーズ]U.R.T.V.668、669。
[セラーズ]その本来の目的は、666レッドドラゴン──つまり貴様の抹消だよ。
[Jr.]!!
[セラーズ]そして最終型番669には、更に別の目的があった。
[セラーズ]それは──ディミトリ.ユーリエフの再生。
[Jr.]なんだと!
[セラーズ]U.M.N.(黎明/れいめい)期に行われた生体による転移実験。
[セラーズ]それを達成する為、多くのデザイナーズチャイルドが創られた。
[セラーズ]ディミトリ.ユーリエフもその一人。
[セラーズ]あの男はな、“最初のザルヴァートル”なんだよ。
[Jr.]親父が──、最初のザルヴァートル!?
[セラーズ]転移実験の生還者は奴一人。
[セラーズ]あの男はU.M.N.に存在するウ.ドゥと接触し、その恐怖に支配された。
[セラーズ]だが代わりに、ある特殊能力も身につけたのだ。
[セラーズ]──そう、U.R.T.V.個々が持つ特殊能力と同じもの。
[セラーズ]あの男の能力は──精神の転移。
[Jr.]────!!
[セラーズ]その憑代として誕生したのが、669、ニグレドなんだよ。
[Jr.]くっ──!
[セラーズ]ウ.ドゥの恐怖を克服する為、ディミトリは精神の転移を繰り返し、生き続けてきた。
[セラーズ]そしてY資料を手にした奴は、それを克服する手段を見いだした。
[セラーズ]幸運にして、その達成に必要なモノの一つは、
[セラーズ]貴様らが後生大事に管理してくれていた、というわけさ。
[Jr.]ゾハルエミュレーター!
[セラーズ]ミズラヒとて、無用の長物としてエミュレーターを作った訳ではない。
[セラーズ]あれには、それぞれに対応するアニマの器の波形データが記録されている。
[セラーズ]いわば、オリジナル稼動の為のイグニッションレーザーのようなものさ。
[Jr.]ちくしょう。狙いはデュランダルか!
[セラーズ]くくく、今さらそれを知ったところですべては手遅れだがな。
[Jr.]狂ってやがる───
[セラーズ]狂ってる?
[セラーズ]当然だろう、狂気なくして世界を変える事などできんのだからな!
[セラーズ]はははははははは!
[Jr.]てめぇ───
[セラーズ]そう身構えるな貴様らと戦うつもりなど毛頭ない。
[セラーズ]私の役はただの時間稼ぎだよ。それぐらいしか、できんのだからな。
[セラーズ]さぁ、さっさと出て行きたまえ。それとも、このままアベルの方舟と同化するかね?
[セラーズ]ははははははははは!
[Jr.]くっ───
[ジギー]無駄だ、Jr.。奴にはもう言葉は通じん。脱出するぞ。
[百式]メルカバより エルザの脱出を確認
[百式]前方の空間へのゲートアウトを探知
[百式]───オメガです
[メリィ]なんやて
[デュランダル船員]全てのブロックが占領されるのも時間の問題だぞ
[デュランダル船員]───やだ 撃たないで
[ニグレド]ブリッジの占拠が最優先だ
[ニグレド]指揮を執っている人間を拘束しろ
[ニグレド]それ以外の乗員は全て処分して構わん
[百式]第32 34ブロックに敵侵入
[メリィ]モタモタしとるんやないで
[メリィ]すぐに各ブロックの隔壁を閉じるんや
[百式]ダメです 全て強制解除されています
[百式]敵部隊 既に居住エリアまで到達
[メリィ]シェリィ どないなっとんのや
[メリィ]非常事態宣言中のゲートの解除は
[メリィ]指揮官クラスの人間にしか出来ない筈やで
[メリィ]ハッキングか
[シェリィ]いいえ システムの異常ではないわ
[メリィ]だったら何でや
[メリィ]解除出来るのは ウチらとちび様
[メリィ]あとはガイナン様だけやで
[シェリィ]そう ピエタは侵入者をガイナン様と認識してるのよ
[メリィ]そんなアホな
[メリィ]ガイナン様
[シェリィ]どうして───ここに
[ニグレド]二人共 留守の間ご苦労だったな
[ニグレド]ゆっくり休んでくれ
[シェリィ]メリィ
[ユリ]ガイナン?クーカイ───
[ユリ]貴方 何を
[ディミトリ]まさか 君がここに居るとはな
[ディミトリ]ユリ?ミズラヒ───
[ユリ]ディミトリ?ユーリエフ
[ディミトリ]御機嫌よう。いや、初めましてと言った方がよいのかな?
[ディミトリ]ゴドウィンのお嬢様方。
[メリィ]!
[シェリィ]その体───ガイナン様の!?
[ディミトリ]この体、なかなか便利がよくてね。慣れると実に使い勝手がいい。
[ディミトリ]見ての通り。この船はすでに、我々ザルヴァートルが占拠した。
[メリィ]なんのつもりや!この船はミルチア政府の管轄なんやで!
[シェリィ]そうです、このような事、連邦***の違反にあたり
[シェリィ]ミルチア政府により相応の報復が行われますよ。
[ディミトリ]ふ、好きにするがいい。ヘルマーにそんな力など残ってはおらんだろうがな。
[メリィ]く───
[ディミトリ]ははははは
[ディミトリ]さて、お嬢さん方も苦しませずに終わらせたいのだが、
[ディミトリ]悪いがそうもいかん。
[ディミトリ]いろいろ聞かせてもらいたい事があるのでな。
[シェリィ]聞きたい事?!
[ディミトリ]アルビテルコード。
[メリィ]!!
[ディミトリ]やはりお嬢さん方の中にあるのだね。
[ディミトリ]ヘルマーもなかなかいい趣味をしている。
[ディミトリ]こんなかわいらしいお嬢さんの中に
[ディミトリ]解除コードを忍ばせていたとはな。
[シェリィ]!!
[メリィ]ウチらは何も知らんよ
[メリィ]知ってたところで喋る気もないけどな
[ディミトリ]無駄な事をするものではない
[ディミトリ]第一 この体を傷つければ
[ディミトリ]お前達の大事な主人を失う事になるのだぞ
[カナン]───U.R.T.V.か
[シトリン]初めまして
[シトリン]私はナンバー668
[シトリン]シトリンと呼んで下さい
[ディミトリ]言っておくが
[ディミトリ]彼女の能力はニグレドとほぼ同程度のものだ
[ディミトリ]───どういう意味だか分かるな
[ディミトリ]その美しい顔が苦痛に歪むのを見て喜ぶような趣味はない
[ディミトリ]素直に喋ってくれるよう
[ディミトリ]願っているよ
[Jr.]デュランダルの様子は?
[マシューズ]良くないですな。
[マシューズ]おそらく、オメガと連邦艦隊により占拠されてますぜ。
[ハマー]まったくの無防備状態。ろくに反撃もできなかったようッス。
[ジギー]いきなり味方から攻撃されたのだ、当然の結果だ。
[Jr.]デュランダルからのコールはないのか?
[ハマー]呼びかけてるんッスがまったく返答なしッスね。
[ハマー]すでにブリッジも押さえられていると見た方がいいッスよ。
[Jr.]あの親父が、意味もなく動くわけがねぇ。
[Jr.]おそらく狙いは、ゾハルエミュレーターだ。
[Jr.]船長、出てきたところすまねぇが船首をデュランダルに向けてくれ。
[マシューズ]ちょっと、ちび旦那、あそこにはオメガがいるんですぜ!?
[Jr.]知ってるよ。だが、いくしかねぇ。
[Jr.]可愛い部下達を見殺しになんてできねぇだろが!
[Jr.]くそ
[Jr.]ドック側に回り込め
[Jr.]ガイナンには悪いが
[Jr.]外壁をひっぺがしてでも中に入り込んでやる
[モモ]ひどい───
[モモ]そんな───みんな みんなが───
[モモ]Jr.さん、みんなが───!
[ジギー]Jr.───
[Jr.]───悪りぃ、黙っていてくれ。
[Jr.]こんなのを見せつけられて冷静でいられるほど俺はクールじゃねぇんだ。
[ジギー]分かっている。今回ばかりは俺も感情的にならざるを得ないな。
[ジギー]ここまでやられて、黙っているわけにはいかん。
[Jr.]あぁ、まずは生存者の救出だ。行くぞ!
[メリィ]ちび様!
[Jr.]メリィ!無事だったか───お前、まさか!?
[メリィ]なんでもあらへんよ ただのかすり傷やさかい、心配せんといてな。
[モモ]ママ!
[ユリ]モモ───よくきてくれました。
[モモ]ママも無事でよかった───
[ユリ]モモ、私の事よりも、メリィさんの傷を。
[モモ]あ、はい!傷口を見せてください。
[Jr.]船の状況はどうなってる?何人生き残っているんだ?
[メリィ]見てきて分かるとおもうけど、ろくな抵抗もできんまま、壊滅や───
[Jr.]シェリィは?まさか、シェリィも───
[ユリ]いえ、シェリィさんは無事よおそらく、別の場所に監禁されてると思うわ。
[Jr.]怖い思いさせてすまなかったな。
[メリィ]そんな、信じとったから。ちび様が助けに来てくれるって。
[Jr.]いい子だ。ドックにエルザがいる。そこまで脱出できるか?
[メリィ]もちろん、うちらの事は心配せんでええ。
[メリィ]ちび様、シェリィの事頼んだで。
[Jr.]ああ、まかせておけ。ユリさん、メリィの事お願いします。
[ユリ]えぇ。あなた達も、気をつけて。
[シェリィ]ちび様!
[Jr.]シェリィ!大丈夫か?
[シェリィ]私は、大丈夫です。しかし、アルビテルコードが敵の手に───
[カナン]すまない。俺がついていながら───
[Jr.]気にするな、お前達に落ち度はねぇよ。
[シェリィ]おそらくユーリエフは、エミュレーターの封印解除の為、
[シェリィ]隔離格納庫に向かっているはずです。
[シェリィ]襲撃の際、ゲートのIDを書き換えはしましたが、破られるのも時間の問題かと──
[Jr.]安心しろ、俺が必ずとめてやる。
[Jr.]ドックにエルザがいる。
[Jr.]カナン、こいつを連れて、そこまで脱出してくれ。
[カナン]わかった。
[シェリィ]ちび様も無茶をなさらないように───
[Jr.]あぁ、大丈夫だ。
[シトリン]こんにちはナンバー666。久しぶりね。
[Jr.]!
[ケイオス]Jr.?
[Jr.]シ、シトリン───
[シトリン]会えてうれしいわ、(U.R.T.V./なかま)はもう貴方と私の二人だけだもの。
[ケイオス]仲間?そうか、彼女もU.R.T.V.──
[Jr.]ああ、女性体ナンバー668シトリン。
[Jr.]俺達と同じ変異体だ。
[Jr.]お前がここを守っているという事は親父はこの中にいるんだな!
[シトリン]だとしたらどうなの?お父様の邪魔はさせないわよ。
[Jr.]バカやろうこの状況がわからねぇのかよ!
[Jr.]奴を止めなければ、この宇宙がやばいんだ!
[シトリン]解ってないのは貴方の方よ、ルベド。
[シトリン]私達の任務を忘れたの?ウ.ドゥの消去が私達の任務なはずよ。
[シトリン]その為になら、この宇宙がどうなろうと関係ないわ。
[Jr.]親父の奴、まさか、エミュレーターとオリジナルの力を使って、
[Jr.]ウ.ドゥを消滅させるつもりなのか!
[シトリン]兵器としての意義を忘れ、任務を放棄した欠陥品に何も語る資格などないわ!
[Jr.]やめろシトリン!俺は、もう仲間を失いたくはない!
[シトリン]仲間?
[シトリン]私は認めない、私達を捨てた貴方など、仲間ではない!
[Jr.]シトリン───
[シトリン]───言い忘れていたけど、私にはもう一つの任務があるのよ。
[シトリン]ニグレドと同じ、レッドドラゴンを抹殺する為の力。
[シトリン]あなたに、この私が倒せるのかしら?
[シトリン]私達は何故生まれたの?
[シトリン]私達の存在理由は一体なんなの?
[シトリン]教えてよ───ルベド。
[シトリン]あなたは、仲間を裏切り、弟を殺し、なぜ生きているの───?
[Jr.]約束を守る為だ。
[シトリン]約束?
[Jr.]あぁ、ある人との約束を守る為。それが俺の存在理由だ。
[シトリン]いまだに、あの女の影に躍らされているのね。
[シトリン]哀れな男───
[Jr.]────シトリン。
[ジギー]この警報は何だ
[Jr.]奴め エミュレーターを作動させやがった
[ディミトリ]シトリンが処分されたか───
[ディミトリ]どうした
[ディミトリ]なるほど 悲しんでいるのだな
[ディミトリ]お前はあの個体と通じていたのだったな
[ディミトリ]だが そんなものは幻想に過ぎん
[ディミトリ]貴様らは兵器お前は私のパーツの一つに過ぎんのだ
[ディミトリ]下らぬ感情など不必要だ
[ディミトリ]見ろ この荘厳なる絵を
[ディミトリ]始まるのだ 復讐が
[ディミトリ]奴の恐怖に打ち勝つ時が
[Jr.]おい くそ親父
[Jr.]今すぐエミュレーターを止めろ
[ディミトリ]ルベドか
[ディミトリ]久し振りの再会だな 会いたかったぞ
[Jr.]てめぇ
[Jr.]そいつに手を出せば
[Jr.]やばい事になることぐらい分かってるんだろうが
[Jr.]さっさとガイナンの体を返して
[Jr.]ここから消えやがれ
[ディミトリ]全く お前には失望させられたよ
[ディミトリ]15年前未完成品どもの任務失敗のおかげで
[ディミトリ]私が自ら手を下さねばならなくなったのだからな
[ディミトリ]こうなったのも 全てお前の責任なのだ
[ディミトリ]ルベド
[Jr.]俺の責任だと───
[Jr.]やはりエミュレーターとオメガを使って
[Jr.][ウ?ドゥ/や つ]を消去するつもりか
[ディミトリ]ウ?ドゥを消滅させることなど出来ん
[ディミトリ]あれは“そういうもの”ではないのだ
[ディミトリ]やはりお前は 私がここに来た意味を理解出来んようだな
[Jr.]じゃあ 何の為にここに来た
[ディミトリ]古の時代 人は神と共にあった
[ディミトリ]人は神を敬い 慕い そして恐れた
[ディミトリ]死することない神を恐れた人は
[ディミトリ]それに対抗する為 神の力を欲し
[ディミトリ]やがて人は自身が神となる術を見い出した
[ディミトリ]我々はそれら古の遺物を復活させたのだ
[ディミトリ]メルカバもこのゾハルエミュレーターもその一つ
[ディミトリ]ミズラヒのY資料はな太古の人間が遺した
[ディミトリ]神となる術が記録されたデータなのだ
[ディミトリ]ウ?ドゥは言わばこの次元の神だ
[ディミトリ]神を消滅させることが叶わんのであれば
[ディミトリ]自らが神の眷属となればいい
[ディミトリ]息子よ
[ディミトリ]お別れだ 偉大なる父の姿
[ディミトリ]その目に焼き付けておけ
[Jr.]くそ
[Jr.]モモ エミュレーターを止められないか
[モモ]ダメですコントロールが破壊されてて
[モモ]止められない
[ジン]船が動き出した
[モモ]デュランダルが旋回を開始
[モモ]そのまま 方舟に向かっています
[Jr.]やばい
[Jr.]親父の奴 エミュレーターごとあの方舟の中に突っ込むつもりだ
[ジギー]どうする
[Jr.]ドックを強制パージして脱出する
[Jr.]ちょっと強引だが仕方ねぇ
[Jr.]行くぞ
[マシューズ]ダメだ、ちび旦那リモートコントロールがきかねぇ。
[マシューズ]無線でのパージは無理だ。
[Jr.]だったら、手動でやるまでだ!
[マシューズ]無茶いわんでください、
[マシューズ]この状況で、生身の人間じゃパージの爆発に巻き込まれてただじゃ済みませんぜ!
[ハマー]ちょっとまった、外に誰かいるッスよ!
[マシューズ]ケイオスとKOS-MOSじゃねぇか!?
[シオン]あの子、何をする気なの───?
[ケイオス]KOS‐MOS 今だ
[マシューズ]トニー 今だ
[マシューズ]一気に突破しろ
[トニー]アイ アイサー
[ディミトリ]さぁ 始めよう
[ディミトリ]私の全てを取り戻すのだ
[Jr.]何だあれは───
[モモ]内部からとてつもない重力偏差を確認。
[KOS-MOS]あれは、グノーシスではありません。
[KOS-MOS]ゾハルを取り込んだオメガの、余剰エネルギーによるものだと思われます。
[シオン]なんてエネルギーなの──
[ジギー]たしかに、これだけ膨大なエネルギーならば、
[ジギー]神の眷属となるという話、あながちハッタリとも思えん。
[Jr.]親父の奴、本気で神になるつもりなのかよ!
[ケビン]オメガの覚醒が確認されました。
[ヴィルヘルム]そのようだね。
[ケビン]ユーリエフは上位領域へのシフトの為、
[ケビン]恐らくツァラトゥストラを取り込もうとするでしょう。
[ケビン]システムへの影響が考えられますが──
[ヴィルヘルム]ツァラトゥストラの機能は“それ”だけではない。
[ヴィルヘルム]Y資料には“僕の施した策”は記されてはいないからね。
[ヴィルヘルム]彼の得た情報は、断片的な物なんだ。問題はないだろう。
[ヴィルヘルム]それより、見守ってあげようじゃないか。
[ヴィルヘルム]彼は実に興味深い人間だ。
[ヴィルヘルム]恐怖を克服する為に、その恐怖を取り込もうというんだ。
[ヴィルヘルム]その結果、自らがその恐怖となろうともだ。
[ケビン]回収にはアルベドを?
[ヴィルヘルム]行きたがっているのだろう?元より彼が望んでいた事だ。
[ヴィルヘルム]アニマの器の覚醒にもちょうどいいしね。
[ヴィルヘルム]彼女の目覚めにはもう少し時間がかかる。
[ヴィルヘルム]それまでの余興、十分に楽しもうじゃないか。
[ハインライン]マーグリスか───どうした?
[マーグリス]猊下。すでに我艦隊は連邦艦隊の7割を撃滅いたしました。
[マーグリス]後は猊下の命令を待つのみ。方舟に対して攻撃命令を。
[ハインライン]マーグリス、私はそんな命令を下した覚えはないが?
[マーグリス]オリジナルゾハルを目の前にして、何ゆえ、傍観するのですか?
[マーグリス]ディミトリ.ユーリエフはすでに行動を起こしております。
[マーグリス]みすみす奴らの手に渡すようなマネだけは───
[ハインライン]立場をわきまえろ、マーグリス。
[ハインライン]お前は、大人しく、私の命令に従っていればいい。
[マーグリス]しかし───
[ハインライン]下がれ、マーグリス!
[ハインライン]方舟に手出しをする事は許さない。艦隊を下がらせ、ミクタムから去れ!
[マーグリス]────猊下。
[ペレグリー]どういう事なの?ゾハルを諦めろというのかしら?
[マーグリス]わからん。
[マーグリス]だが、あのレンヌ.ル.シャトーの出現から、
[マーグリス]妙な違和感を感じないか?
[マーグリス]我々の目的とは違う、
[マーグリス]何か別の意思によってつき動かされているかのような───
[ペレグリー]まさか、総帥がオルムスを裏切るとでもいうの?
[ペレグリー]その暴言、
[ペレグリー]たとえ異端審問官長であるあなたでも、許されるものではないわよ。
[マーグリス]承知している。だが──
[マシューズ]このままじゃやばいってのは解りますけどね、
[マシューズ]どうやってあんな馬鹿でかいモンに近づけって言うんですかい?
[トニー]第一、敵のいる位置もわかんねぇんだろ?どこに突っ込めっていうんだよ!
[カナン]口だけでなく、少しは頭の中も使ったらどうだ?
[ドクトゥス]ほんと、頭数ばかりそろってても使えない奴らばっかりね。
[シオン]ドクトゥス!?なんで?
[Jr.]誰だ?
[ジン]スキエンティアのエージェントですよ。実力はかなりのものです。
[ドクトゥス]あら、ジン?相変わらず、何を考えてるか分からない顔ね。
[ジン]あなたも、変わりないようで。
[ジン]こんな所に顔を出すなんて、珍しいじゃないですか?
[カナン]俺が、連絡した。
[Jr.]カナン!?
[Jr.]なんだって、こんな奴に連絡を───?
[ドクトゥス]あら、そんなに冷たくしてもいいの?後で後悔するわよ。
[カナン]彼女が、現状を打開する策を持っている。だから、呼んだのだ。
[Jr.]なんだよ、その策って?
[ドクトゥス]あのデカブツの中に入る方法よ。
[Jr.]!
[ドクトゥス]やり方は簡単。あの中にゲートアウトすればいいのよ。
[ドクトゥス]そうすれば、誰にも邪魔されずに中に潜入できるわ。
[Jr.]同一シグナル内でショートジャンプしろって言うのか?
[Jr.]こんな短距離で出来るのかよ!?
[ドクトゥス]ええ。私達ならね。
[Jr.]たとえ出来たとしても、親父がそこにいるかどうかなんて分からねぇぞ?
[ドクトゥス]でも、あなたならそれが分かるんでしょ、U.R.T.V.?
[ドクトゥス]ガイナンがどこにいるのか、貴方になら。
[Jr.]!!
[ドクトゥス]私からのプレゼントは、そこのレアリエンに渡しておいたわ。
[ドクトゥス]後は貴方達の度胸しだいよ。期待してるわ。
[カナン]モモ、これを解析してくれ。
[モモ]これは──スキエンティアが使用しているゲートアウト用の干渉プログラムです!
[モモ]これなら、シグナルを無視して強制的にダイブアウトする事が可能です!
[Jr.]へっ、味なマネしてくれるじゃねぇか。これで、親父の所に行けって事かよ。
[Jr.]よし、ハマー。ゲートジャンプ用プログラムを差し替えろ。
[Jr.]時間がないぞ、すぐに準備しろよ!
[ケイオス]カナン。すぐに出撃だよ。
[ケイオス]どうしたんだい?何か、調べモノでも───
[カナン]ケイオス───お前は、自分が何の為に存在しているか、考えた事があるか?
[ケイオス]自己の存在理由か───難しい質問だね。
[ケイオス]大切な人の為に、皆の為に、そう思いたいけど、
[ケイオス]必ずしも僕の存在が人を幸せにしているとは限らない。
[カナン]そうだ、存在する事でただそれだけで、他者を傷つける事もある。
[カナン]ケイオス──お前は知っているのだろう?
[カナン]俺が、そういう存在だという事を。
[ケイオス]────思い出したのかい?
[カナン]あぁ、プログラム.カナンの情報でな。
[カナン]ここまでデータが揃っていれば、いやでも思い出す。
[ケイオス]コードネーム“ラクティス”。
[カナン]そうだ、それが俺の存在理由。
[ケイオス]だけど、君はそれを望んでいたわけではない。
[ケイオス]君の意思とは無関係の話だろ?
[ケイオス]君に責任はないよ。
[カナン]たとえ無意識下で行われている事であっても、それは、すべて俺の責任だ。
[カナン]俺はその為に作られた。
[カナン]プログラム.カナンを否定する事は、
[カナン]俺自身の存在も否定する事になる───
[ケイオス]自分を偽り、生き続ける事もできる。
[ケイオス]でも、それは君の望む答えではないのだろう?
[カナン]そう、自らを否定する事はできない。
[カナン]俺は、レアリエンだ。
[カナン]俺に存在理由を与える事ができるのは、創造した者だけ───
[カナン]ケイオス、それが、お前ならどんなに気が楽だったか───
[カナン]俺は──これからどうすればいいのだ────
[ケイオス]カナン───
[モモ]転移コラムのシグナルを確認
[モモ]ジャンプ 開始します
[ハマー]目の前 ぶつかるッスよ
[マシューズ]うろたえるんじゃねぇ
[マシューズ]このまま突っ込め
[ジギー]なんだここは?行き止まりか?
[Jr.]いや、奥から奴の波動を感じる───
[Jr.]間違いねぇ、この先に親父がいるはずだ。
[ジン]ふむ──しかし、これでは先に進むことができない。
[ジン]なにか、方法を考えなければ───
[モモ]待ってください───
[モモ]あの四つの球体から、ゾハルエミュレーターの波形を感知できます。
[Jr.]あの球体の中にエミュレーターが?
[モモ]はい、おそらくエミュレーターの影響によって、この空間に歪みが生じ、
[モモ]先へのルートが封じられていると思われます。
[Jr.]それを停止させれば、先に進むことができるんだな?
[モモ]おそらく、可能だと思います。
[Jr.]けっ、あのクソ親父め回りくどい事しやがって。
[Jr.]待ってろよガイナン。今助けに行くからな───
[Jr.]これは───
[モモ]すごいエネルギー。
[モモ]部屋全体が、エミュレーターと共鳴しています。
[ジギー]どうだJr.、停止させる方法はあるのか?
[Jr.]待ってくれ、今調べてみる。
ce017_100
[モモ]Jr.さん、気をつけて!
[Jr.]なんだこいつは!?
[モモ]エミュレーターに取り付いたグノーシスの集合体のようです。
[ジギー]さがれ、Jr.一機では無理だ!
[Jr.]エミュレーターが消滅したのか?
[ジン]部屋の共鳴も収まったようですね。どうですか、モモさん?
[モモ]はい、先ほどの空間の歪みが徐々に矯正されています。
[Jr.]よし、残りのエミュレーターもすべて停止させるぞ。
[Jr.]この感じ──。また共鳴が始まったのか?
[ケイオス]いや、この感じは──、
[ケイオス]僕たちとの共鳴じゃない。この先にあるオリジナルゾハルと共鳴しているんだ。
[Jr.]オリジナルゾハルとの共鳴だって?大丈夫なのかよ?
[ケイオス]分からない──でも、確実にゾハルからの波動は強くなっている。
[ケイオス]恐らくこの現象を引き起こしているのは──
[Jr.]クソ親父ってわけか。
[ジギー]つまり、ゾハルは完全にディミトリ.ユーリエフの手に落ちたとみていいのだな?
[ケイオス]ゾハルの力の解放に伴って、惑星消滅現象は加速度的に速くなっているみたいだ。
[ケイオス]いずれは星団連邦全域が──そうなる前に彼を止めなければ!
[Jr.]あぁ、止めてやるさ。ガイナンを取り戻す為にもな!
[ディミトリ]ようやく、辿り着けたか?
[ディミトリ]お前に与えた能力も大した事はないな、我が息子よ。
[Jr.]てめぇ───こんな事をして一体何を考えてやがる!
[ディミトリ]何を?お前達の不始末を、この父親である私が取ろうというのだぞ?
[ディミトリ]感謝されこそすれ、文句を言われるとは心外だな。
[Jr.]何が感謝だ!やめないなら、この俺がやめさせてやる!
[ディミトリ]ほう、自らの創造主であるこの私に手をあげようと言うのか?
[ディミトリ]お前にそんな度胸があるとはな───
[Jr.]ふざけるな!今すぐ、このバケモノを止めろ!
[Jr.]でなけりゃお前をぶっ殺す!
[ディミトリ]いいのか?お前の大事な兄弟も私の中にいるのだぞ?
[Jr.]ガイナン!ガイナンの意識はまだあるのか!?
[Jr.]ガイナン!聞こえないのかガイナン!
[ディミトリ]無駄だ。あれの意識は私の奥底にあるお前の声も届きはしない。
[ディミトリ]お前と違って、この息子は実に私に尽くしてくれる。
[ディミトリ]殺された事は少々予定外だったがな。
[Jr.]てめぇの我執の為にどれだけの血が流れたと思っている!
[Jr.]ガイナンを元に戻せ!
[ディミトリ]関係ない。すべてはこの私がウ.ドゥを超える為の尊い犠牲だ。
[Jr.]超えてどうする!
[ディミトリ]セラーズから聞いているとは思うが、
[ディミトリ]私はU.M.N.の転移実験によって、ウ.ドゥと接触した初めての人間なのだ。
[ディミトリ]その時に私は、この力を手に入れる事ができた。だが、
[ディミトリ]それと共に、逃れる事のできない恐怖を植えつけられたのだ。
[ディミトリ]私はその恐怖に怯え、耐え、逃げ続けた。そして理解したのだ。
[ディミトリ]その恐怖こそが、人を人の領域へと縛る枷なのだと。
[ディミトリ]恐怖を超克するには、神の力が必要なのだと。
[ディミトリ]私は神の力を求め続け、そして知った。
[ディミトリ]神の遺物が一つになればそれが叶うと。
[ディミトリ]だからここミクタムへと来たのだ。
[ディミトリ]今、私は神の恐怖を、神の存在を超えるのだ!
[ディミトリ]ミクタムに眠るツァラトゥストラを得て、
[ディミトリ]私は上位の領域──神の世界へと昇るのだ!
[Jr.]その波動───
[Jr.]そうか 接触した時に──
[Jr.]既に汚染されていたのか
[ディミトリ]汚染
[ディミトリ]私がか
[ディミトリ]バカな これは力だ
[ディミトリ]これこそが 神をも超える力なのだ
[ディミトリ]そう これも
[ディミトリ]我が力のほんの一部だ
[ディミトリ]お前にこの力を止める事が出来るのかな
[Jr.]ここまでだな、親父。
[Jr.]所詮この力は人が扱えるようなモンじゃねぇ。
[ディミトリ]度し難いな息子よ、お前は本当にこれが私の力だと思っているのか?
[Jr.]今更、何を言おうと無駄だお前は負けたんだよ!
[ディミトリ]くくく、ははははは浅はかだな、ルベド。
[ディミトリ]さっきも言ったが、私の得た恐怖はこんなモノではない。
[Jr.]くだらねぇ、分からねぇのかよ!
[Jr.]ウ.ドゥに恐怖を感じたお前にウ.ドゥを超える事なんか出来ねぇんだ!
[ディミトリ]分かってないのは お前だよルベド
[ディミトリ]恐怖こそが進化を呼ぶ
[ディミトリ]人は恐れを克服する為に
[ディミトリ]その英知を使い 力を得て来たのだ
[ディミトリ]そうだ そしてこれがその力
[ディミトリ]お前にも 私やアルベドが受けた恐怖を教えてやろう
[Jr.]E.S.転送
[ディミトリ]無駄だ
[ディミトリ]この力は無限だ
[ディミトリ]ゾハルとアベルがある限り
[ディミトリ]私の力は 潰える事はない
[Jr.]やめろ
[Jr.]ウ?ドゥが目覚める
[Jr.]取り返しのつかない事になるんだぞ
[ディミトリ]そうだ その表情
[ディミトリ]恐怖だ
[ディミトリ]かつて 貴様が仲間を裏切った時の顔だ
[ディミトリ]お前の恐怖がこの私の力となるのだ
[Jr.]くそ───
[ジギー]どうするJr. これではキリがないぞ
[白の外套者]勘違いするなよ
[白の外套者]その力は貴様の為のモノじゃない
[白の外套者]お前もその力に躍らされているだけなんだよ
[白の外套者]かつてのこの俺のようにな
[白の外套者]永劫の時───
[白の外套者]無限の輪廻───
[白の外套者]その流れの中にあって 人の存在なぞ無意味なもの
[Jr.]アルベド───
[Jr.]やはり お前だったんだな
[Jr.]アルベド
[アルベド]よぉ ルベド───
[アルベド]こうしてまたお前を感じる事が出来て俺は嬉しいぜ
[アルベド]この世界の摂理に感謝したい気分だ
[シオン]アルベド───どうして
[シオン]どうして彼が───
[Jr.]アルベド
[Jr.]だけど──お前はあの時───
[アルベド]忠告に来たんだよ
[アルベド]無駄な事ばかりしている愛すべき半身へな
[アルベド]だがまずは こいつらを
[アルベド]何とかしないとなぁ
[アルベド]おい、そんな所で何やってんだよ優等生?
[ディミトリ]死にぞこなったのか出来損ない───いまさら何のつもりだ?
[アルベド]黙れ!お前には用はねぇんだ、クソ親父。
[アルベド]俺が話してるのは、陰でコソコソしてるクソ野郎のほうさ。
[アルベド]そんなに親父に気に入られたいのか?お前は昔からそうだったよな。
[ディミトリ]無駄だ、お前らの話など聞こえてはいない!
[アルベド]そうか?本人は聞いているようだぞ?
[ディミトリ]ぐっ!な───に!?
[ガイナン]ジュ、Jr.───
[Jr.]ガイナン!
[ガイナン]俺を──殺せ早く、
[ガイナン]今なら、俺が意識を持っている今ならそれが可能だ!
[ガイナン]早く!
[Jr.]ばかやろう!そんなこと───
[アルベド]まったく、いつまでもアマちゃんな野郎だ。
[アルベド]そんな事じゃ、誰も救う事なんか出来ねぇんだよ。
[アルベド]アイツもそれを望んでいるんだ。さっさと、やっちまえよ。
[アルベド]お前にはその力があるんだろうが!
[Jr.]出来ねぇよ!
[アルベド]出来るだろう?お前はこの俺を殺したんだ。
[アルベド]同じだろう、簡単に出来るはずだぜ。
[Jr.]ちがう、俺は───
[アルベド]だったら、俺がやってやろうか?今の俺の力なら、簡単だぜ。
[Jr.]ヤメロ!
[アルベド]そうだ、それだ。さぁ、力を解放しろ!
[ガイナン]Jr.、気にするなアルベドの言うとおりだ。
[ガイナン]今、やらなければ、取り返しのつかない事になる。
[ガイナン]すまないな。年長者のお前に、すべて押し付けちまって──
[Jr.]ニグレド───
[アルベド]なに、感動してんだよ。さっさとリンクを張れルベド!
[Jr.]リンクだって!?
[アルベド]ニグレド、貴様と繋がるのは本意じゃねぇがルベドの為だ、さっさと繋がれ!
[Jr.]何をする気だ、アルベド!?
[アルベド]しっかりしてくれよ、お前、リーダーなんだろ?
[アルベド]奴はウ.ドゥに汚染されているんだぜ。
[アルベド]忘れたのか?俺達なら、奴を相殺する事ができるだろ。
[Jr.]!だが、そんな事をすれば俺達も───
[アルベド]俺の力を見くびるなよ。やばくなる前に別の次元に飛ばしてやるぜ。
[アルベド]ニグレド、わりぃなぁお前の体を利用させてもらうぜ。
[アルベド]リンクを開始したら、肉体を失う前にお前はルベドの中に入り込め。
[アルベド]その後は俺が何とかしてやる。
[Jr.]アルベド、お前また俺の前から消えるつもりなのか!
[アルベド]泣きそうな面すんなよ。
[アルベド]言っただろう、お前らが大キライなんだってな。
[アルベド]時間がねぇ、はじめろ!
[Jr.]──リンクを張るぞ!ニグレド、アルベド!!
[Jr.]よしそのままウ?ドゥの波動を押さえ込め
[アルベド]さぁ 行っちまいなニグレド
[アルベド]ぐずぐずしてっとお前ごと飛ばしちまうぞ
[アルベド]何をするニグレド
[アルベド]俺の体に入って来るな
[ニグレド]いい加減 素直になれよ アルベド
[ニグレド]何の為に“ここに戻って来た”
[ニグレド]悪いがお前の言いなりになるのは性に合わん
[ニグレド]ルベドの下に帰れ
[アルベド]やめろ ニグレド
[Jr.]ニグレド
[ニグレド]ルベド───
[ニグレド]それが本来のお前達の姿だ
[ニグレド]俺は お前達を監視する為に作られた
[ニグレド]お前を殺す事が俺という存在の全てだった
[ニグレド]俺はその任務を放棄しようとした───
[ニグレド]それは俺の存在そのものを否定する行為だった
[ニグレド]俺は──お前たちと別れる事が何よりも怖かったんだ
[ニグレド]アルベドはずっと知っていたんだ
[ニグレド]俺が お前にとって危険な存在だってな
[ニグレド]俺は 最初からこの世界に在ってはいけなかったんだよ
[Jr.]ニグレド───そんな事はない
[Jr.]俺たちは仲間だったろ
[ニグレド]お前を監視する役目は終わった
[ニグレド]いや
[ニグレド]もう終わりにしたいんだ───
[ニグレド]さよならは言わないよ
[ニグレド]また 三人で遊ぼう
[ニグレド]それまで 元気でね
[ニグレド]ルベド アルベド───
[Jr.]ニグレドォ
[アルベド]けっ 勝手に盛り上がって
[アルベド]一人で逝っちまいやがった───
[アルベド]最後まで むかつく奴だぜニグレド───
[Jr.]アルベド───
[アルベド]気にする事なんかねぇよ
[アルベド]どうせあいつの事だ
[アルベド]逝った先でシトリンと一緒に俺達の事を出歯亀する気だろうぜ
[Jr.]ああ そうだな
[Jr.]いつの日か 会いに行こう
[Jr.]そしてまた 三人で暴れるんだ
[Jr.]きっとむちゃくちゃ楽しいぜ
[アルベド]それも悪くはないな
[アルベド]わりぃ ルベド───
[アルベド]疲れちまったよ
[アルベド]少し眠らせて貰うわ
[Jr.]ああ 安心して休め
[アルベド]ルベド──
[アルベド]ゾハルと──アベルは────
[アルベド]ミク──タムに──
[メリィ]ガイナン様!?シェリィ───ガイナン様が───
[シェリィ]聞こえたわ、ガイナン様の(意識/こえ)───
[メリィ]いままでありがとうって───ちび様の事を頼むって───
[シェリィ]最後まで、ちび様の心配をするなんて───
[メリィ]ほんまや、最後の最後までかっこつけすぎやで───
[シェリィ]そうね───でもガイナン様らしいわ───
[ヴィルヘルム]これで彼の望みも叶ったわけだ。残る器の覚醒も、すぐだね。
[ケビン]はい。我々テスタメントはその為に在ります。
[ヴィルヘルム]では、僕らも舞台に上がるとしようか。
[ヴィルヘルム]さぁ、いくよヨシュア。
[オペレータ]何があった!
[オペレータ]判りません!リアクターからのエネルギーの供給が突然遮断されました!
[オペレータ]サブリアクターは!?
[オペレータ]緊急稼動させています!
[オペレータ]サブの全てを、アトモスフェア維持とライフラインに回せ!
[ミユキ]ねぇトガシ君!一体、何が起こっているの?どうして明かりが突然!?
[トガシ]わからない。さっき聞いた話だと、
[トガシ]リアクターが消失したとかなんとか。
[ミユキ]そんな──私達どうなっちゃうのよ!?ねぇ、なんとかしなさいよ!
[トガシ]そんな事、俺に言われたって──
[ミユキ]──せんぱい。
[シオン]ミクタムが輝いている──
[ジギー]たしか、ユーリエフが、ミクタムに何かが眠っていると言っていたが───
[Jr.]やはり、ゾハルの消失と関係があるのか?
[ケイオス]船長、オルムスの機動兵器だ。こっちに向かってくるよ!
[マシューズ]何!?
[モモ]オルムス機動艦隊を確認!周囲2万キロ、包囲されています!
[マシューズ]くっそう──トニー!ミクタムに降下するぞ!
[トニー]はぁ?マジかよっ!
[マシューズ]ここにこうしているよかマシだ!急げ!
[トニー]ちっ、無茶言いやがって──どうなってもしらねぇぞ!
[ハインライン]何をしている、マーグリス。去れという命令が聞こえなかったのか?
[マーグリス]恐れながら猊下。このままでは、我ら発祥の地がグノーシスに。
[ハインライン]構わぬ。全てはこの日の為に在ったのだ。
[マーグリス]ですが、ここにはツァラトゥストラが──
[マーグリス]あれなくして、主の眠る地、ロスト.エルサレムに還る事は叶いません。
[マーグリス]そうではなかったのですか?
[ハインライン]────
[マーグリス]猊下!
[ハインライン]どうやら君は、大きな勘違いをしているようだね。
[マーグリス]──なっ!
[マーグリス]げ、猊下───それが───あなたのお姿───
[ヴィルヘルム]そうさ。驚いたかい?
[ヴィルヘルム]君はこれまで良く尽くしてくれた。
[ヴィルヘルム]だけど、いささか信仰心が強すぎたようだね。
[ヴィルヘルム]強すぎる信仰心は己が目を曇らせる。
[ヴィルヘルム]見えるべきモノが見えなくなるのさ。
[ヴィルヘルム]だけど、それもまた“良し”──か。
[マーグリス]猊下──
[ヴィルヘルム]君達はオルムスの、その発祥を知らないだろうから教えてあげるよ。
[ヴィルヘルム]オルムスの発祥は今から約6000年前。
[ヴィルヘルム]君達が主と崇める、一人の男の死から始まった。
[ヴィルヘルム]表向きは、その男の存在を後世に伝える為。
[ヴィルヘルム]だけどね、裏の──その本来の目的は、
[ヴィルヘルム]その男が遺した“言葉”を管理する為に存在したんだ。
[ヴィルヘルム]君達がレメゲトンと呼んでいるあのプログラム。あれこそが、その言葉。
[ヴィルヘルム]この宇宙を散逸させるに足る、神によって仕掛けられたフェイルセイフなのさ。
[ヴィルヘルム]君達の主と呼ぶあの男も、そのことまでは知らなかったみたいだけどね。
[ヴィルヘルム]それはそうさ、あの言葉は“イェオーシュアの言葉”だったのだから。
[ヴィルヘルム]僕は、この宇宙を散逸から守る為に、
[ヴィルヘルム]その言葉を管理し、そして監視する組織を作った。
[ヴィルヘルム]それがオルムスの本来の目的さ。
[ヴィルヘルム]言葉だけじゃない。太古から伝えられる神の遺物。それら全てをね。
[ヴィルヘルム]あれらは人が扱うには度を過ぎたモノなんだよ。
[マーグリス]我らの悲願。ロスト.エルサレムへの回帰は偽りであったと?
[ヴィルヘルム]ああ、そうさ。
[ヴィルヘルム]だけど、君達が君達であると律する為の言葉──信仰心は必要だったろう?
[ヴィルヘルム]あんな場所に還ってどうしようと言うんだい?消えるべくして消えた場所だ。
[ヴィルヘルム]君達“人の業”によってね。
[マーグリス]なれば───
[マーグリス]これまで我々のしてきた事は、全て無駄であったと、そう申されるのですか?
[ヴィルヘルム]無駄ではないさ。君自身が“無駄ではなかった”と思えるのであれば──ね。
[ヴィルヘルム]その為に“僕は存在し続けた”のだから。
[ヴィルヘルム]さあ、どうする?マーグリス。君は、君が君で在る為の選択をしなくてはならない。
[ヴィルヘルム]この場を去るか、それとも──
[マーグリス]私は──私は──
[ヴィルヘルム]そう──君は、決して後悔をしない人間だ。
[ヴィルヘルム]それこそが、(最後の舞台/フィナーレ)を飾るに相応しい役者の姿だ。
[マシューズ]───おい、全員、生きてるか?
[トニー]まったく手荒い歓迎だな。うれしくて、涙が出てくるぜ。
[ジギー]現在地は分かるか?
[ユリ]待って、今ここのデタベースにリンクするわ。生きていればだけど──
[ユリ]────市街地から南西に12kmの地点ね。おそらく、近くに宇宙港が存在するはずよ。
[シオン]ゾハルの反応は?
[モモ]反応はありません。ただ、市街地を中心に高密度のグノーシスの反応が───
[ジン]グノーシスですか──そこに、この星の異常発生の原因があるのでしょうか?
[Jr.]恐らくな。さっき、アルベドが眠りにつく前に俺にこう言ったんだ。
[Jr.]ゾハルとアベルは“ある意志により”ミクタムに転移させた。
[Jr.]おまえ達は、そこに行け──って。
[Jr.]船長、悪いがエルザはここで待機だ。
[Jr.]もしもの時は、俺達を待つ必要はねぇ。ユリさんの指示で、脱出してくれ。
[マシューズ]それで、いいんですかい?ちび旦那。
[Jr.]自分の身は自分で守れって事だよ。こっちも余裕がねぇからな。
[Jr.]残りは、E.S.で港湾施設を抜けて市街地に向おう。
[Jr.]オルムスの連中も降りてる筈だ、気を抜くなよ。
[アレン]え?僕も、行くの!?
[Jr.]ここに残ってて、何かできるのか?
[Jr.]この先、何が起きても不思議じゃないんだ。
[Jr.]シオンの調子もあまり良くない。しっかり、サポートしてやれよ。
[Jr.]カナン、お前はジンのサポートを頼む。
[カナン]────
[Jr.]おい、カナン!?どうした?
[カナン]ん?───いや、なんでもない。了解した。
[ケイオス]────
[Jr.]これが、ミクタム───
[ジン]我々人類の贖罪の地。この星全体が墓標のようなものですね。
[ジギー]─────
[Jr.]どうした、おっさん?怖気づいたのか?
[ジギー]いや───なんでもない。
[ジギー]ノイズが多くてな──センサーの調子が良くないようだ。
[Jr.]なんだよ、おっさんといい、カナンといい。しっかりしてくれよ。
[ジギー]すまない───もう、大丈夫だ。
[リヒャルト]いけないなぁ。他人の家に土足で上がり込んじゃあ!
[Jr.]その声?てめぇら、まだ生きてやがったのか!
[リヒャルト]当然だ、君たち異端の者に制裁を加えるのが我らの役目なのだから。
[Jr.]へっ、手前らこそ、飽きもせず、またやられにきたんだろ?ご苦労なこった。
[リヒャルト]まったく、無駄に威勢がいいね。たかが、不法侵入者の分際で。
[リヒャルト]感謝したまえ、我オルムスの聖地で、異端者に対する断罪が行われるのだ。
[リヒャルト]君たちには過ぎたシチュエーションだと思わないかい?
[リヒャルト]それとも、感動のあまり震えているのかな?
[Jr.]グダグダと能書きばかり垂れてないで、さっさとかかって来い!
[リヒャルト]もちろん、そうさせてもらうよ。君達に下された判決は
[リヒャルト]死刑だからね!
[シオン]黒いE.S.───あれは、あの時の───
[ジギー]テスタメントか!?
[ジン]私達を誘っているようにも見えますね。
[ジン]かなり破壊されていますね───だが、戦闘によるものではなさそうだ。
[ケイオス]この都市の崩壊の仕方は、大気リアクターの暴走事故等とも違うみたいだね。
[ケイオス]どちらかと言えば天災に近いかも。
[ジギー]このマーク───!?
[Jr.]どうした、おっさん?
[ジギー]間違いない。遙か昔、まだ人間だった頃、俺はこの星に来た事がある───
[Jr.]なんだって!?
[ジギー]ここが、まだアブラクサスと呼ばれていた頃。
[ジギー]俺はここで、ヴォイジャーと対決した。
[Jr.]あのテスタメントも、この星にいたってのか!?
[ジギー]ああ、そうだ。
[ジギー]ヴォイジャーはここで生まれ、そして、やがて人ではない者へと変わったのだ───
[Jr.]なぁ、おい。これって───
[ジン]グノーシスですね───
[モモ]ひどい───
[カナン]かなりの人間が、脱出出来ずに取り残されたようだな。
[モモ]プラットホームはすぐそこだったのに───
[ジン]ここから、どれだけの宇宙船が無事飛び立つ事が出来たのか───
[シオン]───う!
[シオン]何───?今の───
[モモ]シオンさん!?
[アレン]主任!どこに行く気です!?
[シオン]こっちに───何かがある───
[シオン]ここは───?
[アレン]非常用のプラットホームの様ですけど何かあるんですか?
[シオン]───わからない。なんだろう、
[シオン]悲しみ? 不安?この場所で何かを感じるの───
[アレン]主任───
[ペレグリー]この場所で貴方に再会できるとはね。神に感謝したい気持ちだわ。
[ペレグリー]ジン.ウヅキ───
[ジン]ペレグリー!?
[ジン]もはや貴方と語り合うつもりはない。
[ジン]我々はこの星で起きている異変を止めねばならないのだ。
[ジン]オルムスも連邦ももはや関係はない。貴方と戦う理由はないのだ。
[ペレグリー]戦う理由はない?この地がどういう場所かわからないの?
[ジン]この場所?
[ペレグリー]まさか、何も知らずにこの地に足を踏み入れたの?
[ペレグリー]この地こそ、我らオルムスの発祥の地よ。
[ジン]オルムスの発祥の地───!?
[ペレグリー]そう、そしてこの地に生まれた者はゾハルの民と呼ばれた。
[ペレグリー]あなた達連邦が推し進めていたプロジェクトゾハル。
[ペレグリー]それも元々は、我らがこの世界にもたらしたものなのよ。
[ジン]なるほど、それがあなたが(拘/こだわ)る血の理由ですか?
[ジン]───ただの虚言ではないようですね。
[ペレグリー]ここは、長き放浪の果てにゾハルの民が漂着した惑星。
[ペレグリー]我々は幾世代にもわたって、神の遺物と共に、ゾハルを守護してきた民だった。
[ペレグリー]だが、ゾハルの有用性に気づいた連邦の(簒奪者/さんだつしゃ)共は、
[ペレグリー]この惑星を侵略し、抹殺し、ゾハルを手にしようとした。
[ペレグリー]その結果がこれよ。
[ペレグリー]この惑星の姿は、あなた達連邦のエゴと欲望が具現化されたもの。
[ペレグリー]我々はそれら簒奪者に、復讐を誓った。そして、この地に力を呼び戻し、父なる聖地へと還ろうと。
[ペレグリー]それこそが、ゾハルと共に生きてきた我らの血の宿命。我らが神の言葉だった。
[ジン]それが、あのミルチアの真実ですか?
[ジン]確かに、あなた方も被害者なのかもしれない。
[ジン]しかし、だからといって、ミルチアでのあなた方の行為が正当化される訳ではない!
[ペレグリー]正当化される必要などないわ。託宣は存在そのものが正義であり真実だったのよ!
[ジン]古来、神の言葉を語った者に、正義などありはしませんでしたよ!
[ジン]あったのは、(欺瞞/ぎまん)と(捏造/ねつぞう)と侵略です!
[ペレグリー]ふふふ。そう──欺瞞ね。
[ペレグリー]確かに全ては欺瞞だったわ。私達の行為には、何の意味もなかった。
[ジン]ペレグリー?
[ペレグリー]そうよ、もう全ての意味など必要ないわ。
[ペレグリー]私は今ここにいる。これこそが、私の存在理由。
[ペレグリー]ジン
[ペレグリー]貴方は自由だわ
[ペレグリー]自由に全てを受け入れそして否定も出来る
[ペレグリー]でも私は違う
[ペレグリー]貴方とは決して相容れる事など出来ない
[ペレグリー]所詮 こうなる運命なのよ
[ペレグリー]ならば───せめて私の手で
[ジン]ペレグリー
[ジン]脱出するんだ ペレグリー
[ジン]こんな死に意味などない
[ジン]受け入れる必要はないんだ
[ペレグリー]言ったでしょうもはや意味など関係ない
[ペレグリー]人にはそれぞれ歩むべき道がある
[ペレグリー]貴方と私のそれは交わる事がないのよ
[ジン]ならば 今一度
[ジン]この私と戦え
[ジン]私を倒す為に 生き延びろ
[ペレグリー]私には無理
[ペレグリー]もう── 疲れたわ
[ペレグリー]お別れよ ジン?ウヅキ
[ジン]ペレグリー
[Jr.]ジン
[シオン]また あのE.S.が───
[Jr.]どうした、おっさん?おっさん!?
[モモ]ジギー、大丈夫ですか?
[ジギー]────もしかしたら、ゾハルのある場所が分かるかもしれん。
[Jr.]本当か!?でも、一体どこに?
[ジギー]断片的な記憶だが、かつて、ゾハルの研究が行われていた施設があったはずだ。
[ジギー]そこに行けば、何かつかめるかもしれん。
[Jr.]なんで、そんな大事な事を今まで黙っていたんだ?
[ジギー]黙っていたわけではない。記憶が断片化していて、うまくリンクしていないのだ。
[ジギー]どうやら無意識に記憶を封印しようとしているのだろう。
[Jr.]なんだよ、そりゃ。
[ジギー]サイボーグでも悪夢を見る。
[ジギー]俺はその(悪夢/ノイズ)を、なんとしても消し去りたかった───
[カナン]悪夢───
[ジギー]その場所は、俺の悪夢の舞台で、もっとも忌まわしき場所だ。
[Jr.]ここが───そうなのか?
[ジギー]ああ、そうだ。
[ジン]何か***用の施設のようですね。
[カナン]オルムスによって建てられたゾハルを奉る為の大聖堂だ。
[カナン]かつては、連邦との巡礼会議などが執り行われていた。
[ジギー]そう、だがそれは表向きの話だ。
[ジギー]実際は、この地下でゾハルの研究が行われていた。
[Jr.]なるほど、うさんくせぇ場所だぜ。よし、中に入るぞ。
[ヴォイジャー]お待ちしておりましたよ、ジャン.ザウアー。
[ジギー]!
[Jr.]おい、奴は───
[ジギー]ヴォイジャー。
[ヴォイジャー]必ずここに来ると思っていました。
[ジギー]────
[Jr.]どういう事だ?奴とこの場所とどんな関係があるんだよ?
[ジギー]───ここは、奴の手によって俺の妻と子供が殺された場所だ。
[Jr.]!
[ジギー]ヴォイジャー。俺はすでに死んだ人間だ。
[ジギー]貴様が、この場所で何を企んでいようと、すべては無駄な事だ。
[ヴォイジャー]いいや、貴方は今でも苦しんでいる。
[ヴォイジャー]違いますか?
[ヴォイジャー]貴方の時間は、あの時のまま止まってしまったのだ。
[ヴォイジャー]未来永劫、逃れる事はできない。
[ヴォイジャー]あの時、私の忠告を素直に聞きいれ、共にテスタメントになっていれば、
[ヴォイジャー]そんな苦しみを背負う事はなかったものを。
[モモ]ジギーが──テスタメント?
[ヴォイジャー]何を驚いている?貴様ら全員がそうなのだよ。
[ヴォイジャー]そう、貴様も、貴様も、貴様もだ。
[ヴォイジャー]我らの仲間となる素質を持っている。
[ヴォイジャー]あの方は、それを知っており常に貴様達を監視してきた。
[Jr.]あの方?監視だって!?
[ヴォイジャー]そう、特殊レアリエンに施された監視用プログラム。
[ヴォイジャー]いただろう、貴様らのそばに。15年前から、ずっと貴様らを監視してきた男が。
[ヴォイジャー]プログラム.カナン。いや、ラクティスといったほうがいいかな?
[カナン]───
[ジギー]ラクティスだと!?ばかな───100年前の話だぞ?
[ジギー]カナン───まさか、お前がそうなのか!?
[ジギー]お前が、あのラクティスなのか───
[カナン]コードネーム“ラクティス”。
[カナン]100年前、その名を与えられた俺は、隊長とそしてヴォイジャーを監視していた。
[カナン]そして、今はルベド、お前達を監視しているのだ。
[ジン]カナンが───監視者?
[Jr.]カナン───ウソだろう?お前が、スパイの真似なんかするわけはない。
[カナン]────ルベド。そいつの言う事は本当だ。
[カナン]俺は、そのようにプログラミングされている。
[Jr.]カナン───まさか、ずっと俺達を裏切ってたのかよ───
[カナン]─────
[Jr.]なぜ黙っている!答えろ、カナン!!
[ヴォイジャー]そう、ラクティスを責めるな。彼はその為に作られたのだ。
[ヴォイジャー]お前が、兵器として存在するように、彼は、監視者として存在している。
[カナン]───すまない、ルベド。
[Jr.]カナン───
[ジギー]いい加減にしろ、ヴォイジャー!
[ジギー]なぜ、こんな手の込んだ事をする?
[ジギー]いまさら、ラクティスを苦しめてどうするというのだ!?
[カナン]隊長───
[ジギー]こんな事の為に、テスタメントになったとでもいうのか?
[ジギー]貴様の本当の目的はなんだ!?
[ジギー]答えろエーリッヒ!
[ヴォイジャー]ははははははは!
[ヴォイジャー]私がテスタメントになったのは死の恐怖から逃れ、永遠の快楽を手に入れる為だ。
[ヴォイジャー]貴方とは、なんら関係のない事ですよ。ジャン.ザウアー。
[ヴォイジャー]私が貴方にこだわっている理由。それは至極単純な話。
[ヴォイジャー]貴方と共に、永劫にその人生を愉しみたい、ただそれだけですよ。
[ヴォイジャー]100年前
[ヴォイジャー]貴方は私の言葉を無視して自ら命を絶った
[ヴォイジャー]私にはそれが我慢ならんのです
[ジギー]だからわざわざこの場所を選んだというのか
[ヴォイジャー]そうです
[ヴォイジャー]貴方が幕を引いたこの場所
[ヴォイジャー]さぁ アンコールといきましょう
[ヴォイジャー]今度こそ
[ヴォイジャー]私の手でとどめを刺してあげますよ
[ヴォイジャー]貴方の息子のようにね
[ジギー]エーリッヒ
[ジギー]終わりだ エーリッヒ
[ヴォイジャー]まだまだ これからですよ
[ヴォイジャー]今の貴方に
[ヴォイジャー]私を傷つける事など出来はしない
[カナン]止めるんだ 隊長
[ジギー]ラクティス!?
[カナン]無駄な事はやめてくれ隊長。エーリッヒに、勝つ事などできない。
[ヴォイジャー]部下に救われるとはね、ジャン。いい隊長ぶりだ。くくく、はははははは
[カナン]エーリッヒ、俺と取引をしてくれ。
[ヴォイジャー]取引?
[カナン]お前がテスタメントになった理由、それは、死の恐怖の克服の為だったな。
[ヴォイジャー]だからなんだ?私はあの方の力により、すでに死の恐怖を克服した。
[カナン]いや、まだだ。
[カナン]力を与えている人物がいなくなれば、お前はまた死の恐怖に怯える事になる。
[カナン]結局、お前自身は何も変わってはいないのだ。違うか?
[ヴォイジャー]フ、愚かな───あの方が消える事はない。そう、私の命も永遠だ。
[カナン]本当にそう思うか?信じたものに裏切られないと、言い切れるのか?
[カナン]そんなものに意味はないとあざ笑ったのは、お前自身ではないのか?
[ヴォイジャー]────
[カナン]いいか、プログラム.カナンを利用するんだ。
[カナン]俺の深層意識は、情報を受け渡す為、ある場所と直接リンクしている。
[カナン]お前ならその場所を知っているはずだろう?
[ヴォイジャー]───秩序の羅針盤か。
[カナン]そうだ、この俺とリンクする事でお前は羅針盤の力を直接取り込む事ができる。
[カナン]まさに、神の力を得る事になるのだ。いい話だと思うがな?
[ヴォイジャー]貴様の望みは?
[カナン]お前の仲間にしてくれ。
[Jr.]カナン!?
[ジギー]ラクティス?お前、何を!?
[カナン]どの道、ここで生き残ったとしても、俺は裏切り者だ。
[カナン]そんな汚名を着たまま、生き残りたくはない。
[ヴォイジャー]クククク──なるほど、よく分かった。さすが、特別製だ。考える事が違うな。
[ヴォイジャー]いいだろう、貴様のその力貰う事にしよう!
[ジギー]ラクティス!
[ヴォイジャー]これが あの方の力か
[ヴォイジャー]これで 私は神となれる───
[ヴォイジャー]何
[ヴォイジャー]力が──力が消えていく───
[カナン]残念だったな エーリッヒ
[カナン]お前には この力を扱う事は出来なかったようだ
[カナン]お前は 触れてはならぬモノに触れてしまった
[カナン]これは その報いだ
[ヴォイジャー]ラクティス
[ヴォイジャー]貴様 最初からこのつもりで
[カナン]悪いがこのまま一緒に位相空間へ旅立ってもらうぞ
[カナン]エーリッヒ
[ジギー]止めろ ラクティス
[ジギー]そんな事をすればお前もただでは済まない
[ジギー]死ぬ事になるんだぞ
[カナン]解っています隊長
[カナン]でも これでいい
[カナン]もう 目の前で
[カナン]大切な人を失うのは嫌なんです
[カナン]俺は 隊長を見殺しにする為に存在したのではない
[カナン]皆を裏切る為に存在していたのではない
[カナン]皆を守る為に存在したいんです
[カナン]───さようなら隊長
[ジギー]ラクティス
[Jr.]カナン
[カナン]お別れだ ルベド
[カナン]作戦の成功を祈っている
[ジギー]また、俺は助ける事ができなかったのか───
[Jr.]そんな事はねぇよ。アイツは、ようやく己の呪縛から解放されたんだ。
[Jr.]もう、誰に利用される事もない。
[ジギー]────そうかお前も、俺と同じ道を選んだのか。ラクティス───
[Jr.]なんだよ、ここは───?
[アレン]何かの実験棟のような感じですね───
[ジン]───!
[マーグリス]貴様が、ここにいるという事はペレグリーは死んだか?
[マーグリス]昔の恋人を手にかけてなお、生き延びたか───
[マーグリス]しぶとさだけは一人前だな、ウヅキ。
[ジン]その言葉、そっくりお返ししますよ、大佐。
[マーグリス]くくく、見てみろ、この夢想の(残滓/ざんし)を。
[マーグリス]人類の英知の結晶、神をも超える人の技。
[マーグリス]不相応な力を欲したが故の末路。まさに、悪夢だ。
[ジン]そして、その悪夢を繰り返してきたのはあなただ、大佐!
[マーグリス]この俺も人としての域を脱する事はできなかった。
[マーグリス]この星を、悪夢の中に閉じ込め続けたのは、あるいは俺なのかもしれん。
[マーグリス]ある意味、純粋だったのだ。考えればすぐに分かる事だった。
[マーグリス]だが、殉教という(甘言/かんげん)が俺の目を曇らせた。
[ジン]大佐───あなたの部下達は、その殉教という言葉の為に、
[ジン]あなたを信じ、自らの命をかけたのだ!
[ジン]───どうして、あなたはここにいる?なぜ、彼らのそばにいない!?
[マーグリス]ウヅキ───疑う事なく逝けた奴らは幸せなのだ。
[マーグリス]だが、この俺はどうだ?主人に見捨てられた飼い犬ほど、惨めなものはない。
[マーグリス]野良のような逞しさはなく、ただ惨めな姿を野にさらし、死を待つだけの存在。
[マーグリス]だが、それは貴様とて同じ事。
[マーグリス]オルムス、ヴェクター、連邦、ミルチア。
[マーグリス]すべては、ある目的の為の単なる配役に過ぎん。
[マーグリス]ゾハルの民その言葉の響きに、いまさらなんの意味がある?
[マーグリス]下らぬ戯言にのせられ、踊り続けた単なる道化だ。
[ジン]それが分かっていて、なぜ戦おうとする!?
[マーグリス]道化にも意地はある。すべてに裏切られ、拒絶された俺に残されたモノ、
[マーグリス]それが貴様だ───ウヅキ。
[マーグリス]貴様との対決だけは、この俺を裏切る事がない。
[ジン]私が逃げるとは、考えなかったのですか?
[マーグリス]ありえんな。
[マーグリス]所詮、我らは力でしかモノを語る事のできん人種なのだ。
[マーグリス]ペレグリーを殺したお前だ
[マーグリス]きっと俺を満足させてくれるのだろう
[マーグリス]なぁ ジン?ウヅキ
[マーグリス]武人として
[マーグリス]漢として
[マーグリス]生きた証を立てさせて貰う
[マーグリス]あの老いぼれ 目だけは確かだったという訳か───
[マーグリス]ジン 貴様は大した男だ
[マーグリス]だが その強さの為に貴様は常に孤独なのだよ
[マーグリス]数少ない理解者を自らの手で絶って来たのだ
[マーグリス]もう 貴様を理解する者など居ない
[ジン]マーグリス───
[マーグリス]残念だが 俺は貴様の手では死なん
[ジン]マーグリス
[マーグリス]邪魔をするな
[マーグリス]見ろ この俺の姿を
[マーグリス]俺は 後悔などしていない
[マーグリス]俺はこの[最期/しゅんかん]の為に生きたのだあっ
[アレン]な、なんですか!?
[シオン]ペンダントが───
[Jr.]おい、どうなってるんだ───?
[シオン]呼んでる───
[シオン]この先で、誰かが私を呼んでいる───
[シオン]ここは───
[シオン]くっ───
[アレン]大丈夫ですか、主任?少し休んだ方が───
[シオン]大丈夫───もう落ち着いたから。
[Jr.]なんだよ、ここで行き止まりか?
[ジギー]Jr.、これを見ろ。この文字───
[Jr.]あぁ、浮遊大陸で見たものと同じモノだ。
[Jr.]モモ、意味はわかるか?
[モモ](御使/みつか)ひこた(へ/え)て女たちに(言ふ/いう)汝ら(櫂/おそ)るな、
[モモ]我汝らが十字架につけられ(給ひ/たまい)しイエスを(尋/たづ)ぬるを知る。
[モモ](此処/ここ)には(在/いま)さず、その(言へる/いえる)如く(蘇り給へり/よみがえりたまえり)。
[モモ]解読できるのは、その一節だけです。後はデータにありません。
[ジン]ふむ、この材質──クリスタルか?
[ジン]何かの結晶体のような感じですね。
[KOS-MOS]この構造物の材質は、シオンのペンダントと組成が一致しています。
[KOS-MOS]この組成物は惑星全体からも検出されています。
[シオン]このペンダントと同じ物質?
[Jr.]普通の部屋じゃないのは確かって事だな。
[Jr.]だが、こんなちっぽけな部屋が(オルムス/れんちゅう)の守りたかったモノなのか?
[KOS-MOS]ここは突き当りではありません。
[KOS-MOS]高出力のエネルギーが、部屋のさらに奥から検出できます。
[ジギー]だが、出入り口らしきものはどこにもないが───
[シオン]─────なに───これ───?
[モモ]シオンさん?
[シオン]誰かが、私に訴えてくる───
[Jr.]おい、大丈夫かシオン。この部屋に来てから、かなり辛そうだぞ?
[シオン]い──やぁ───
[ジン]シオン!
[アレン]主任!!
[ウ.ドゥ]シオン───
[シオン]貴方は──
[シオン]どうして 私の前に現れるの
[シオン]貴方は───誰
[アベル]シオン───
[シオン]アベル───くん
[アベル]この姿は、君が僕を定義したモノ。
[アベル]君がこの姿をアベルと呼ぶのであれば、僕はアベルだ。
[シオン]そうだったの。ウ.ドゥって、君の事だったのね?
[アベル]僕は、ウ.ドゥが認識される形態の一つに過ぎない。
[アベル]ウ.ドゥは知りたがっている。
[シオン]知りたい?何を?
[アベル](散逸/さんいつ)する世界を望む意識達の事を。
[アベル]君達のすべてを、この世界のすべてを。
[シオン]そんなの───私には解らない。
[アベル]シオン───君は今、傷みを感じているのか?
[アベル]傷みが、自己を認識する為の手段なのか?
[アベル]君達は何故、傷みを求めようとする?
[シオン]わからない、わからないわ。私にも──解らないのよ。
[アベル]解らない──僕も解らない──
[アベル]自分を、他人を、どんなに傷つけても──
[アベル]癒されなどしないのに──なぜ──
[アベル]シオン───君はなぜこの世界に存在している?
[アベル]君の心は、絶望の淵で何を見ようとしている?
[アベル]本当の君は、どこに居る?
[シオン]本当の私───?私はここに居るのに──
[シオン]わからない───私はどこにいるの?
[アベル]僕は知りたい、僕はなんだ?誰が僕を定義してくれる?
[アベル]そう──僕は独りだ──
[アベル]あの歌声だけが──僕を癒してくれる───
[シオン]そう──あの人だけが、私を癒してくれる───
[シオン]私の望みは───
[モモ]シオンさん!
[ジン]大丈夫ですか、シオン?
[シオン]あ、私───うん、大丈夫───よ。
[シオン]!
[ジン]ネピリム?
[ネピリム]シオン───この先にあなたの求めるモノがある。
[ネピリム]もし、貴方がこの先に進む事を望むのならばあなた自身の手で、扉を開けねばならない。
[シオン]扉?
[ネピリム]そう、この部屋は(神/ちから)を行使できたある一人の女性の意識によって封印された。
[ネピリム]この先にあるモノを人の手に触れさせない為に。
[ネピリム]彼女の意識が目覚めなければ、この先にある真実に辿り着く事はできないわ。
[シオン]女性?────誰なの?
[ネピリム]貴方のよく知っている人。
[ネピリム]遥か太古、貴方と共に笑い、貴方と共に泣いた。あなたの半身。
[シオン]私の半身───?
[ネピリム]今、この宇宙を救う為には、彼女の目覚めが必要なの。
[ネピリム]だけどそれは、貴方に辛い選択を強いる事になるわ。
[ネピリム]彼女の目覚めは貴方の命を蝕み、削っていく。
[ネピリム]もし、貴方がここで引き返したとしても、誰も責めたりはしない。
[ネピリム]みんな、貴方の辛さを知っているから。
[シオン]知っている?みんなが?私の何を知っているというの?
[シオン]私の気持ちなんて誰にもわからないわよ。私はいつも一人だった。
[シオン]助けを求めても、誰もその声を聞こうとはしてくれなかったのよ!
[シオン]私の声を聞いてくれたのは、ケビン先輩だけだった───
[ネピリム]そんな事はないわシオン──みんな、貴方の声を聞いていた。
[ネピリム]貴方の事を守りたいと───
[シオン]あなたも、兄さん達と同じ事を言うのね?
[シオン]だったら、どうして助けてくれなかったの?
[シオン]まるで傷物に触れるみたいに、近づこうともしなかったくせに!
[シオン]まだ、責められたり、罵られたほうがマシだったわよ!
[ネピリム]シオン───お願い自分の意識をしっかり持って。
[ネピリム]このまま、彼の言葉に取り込まれないで───
[シオン]心配しなくても大丈夫よ。ちゃんと封印をといてあげる。
[シオン]でも、貴方達の為じゃない。自分の為、宇宙がこうなった責任を取る為よ!
[アレン]待ってください、主任!なぜそうまでして、自分を追い詰めるんですか!
[シオン]──どいてアレン君。あなたには関係ないわ。
[アレン]関係あります!ぼ、僕はずっと主任の事を────
[アレン]と、とにかく、主任の事が心配なんです!
[シオン]あなたも見たでしょう。
[シオン]グノーシスも宇宙の崩壊もすべて私が起こしたものなのよ。
[アレン]だからって一人で抱え込む必要はないでしょう?
[アレン]僕だって、いや、他のみんなだって、
[アレン]そうですよ、みんなで考えれば、他に何か方法が───
[シオン]あまいのね。もうそんなレベルの話ではないのよ。
[シオン]ねぇ、アレン君。あなたにどんな力があるというの!?
[シオン]あなたに私が救える?私の命を助けてくれるというの!?
[アレン]それは───
[シオン]力もない癖に────何もできないのなら、黙ってて!
[アレン]そんな──
[ジン]シオン、言い過ぎです!彼はお前の事を───
[シオン]───
[アレン]主任───?そんな、そんな体になってまで、
[アレン]そんなにあいつに会いたいんですか!!
[シオン]────もう、決めたのよ。放って置いて!
[ネピリム]シオン───本当にいいのね?
[シオン]ええ、いいわ。
[シオン]ここは───
[シオン]あの時の浮遊大陸
[シオン]違う───
[シオン]ここはどこかの惑星だわ
[シオン]そうか
[シオン]これはあの大地が生きていた時の記憶
[シオン]ここが
[シオン]ロスト?エルサレム
[シオン]碑石がまだ新しい
[シオン]まるで作られたばかりのよう───
[シオン]ケイオス君
[シオン]どうして 貴方がここに
[ケイオス]君がここに現れたという事は
[ケイオス]彼女を迎えに来たんだね
[シオン]彼女
[シオン]そうよ どこに居るの
[ケイオス]この棺に
[シオン]ねぇ この棺に誰が───
[シオン]ケイオス君───
[シオン]あ───
[シオン]動かせる──
[シオン]これ
[シオン]そ そんな───KOS‐MOS
[シオン]いえ違う───これは人だわ
[シオン]KOS‐MOSやT‐elosにそっくりの女性───
[シオン]何
[シオン]ここは───
[シオン]あれは───
[シオン]ケイオス君
[シオン]隣りに居るのは 棺の[女性/ひ と]だわ
[シオン]これは───この感じ
[シオン]怒り 絶望
[シオン]───違う
[シオン]哀しいのね
[シオン]───KOS‐MOS
[シオン]あれは───涙
[シオン]なぜ
[シオン]どうして泣いているの
[シオン]そうか
[シオン]貴方も 自分を見失っていたのね
[シオン]自分が誰だか分からない
[シオン]自分の立っている場所が分からない
[シオン]私と同じ
[シオン]いつも一人で寂しい思いをしていたのね
[シオン]探そう
[シオン]私が何者なのか
[シオン]貴方がなぜここに居るのか
[シオン]一緒に探しに行こう KOS‐MOS
[KOS‐MOS]シオン──
[ジン]シオン!
[Jr.]大丈夫か?おい?
[アレン]主任───
[シオン]わたし───
[KOS-MOS]立てますか、シオン?
[シオン]KOS-MOS───
[シオン]目覚めたのね、本当の自分に。あなたは───
[T‐elos]マリア!
[シオン]マリア?
[T‐elos]ようやく、目覚めたようねマリア。我が意識よ。
[アレン]T‐elos!
[T‐elos]お前が宿るべき器は、そこではない!
[T‐elos]大人しく私の一部となれKOS-MOS!
[シオン]貴方は何者なの
[シオン]貴方とKOS‐MOSはあの[女性/ひ と]とどんな関係があるの
[T‐elos]彼の女は[救世主/メ シ ア]の伴侶
[T‐elos]我が躯体はマリアの肉体
[T‐elos]KOS‐MOSの中に眠りしはマリアの意識
[T‐elos]KOS‐MOSの中のマリアが目覚めし今
[T‐elos]それを取り込む事で私は真なるマリアとして復活を果たす
[T‐elos]KOS‐MOSは仮の器に過ぎない
[シオン]マリアの意識───
[シオン]マリアの復活
[シオン]待って 彼女の復活に何の意味があるの
[シオン]ケビン先輩は 何をするつもりなの
[T‐elos]何も知らんのか
[T‐elos]鍵たるお前がマリアの巫女たるお前が
[T‐elos]マリアの復活は あの方の望み
[T‐elos]散逸する意識の収束
[T‐elos]魂の再生こそがマリアの使命
[T‐elos]マリアが使命を果たす時
[T‐elos]ツァラトゥストラは語り出す
[T‐elos]たとえ巫女であっても
[T‐elos]邪魔だてするならばただではおかない
[T‐elos]そう 怯えないで
[T‐elos]あの方の手前殺さぬ程度に加減はしてあげるから
[KOS‐MOS]大丈夫ですか シオン
[シオン]KOS‐MOS───
[シオン]貴方達は一体──
[KOS‐MOS]シオン 今の私はマリアであって マリアではない
[KOS‐MOS][意識/こころ]とは刻々とその形を変えるもの──
[KOS‐MOS]そうではなかったのですか
[シオン]でも T‐elosは貴方を取り込もうとしているわ
[シオン]そうなったら貴方は──
[KOS‐MOS]T‐elosとの統合に───真なるマリアとなる事に
[KOS‐MOS]何の意味があるのかは分からない
[KOS‐MOS]その使命が何をもたらすのかも分からない
[KOS‐MOS]ですが──
[T‐elos]不良品が 私に逆らうというの
[T‐elos]いつぞやのようにバラバラにされたいの
[KOS‐MOS]ですが T‐elos
[KOS‐MOS]貴方の“存在”が私の友に害を成すのであれば
[KOS‐MOS]私はそれを阻止します
[T‐elos]面白い 存分に楽しませて頂戴
[T‐elos]なるほど
[T‐elos]変わったのは見た目だけではないようね
[T‐elos]しかし その程度でこの私を止められると思わないでね
[T‐elos]KOS‐MOS
[KOS‐MOS]心配要りません シオン
[シオン]でも あの攻撃は
[KOS‐MOS]この躯体は貴方が設計したものです
[KOS‐MOS]T‐elosなどに後れは取りません
[T‐elos]ほざくな 機械人形
[T‐elos]この地上から消え失せろ
[シオン]KOS‐MOS 避けて
[シオン]KOS‐MOS
[T‐elos]───片手で相殺した
[T‐elos]嘗められたものね
[T‐elos]けどね 私の真の力はこんなものではない
[KOS‐MOS]シオン 離れていて下さい
[T‐elos]KOS‐MOS
[T‐elos]消し飛べ
[T‐elos]な に───
[KOS‐MOS]残念ですが T‐elos
[KOS‐MOS]これで お別れです
[ジン]T‐elosの体と共鳴している
[ジギー]気を付けろ
[ジギー]何が起きるか分からんぞ
[シオン]KOS‐MOS
[シオン]KOS‐MOS───
[シオン]大丈夫 KOS‐MOS
[KOS‐MOS]シオン──
[KOS‐MOS]ありがとう
[KOS‐MOS]心配は要りませんシオン
[KOS‐MOS]大丈夫です
[ヴィルヘルム]ついにきたね、この瞬間が。
[ヴィルヘルム]マリアは目覚めた。
[ヴィルヘルム]彼女はすべての意識をこのツァラトゥストラへと導く。
[ヴィルヘルム]後は、彼女が鍵を差し込むだけだ。
[ケビン]────
[ヴィルヘルム]不安かい?
[ヴィルヘルム]T‐elosではなく、KOS-MOSによる目覚め。
[ヴィルヘルム]君のシナリオにはなかった展開だ。
[ケビン]いいえ、何の問題もありません。
[ケビン]マリアも、シオンもすべては我々の手の内にあります。
[マシューズ]星団全域でグノーシス現象だって!?どういうこった!?
[ハマー]わかんないッスよ。
[ハマー]つい今し方まで、ゲダルヤから全帯域で警告が発せられてたんスから。
[ハマー]そのゲダルヤとも連絡とれなくなっちゃって!
[マシューズ]他の星系との連絡は取れないのか!?
[ハマー]すでに8割以上の星系との音信が不通になってるッス!
[シェリィ]船長。U.M.N.内をもの凄いスピードで何かのコードが進行中です。
[シェリィ]もしかして原因はこれでは?
[ユリ]ちょっと見せて。
[ユリ]これは──レメゲトン!?
[ユリ]いえ、似ているけれど違うわ。もっと何か別の──
[シオン]これは───何が起きてるの?
[モモ]グノーシスが──ものすごい数のグノーシスが、ミクタムに集まっています!
[Jr.]──そうか、分かった。
[Jr.]エルザから報告だ。星団全域でグノーシス現象が発生中らしい。
[Jr.]すでに8割以上の宙域との連絡が途絶したって話だ。
[シオン]なんですって!?
[KOS-MOS]私が目覚めた事で、この惑星が本来の機能を取り戻したのです。
[シオン]その機能のせいでグノーシスが?
[ケイオス]そう。マリアを信奉する者達が、
[ケイオス]ロスト.エルサレムから持ち出した、神の遺物の一つ、ツァラトゥストラ。
[ケイオス]神がマリアに与えた選択肢。この宇宙の姿を変える為の力。
[ケイオス]でも、最終的な力の行使には、鍵が必要なんだ。
[シオン]カギ?
[ケイオス]君の持つ、そのペンダント。
[ケイオス]彼は、この日の為にそのペンダントを君に託したんだよ。
[シオン]!
[KOS-MOS]シオン彼はこの先であなたを待っています。
[KOS-MOS]しかし、あなたにはまだ迷いがある。今の状態で、彼に会えば自分を見失うかもしれない。
[シオン]KOS-MOS───いえマリア。あなたは自分を取り戻す事ができたのでしょう。
[シオン]それは、どんな気持ちなのかしら?
[シオン]あなたの言うとおり、私は迷ってる。
[シオン]自分がどこに立っているのかさえ分からないもの。
[シオン]でも───だからこそ彼に会いたい。
[KOS-MOS]行きましょう。ケビンが待っています。
[シオン]ケビン先輩───!
[ケビン]───シオン。
[ケビン]マリアも一緒だね。歓迎するよ。
[シオン]ケビン先輩?あの、私──
[ケビン]わかっている、不安なんだろ?
[ケビン]自分が何をなすべきか、自分自身が何者なのか?自分の居場所がどこなのか?
[ケビン]もう怯える必要はない。僕がその答えを与えてあげよう。
[シオン]先輩───
[ケビン]かつて僕も、君と同じ思いを抱いていた。
[ケビン]この星が滅んだ時に、何もかも失い、自分自身さえ見失っていた。
[ケビン]その時、あの方が僕の前に現れたのだ。
[ケイオス]ヴィルヘルム、だね───
[Jr.]ヴィルヘルムだって?まさか、あのヴェクターのCEOのか!?
[ケビン]あの方は、幼い僕にこう告げた。
[ヴィルヘルム]ある事象がきっかけとなり世界は滅びの道を步んでいる。
[ヴィルヘルム]ゆっくりと、だが確実にこの宇宙は崩壊している。
[ヴィルヘルム]それは誰にも、そう神の力を持ったとしても止める事はできないだろう。
[ケビン]宇宙がなくなっちゃうの?
[ヴィルヘルム]でも、嘆く事はない。この宇宙を救う、たった一つの方法がある。
[ケビン]それが、えーごーかいき?
[ヴィルヘルム]いずれ滅ぶ運命ならば、ある時点でその歴史を閉じ、再び最初からやり直す。
[ヴィルヘルム]そう、永遠に繰り返させるんだ。
[ヴィルヘルム]君はこの世界をどう思う?
[ヴィルヘルム]君を絶望の淵に追いやった世界を、どうしたい?
[ケビン]僕は───世界が憎い。こんな宇宙なんかなくなっちゃえばいいんだ。
[ケビン]そして、新しい世界で母さんと暮らすんだ。
[ヴィルヘルム]いい返事だ。君はその望みを叶えるといい。
[ヴィルヘルム]喜んでその手伝いをさせてもらうよ。ケビン.ウィニコット。
[ケビン]あの方は、ロスト.エルサレムが失われる前から着々と準備をしていた。
[ケビン]オルムスもヴェクターも連邦さえも、その全てが彼の意志の下に存在したんだ。
[ケビン]その後、僕はヨアキム.ミズラヒの助手として、
[ケビン]ゾハルの研究チームに参加した。
[ケビン]来るべき日に備える為にね。
[ケビン]そして、マリアを覚醒させる為に、その器たるKOS-MOSを創った。
[ケビン]U.M.N.に散逸していたマリアの意識を宿し、シオン、君に託した。
[ジン]すべてが計画通りというわけですか?胸の悪くなる話ですね。
[Jr.]聞いただろ、シオン。こいつは、すべて計算ずくだったんだ。
[Jr.]お前も利用されていただけなんだよ!
[シオン]先輩───あの時、先輩が死んだのもすべて演技だったというの?
[ケビン]演技ではない───あの時、僕は確かに死んだ。
[ケビン]力を得る為に、肉体を捨てる必要があった。
[ケビン]マリアの目覚めの為、君の前から姿を消す事により、
[ケビン]君とKOS-MOSの絆を深める必要があったのだ。
[シオン]そんな───
[Jr.]ざけんじゃねぇよ!てめぇのやってきた事は全部嘘っぱちじゃねぇか!
[Jr.]たいした詐欺師ぶりだぜ。
[ケビン]シオン、君にはすまない事をしたと思っている。だが、わかってほしい。
[ケビン]君と世界を救う為にはこうする他なかった。
[ケビン]この力があれば、君を死の恐怖から解放する事ができる。
[ケビン]君と永遠を過ごす事ができるんだよ。
[ケビン]君を助けたいんだシオン───
[シオン]ケビン先輩───
[アレン]なんだよ。なんですか、それ?
[シオン]アレン君───?
[アレン]綺麗事ばかりならべて結局は主任を利用していただけじゃないですか!
[ケビン]彼女の命を守るためだ。
[アレン]命を救う為だからって、何をやっても許されるわけではないでしょう?
[アレン]主任の気持ちは無視しても構わないっていう事ですか?
[アレン]僕はそんなやり方、絶対許せない!
[ケビン]許せない?許しを請う必要があるのか?
[ケビン]このままでは彼女は確実に死ぬ。君はシオンの死を受け入れるというのか?
[ケビン]苦しむシオンを見捨てるというのか?
[アレン]そんな───それは───でも!
[ケビン]話にならないな。激情だけで、世界が救えるのであれば誰も苦労はしない。
[ケビン]さぁ来るんだ、シオン。
[ケビン]君は十分に頑張った。これ以上、自分を犠牲にする必要はないよ。
[ケビン]自分の幸せを考えればいいんだ。
[ケビン]わかっているだろう?そこに君の居場所はない。
[シオン]────
[アレン]主任、行っちゃダメだ!
[Jr.]このやろう!これ以上、シオンにちょっかい出すんじゃねぇよ!
[シオン]やめて、この人を傷つけないで。
[Jr.]シオン?お前、マジかよ───
[ジン]シオン───
[シオン]兄さん───?
[ジン]シオン あなたにだって、彼の成そうとしている事が理解できるはずです。
[ジン]彼の心には影がある。それを知ってなお、行くつもりなのですか?
[シオン]わからない。どうすればいいのかわからないの。
[シオン]もう、疲れたの。私は楽になりたいの。
[シオン]兄さん達は助けてくれなかったじゃない。
[シオン]彼は、ケビン先輩だけが私の居場所を用意してくれたわ。
[ジン]シオン───みな、お前が不幸になる事など望んではいない。
[ジン]それがわからないのですか?
[シオン]わかるわよ。でもだからイヤなの!同情なんてたくさんよ。
[シオン]何よ、いまさら。兄さんだって、人の気持ちを理解してないじゃない。
[シオン]もし理解していたら、ペレグリーだって死なずにすんだかもしれないわ!
[Jr.]シオン!
[アレン]主任、それは違います!
[ジン]本気なのですね シオン
[シオン]ええ 正気よ
[シオン]私は彼と共に行くわ
[シオン]もう 邪魔しないで
[ジン]分かりました
[Jr.]やめろ ジン
[ジン]どんな事態になろうとも
[ジン]私はこの世界を救う努力をするつもりです
[ジン]貴方も その覚悟で望みなさい
[アレン]ジンさん
[Jr.]シオン バカな事はやめろ
[Jr.]今ならまだ間に合う
[モモ]そうですよ シオンさん
[モモ]戻って来て下さい
[シオン]────ごめん
[Jr.]シオン
[ケビン]いい加減にしたらどうだ
[ケビン]シオンは自ら決断した
[ケビン]君達の出番は終わったのだ
[ケビン]大人しく神の語る言葉に耳を傾けたまえ
[Jr.]ふざけやがってぇ
[Jr.]おい シオン
[Jr.]てめぇがそのつもりなら遠慮はしねぇ
[Jr.]殴り倒してでも 連れて帰るぜ
[アレン]やめるんです!もう、やめてくださいよ!
[Jr.]どくんだ、アレン!
[ジン]そうです、邪魔をしないでもらいたい。
[アレン]いやです、退きません!
[アレン]主任も、みんなも、正気じゃない。
[アレン]こんな戦いに何の意味があるんですか!
[アレン]もう沢山だ!僕は、こんな無意味な事をしに来たわけじゃない!
[アレン]この宇宙を守る為、みんなで生き残る為に、必死で戦ってるんでしょう!?
[ケビン]まだわからないのか?力無き者の叫びなど、それこそ無意味だ。
[ケビン]君の声など誰にも届きはしない。
[アレン]いい加減にしろ、ケビン!
[アレン]あんたが、あんた達だけが、この世界を救えるとでも言うのか!
[アレン]僕達では、それができないっていうのか!
[ケビン]そのとおりだ。君達に、この宇宙もシオンも、救う事はできない。
[アレン]そんな事はない!
[アレン]ここにいる誰もが、決意を持ってこの戦いに望んでいる。
[アレン]その決意を笑う事など誰にもできないだろう!
[ケビン]決意?テスタメントである我らには、決意がないと言うのか?
[アレン]そうだ!あんた達は、人として生きる自信がなくなったから、逃げただけじゃないのか!?
[アレン]死ぬのが怖かったから、弱い自分が許せなかったから、
[アレン]バージルもヴォイジャーもユーリエフも、オルムスの連中だって、
[アレン]ただ、つらい現実から逃げようとしていただけじゃないか!
[アレン]テスタメントの力?
[アレン]そんな大層な力を得て、あんたらのしようとしている事は、ただの逃避じゃないか!
[ケビン]ならば、君にはその決意があるのか?
[ケビン]なんの力も持たない君に、
[ケビン]愛する女一人、モノにできぬ男に、どんな決意がある!
[アレン]そうだよ、僕は弱い人間だ。
[アレン]あんたらから見れば、なんの力も無いちっぽけな存在だろう。
[アレン]でも、僕は主任を置いて逃げる事なんかしない!
[アレン]この場に踏ん張って、かならず主任を救って見せる!
[ケビン]なるほど、よくわかった。
[シオン]アレン君
[ケビン]どうした
[ケビン]踏ん張るのではないのか
[ケビン]その惨めな姿は何だ
[ケビン]それで シオンを救えると言うのか
[シオン]やめて
[ケビン]シオン
[シオン]彼の事は放っておいて
[シオン]もう 立ち上がる力さえ残っていない
[シオン]もう 何も出来ないじゃない
[ケビン]情けないな アレン
[ケビン]愛する者に哀れみを受ける気持ちは
[ケビン]そうまでしてシオンの同情を引きたいのか
[アレン]同情だって
[アレン]貴方には主任の苦しみが理解出来ないのか
[アレン]僕には 解る
[アレン]主任の悲しみ 苦しみ
[アレン]今まで 一人で
[アレン]それでも必死に頑張って来た主任の気持ちが
[アレン]主任がどれだけ傷ついたのか解らないんだろ
[アレン]どんなに苦しんだのか貴方には解らないんだ
[アレン]主任が 泣いていたのも知らないんだろ
[シオン]もう止めて アレン君
[シオン]もう十分よ
[シオン]どうして貴方がそんな目に遭わなきゃいけないの
[アレン]僕は主任の代わりに泣きたいと思った
[アレン]主任の傷みを感じたいと思った
[アレン]僕は
[アレン]主任と一緒に生きて行きたいと思った
[アレン]僕の力は大した事ないかもしれないけど
[アレン]僕は主任の為になら 何だって出来る
[ケビン]僕の手からシオンを取り戻せると
[ケビン]当のシオンはその気持ちを迷惑に思っているかもしれないぞ
[アレン]それでも 構わないさ
[アレン]あんたの言う通り 僕は情けない男だ
[アレン]ずっと 遠くで見守る事しか出来なかった
[アレン]ずっとそうだったから
[アレン]でも 僕は決して主任を一人になんかしない
[アレン]逃げる事しか出来ない貴方なんかに負けはしない
[アレン]必ずシオンを連れて帰る
[ケビン]分かった
[ケビン]その願い
[ケビン]聞き届けてやろう
[シオン]アレン君
[ケビン]マリア
[KOS‐MOS]もう少しです アレン
[アレン]KOS‐MOS
[KOS‐MOS]私にも 貴方の気持ちが理解出来ます
[KOS‐MOS]貴方の傷みを
[KOS‐MOS]シオンの傷みを感じ取ることが出来ます
[アレン]KOS‐MOS───お前
[KOS‐MOS]行きましょう アレン
[KOS‐MOS]シオンの下に
[シオン]やめて
[シオン]どうして貴方までそんな事をするの
[ケビン]何のつもりだ マリア
[ケビン]それが お前の意志か
[ケビン]あの方に逆らう事になるのだぞ
[KOS‐MOS]私が守るべきはシオンです
[KOS‐MOS]あの方の意志は関係ありません
[ケビン]やはり お前は失敗だったのだ
[ケビン]お前の中に宿したマリアの意識は変化し
[ケビン]本来のマリアとは 別の意識として覚醒してしまった
[KOS‐MOS]教えて下さい シオン
[KOS‐MOS]皆を裏切る事になって本当に構わないのですか
[KOS‐MOS]貴方はこの状況を哀しいとは感じないのですか
[ケビン]下がれ マリア
[シオン]───ケビン
[シオン]私は 貴方と一緒に居られればそれで良かった
[シオン]たとえ利用されていようと騙されていようと
[シオン]貴方の側に居られるならそれでもいいと思った
[シオン]でも───
[シオン]それって 違うよね
[シオン]他人を犠牲にしてまでそれを望むなんて 間違ってるよ
[シオン]そんなことをして過去に逃げたとしても
[シオン]この惨めな自分を繰り返すだけなのよ
[ケビン]何を言い出すんだ シオン
[シオン]貴方の事は 好きよ
[シオン]きっと 貴方と一緒に居れば幸せになれるのかもしれない
[シオン]でも 私だけ幸せになるのは耐えられない
[シオン]みんなと共有出来ないのであれば幸せになる意味はない
[シオン]もう 一人になるのはイヤなの
[ケビン]馬鹿な
[ケビン]シオン───
[ケビン]僕の下を去ると言うのかい
[ケビン]私に決めろと言うなら
[シオン]私はもう迷わない
[シオン]みんなと共に この宇宙を救う
[ケビン]シオン
[ケビン]僕の言う事を聞くんだ
[ケビン]僕の言う事を受け入れろ
[ケビン]拒絶すれば 君は確実に───
[シオン]ケビン
[シオン]貴方とは 一緒に居られない
[シオン]私は貴方の道具じゃない
[ケビン]そうか
[ケビン]だが みすみす君を手放すつもりはない
[ケビン]君を惑わす全てを
[ケビン]この場で排除させてもらおう
[ケビン]何故だ、それが君の意志だというのか?
[ケビン]これが、本当に君の望んだ結果なのか!?
[シオン]ケビン────
[ケビン]シオン、君は困惑している。
[ケビン]今の君は、自分の置かれた立場を冷静に判断する事ができていない。
[シオン]もう、やめて!お願い、貴方とは戦いたくない!
[ケビン]シオン───僕だって君を傷つけたくは無い。
[ケビン]なぜ、僕のこの気持ちを理解できないのだ!?
[ヴィルヘルム]下がりたまえ、ケビン.ウィニコット。時間切れだ。
[ケイオス]ヴィルヘルム!
[ヴィルヘルム]どうやら僕は、君を過大評価しすぎていたようだね。ケビン。
[ケビン]────
[シオン]ケビン!
[モモ]見て下さい
[モモ]あそこ
[シオン]あれは──
[シオン]アベル
[シオン]私たちのE.S.が
[ジン]馬鹿な
[ジン]どうやって転送を
[ヴィルヘルム]これ以上君達に預けておくと
[ヴィルヘルム]大変な事になりそうなんでね
[ヴィルヘルム]それぞれの覚醒も済んでいるようだし
[ヴィルヘルム]回収させて貰うよ
[ヴィルヘルム]いいだろう イェオーシュア
[ジン]こ、これは──
[Jr.]なんだよこれ!?
[シオン]これが、ツァラトゥストラ───?こんな巨大なモノが!?
[ヴィルヘルム]シオン。君の意志の強さ、期待以上だ。巫女として申し分ない。
[ヴィルヘルム]君の力を、利用させてもらうよ。
[ケビン]お待ちください。シオンはまだ───
[ヴィルヘルム]下がれと言ったろう、ケビン。KOS-MOSは失敗し、T‐elosも失った。
[ヴィルヘルム]鍵を持つ巫女さえも、君の下から去ったのだ。
[ヴィルヘルム]いい加減、わきまえたまえ。君は役目を果たす事が出来なかったんだよ。
[ケビン]───
[ジギー]お前がヴィルヘルムか?ヴェクターのCEOが何故ここに?
[ヴィルヘルム]確かに、それは僕を定義する言葉の一つだ。
[ヴィルヘルム]だが、人は言葉によりさまざまな形に変化する。
[ヴィルヘルム]ヴェクターのCEO、ハイアムズの代表、オルムスの教皇。連邦枢機院議長。
[ヴィルヘルム]そのどれも、僕を定義する言葉の一つに過ぎない。
[ヴィルヘルム]そのどれもが、僕を定義し、だが、そのどれもが僕ではない。
[ヴィルヘルム]僕を定義できるのは今のところ君だけだよ、イェオーシュア。
[ケイオス]────
[ヴィルヘルム]さて、シオン。
[ヴィルヘルム]───君の持つ鍵で、このツァラトゥストラを起動してもらいたいのだが───
[シオン]私に、そのつもりはないわ!
[ヴィルヘルム]だろうね。君は彼との時間を取り戻すよりも、愚かにも自らの死を選択した。
[ヴィルヘルム]限りある命の尊さ、滅びの美学、
[ヴィルヘルム]そんなナルシズムに陶酔している。
[ヴィルヘルム]実に人間らしい選択だ。
[ヴィルヘルム]だが残念な事に、僕にとって君の命など、この際どうでもいいのだ。
[ヴィルヘルム]必要なのは巫女としての能力と鍵、
[ヴィルヘルム]そしてマリアだ。
[ヴィルヘルム]困惑しているかな。
[ヴィルヘルム]このツァラトゥストラはね、
[ヴィルヘルム]太古の人間が神の世界へと昇るために創りだした、システムの一つなんだ。
[ヴィルヘルム]その担い手はマリア。そしてその力の源は君だったね、イェオーシュア。
[ヴィルヘルム]だけど、それは思うようにはならなかった。
[ヴィルヘルム]神は人の行為を許そうとはしなかったんだ。
[ヴィルヘルム]だから僕はこれにある役割を与える事にした。宇宙を崩壊から防ぐ目的で。
[ヴィルヘルム]そう、イェオーシュア、“君がもたらす”崩壊からね。
[シオン]ケイオス君──?あなたは──
[ヴィルヘルム]この宇宙を構成する全ては、集合的無意識でつながっている。
[ヴィルヘルム]その集合的無意識に働きかけ、全てを虚時間の流れへと送り込み、
[ヴィルヘルム]全てをゼロから“やり直す”。
[ヴィルヘルム]僕が与えた、永遠の連環“ツァラトゥストラ”の配役さ。
[ヴィルヘルム]ウ.ドゥは神そのものだ。
[ヴィルヘルム]そのウ.ドゥの下位領域の観測端末として存在する“二人のアベル”。
[ヴィルヘルム]僕達の世界の存続の為、そんなモノは封じ込めなければならない。
[ヴィルヘルム]神の目を封じ込め、この世界への干渉をなくし、
[ヴィルヘルム]ツァラトゥストラによる意識の回帰を成す。
[ヴィルヘルム]それこそが僕が存在する理由。
[ヴィルヘルム]シオン、巫女の君が鍵を使う事により、
[ヴィルヘルム]マリアは宇宙全体の意識を、このツァラトゥストラへと導く事ができるのさ。
[シオン]無駄よ、私はこんなシステムを動かすつもりはないわ!
[シオン]第一、人がそんな事を望むわけはない。
[シオン]みんな、今を生きる為に戦っているのよ!
[ヴィルヘルム]そうかな?すでに数多くの意識が、自ら望んでここに集まりつつある。
[ヴィルヘルム]そのすべてが、今の世界を拒絶し、在りし日の姿を切望しているんだよ。
[シオン]そんな───すべての人が世界を拒絶しているなんて、そんな事あり得るわけが───
[ジン]グノーシスか!
[ヴィルヘルム]そう。グノーシスとは、他者を、世界を拒絶した、人の形。
[ヴィルヘルム]彼らが求めるモノは救いだ。
[ヴィルヘルム]このまま孤独に支配され消え去るくらいなら、全てを原点へ。
[ヴィルヘルム]彼らの求めるものを僕は与えよう、マリアと共に。永劫回帰を!
[ヴィルヘルム]納得してもらえたかな?
[シオン]ふざけないで、イヤよ、私はあなたの思い通りになんかならないわ!
[ヴィルヘルム]そうか、残念だよ。僕はケビンほど優しくはないからね。
[ジン]シオン
[トニー]やめろ
[トニー]シオンに何をする
[ヴィルヘルム]言っただろう
[ヴィルヘルム]僕は彼女がどうなろうと構わないんだ
[ヴィルヘルム]彼女が 鍵を使う事を望めばいいだけの事
[ヴィルヘルム]たとえ 無理矢理であってもね
[ヴィルヘルム]強情だね。いつまで、耐えられるのかな?
[シオン]うあぁぁあああああ!
[アレン]主任!!
[アレン]やめろ!やめてくれ!このままじゃ主任が!
[アレン]KOS-MOS!主任を、早く主任を!
[KOS-MOS]シオン───
[ヴィルヘルム]マリア、手を出す事は許さないよ。いいね。
[KOS-MOS]────
[アレン]どうしたんだよKOS-MOS!?早く主任を!
[ヴィルヘルム]無駄だ マリアは理解している。この宇宙を救うにはどうすればいいのかをね。
[シオン]うわぁああああああ!
[シオン]ケビン先輩───
[ケビン]大丈夫だよ シオン
[シオン]ケビン──先輩
[シオン]そこに───居るの
[シオン]ケビン先輩───助け─て
[ヴィルヘルム]!
[シオン]先輩───!?
[ヴィルヘルム]ケビン。君は、これで満足なのかな?
[ケビン]!?
[ヴィルヘルム]何を驚く?すべては予定されていた事。君が僕を裏切る事もね。
[ケビン]気づいていたのか?
[ヴィルヘルム]当然だ。君の望むものは、この宇宙の秩序ではなく、単なる我執にすぎない。
[ヴィルヘルム]愛し合う二人の為の永遠の世界。
[ケビン]そうだ、この世界などに未練はない。だが、シオンを失うわけにはいかない!
[ヴィルヘルム]愛か?くだらないね。そんなものに何の価値もないよ。
[ケビン]く!
[シオン]いやぁあああああ!
[ヴィルヘルム](シオン/かのじょ)の苦痛を感じられて幸せだろう?ケビン。
[ヴィルヘルム]さて、シオンどうだろう、その気になってくれたかな?
[シオン]い───や!
[ヴィルヘルム]まったく、強情だ。
[ヴィルヘルム]では、こんな方法はどうだろう?
[ヴィルヘルム]マリア、シオンをここにつれて来るんだ。
[KOS-MOS]────
[ヴィルヘルム]どうしたんだい?
[ヴィルヘルム]このままでは、シオンは苦しみ続ける。死ぬ事も許されず永遠にね。
[ヴィルヘルム]彼女を解放できるのは君だけだ。
[シオン]ダメよ───、KOS-MOS彼の言いなりになってはダメ。
[ヴィルヘルム]いいのかい?君も、シオンを失いたくはないだろう?
[シオン]うわぁああああああ!
[KOS‐MOS]シオン───
[アレン]ダメだ KOS‐MOS
[ケビン]やめるんだ マリア
[シオン]やめて───
[ヴィルヘルム]そうだ 君は僕に逆らう事は出来ない
[ヴィルヘルム]君がアニマを封印した時から
[ヴィルヘルム]運命は決まっていた
[ヴィルヘルム]どうだい シオン
[ヴィルヘルム]信じていた者に 裏切られた感想は
[ヴィルヘルム]マリアは君を救う為に
[ヴィルヘルム]君の意志を無視してツァラトゥストラを起動するつもりだよ
[シオン]そんな───
[ヴィルヘルム]それでいい
[ヴィルヘルム]これで 僕達は永遠を生きる事が出来るんだ
[シオン]KOS‐MOS───
[ヴィルヘルム]何をする マリア
[ヴィルヘルム]馬鹿な そんな事をすれば
[ヴィルヘルム]この宇宙は崩壊するしかない
[ヴィルヘルム]イェオーシュアとて消滅するのだぞ
[ヴィルヘルム]マリア 君がそれを望むというのか
[KOS‐MOS]私はマリアではありません
[KOS‐MOS]私は───KOS‐MOSです
[ケビン]───もう、終わりにしましょう、ヴィルヘルム。
[ヴィルヘルム]ほう、自らを盾にして彼女を守ろうというのか?
[シオン]ケビン先輩!
[ケビン]我々は拒絶されたのだ。この世界から、彼女達から。
[ヴィルヘルム]人間が、たかが人間が僕を拒絶する?そんな事ありえるはずがない。
[ヴィルヘルム]彼らは理解していないのだ、この世界の危うさが。
[ヴィルヘルム]細い糸の上に立つ、脆弱なる世界───
[ヴィルヘルム]バランスを崩せば、すべて無に帰す事を。
[ケビン]理解していないのは我々です。
[ケビン]彼らは、自らの道を自分の力で步もうとしている。
[ケビン]すべてを知った上で、その糸を渡りきると言っているのです。
[ヴィルヘルム]そんな事、できるわけが無い。
[ケイオス]そうかな僕は可能だと思うよ。
[シオン]ケイオス君?
[ヴィルヘルム]イェオーシュア君がそんな事を言うとは意外だね。
[ケイオス]君が考えている以上に、この世界は柔軟にできている。
[ケイオス]現に今、この世界全体に揺らぎが広がり始めているんだ。
[ヴィルヘルム]君が、その力を解放するとでも言うのか?
[ヴィルヘルム]君はこの宇宙に施された“フェイルセイフ”だ。
[ヴィルヘルム]その君が力を解放すれば、揺らぎがどうのと言っている状態ではなくなるぞ。
[ヴィルヘルム]それにもはや、“彼らの(意識/こころ)”を抑える事などできない。
[ケイオス]僕一人ではね。でも、僕は一人じゃない。
[ヴィルヘルム]そうか──ここにきて、自らの運命に立ち向かおうというのか?
[ヴィルヘルム]興味深い決断だが───残念だ。
[ヴィルヘルム]少々遅かったようだよ。
[シオン]これは───
[ヴィルヘルム]ツァラトゥストラは暴走を始めた
[ヴィルヘルム]この状態が続けばいずれこの宇宙は拡散し完全に消滅する
[ケビン]今すぐ システムを止めるんだ
[ヴィルヘルム]止めてどうしようと言うんだ
[ヴィルヘルム]この行き場のない巨大なエネルギーを
[ヴィルヘルム]人々の拒絶しあう[意識/こころ]をどうする
[ヴィルヘルム]君達が癒せるとでも言うのか
[ヴィルヘルム]世界を始まりに戻すしかないんだよ
[ヴィルヘルム]“これまでそうしてきた”ように──
[ヴィルヘルム]さぁ マリア
[ヴィルヘルム]彼らの[意識/こころ]を過去へと導くんだ
[ヴィルヘルム]それ以外にこの世界を救う術はない
[ヴィルヘルム]何をするつもりだ
[ケビン]悪いが これ以上
[ケビン]貴方の好きにはさせない───
[ヴィルヘルム]愚かな事を───
[ヴィルヘルム]いいのかい そんな事を続ければ
[ヴィルヘルム]君の体はこの世界から消滅してしまうのだよ
[ケビン]消滅するのは私だけではない
[ケビン]貴方もだ ヴィルヘルム
[ヴィルヘルム]なるほど 覚悟の上か───
[シオン]ケビン先輩
[ケビン]シオン
[ケビン]システムのエネルギーは僕が抑えている
[ケビン]今のうちに早くツァラトゥストラを破壊するんだ───
[シオン]でも 先輩が───
[ケビン]僕の事は気にしなくていい
[ケビン]それよりも システムだ
[ケビン]君達がシステムを止めなくては意味がない
[ケイオス]シオン
[ケイオス]彼の言う通りだ
[ケイオス]未来は定められたモノではない
[ケイオス]君達の意志の力で
[ケイオス]君達が望む未来に変えるんだ
[ヴィルヘルム]解っているのか イェオーシュア
[ヴィルヘルム]アベルはシステムのコントロール下にある
[ヴィルヘルム]それを司るこの僕が消えれば
[ヴィルヘルム]世界は この宇宙は──
[ケビン]君の言う通りかもしれない
[ケビン]だけど僕は 人の[意識/こころ]の輝きを信じたい
[ヴィルヘルム]それが 君の答えなのか──
[ヴィルヘルム]君らしいよ
[ヴィルヘルム]イェオーシュア──
[シオン]───ケビン先輩
[ケビン]最初から望んでいたのかもしれない
[ケビン]君に初めて出会った あの日から
[ケビン]今日が訪れる事を
[ケビン]すまない シオン
[ケビン]僕は 君を──
[シオン]伝わってるよ 貴方の想い
[シオン]その全てが この中に託されていた事
[ケビン]シオン──
[シオン]貴方と私が咲かせた 大切な思い出──
[シオン]ありがとう ケビン
[シオン]貴方のおかげでこれまで歩いて来られた
[シオン]そして これからも──
[ケビン]そうか
[ケビン]もう 大丈夫だね
[ケビン]最後に君の笑顔が見られて良かった
[ケビン]頑張れよ
[ケビン]世界が 君を待っている
[シオン]先輩───
[シオン]ケビン先輩
[シオン]さようなら
[ジギー]どういう事だ
[ジギー]システムの暴走が止まらないぞ
[Jr.]くそぉ
[Jr.]この世界は終わるしかないのかよ
[ケイオス]大丈夫
[ネピリム]──そう
[ネピリム]それが貴方の願いなのね
[シオン]ネピリム!
[ケイオス]決まったようだね?
[ネピリム]ええ。
[シオン]?
[ネピリム]今のこの現象は、行き場を無くしたツァラトゥストラに集められた人々の意識──
[ネピリム]グノーシス達が、引き起こしているものなの。
[ネピリム]私は、アベルと共にその意識達全てを私の中に集め、
[ネピリム]この宙域ごと、原初の地へと領域シフトさせます。
[シオン]原初の地?
[ネピリム]ロスト.エルサレム──かつて地球と呼ばれた惑星よ。
[シオン]地球──私達の故郷。
[ネピリム]今の私達には、加速する宇宙の散逸現象──
[ネピリム]宇宙の本当の崩壊は止められない。
[ネピリム]でも、(心/いしき)の輝きがもたらす可能性は無限よ。
[ネピリム]あなた達が、人々が、想いを積み上げていく(時間/とき)さえあれば、もしかしたら。
[シオン]その(時間/とき)をあなたが作ってくれるの──?
[ネピリム]ええ、私とアベルと──
[ケイオス]シオン───この宇宙を崩壊へと導いたのは君じゃない。
[ケイオス]僕が存在したその時から、この僕のアニマの力が、
[ケイオス]宇宙を崩壊の道へと步ませてしまったんだ。
[シオン]アニマの力───?
[ケイオス]マリアは宇宙の崩壊を防ぎ、僕を救う為、
[ケイオス]アニマの力を器として分断、封印し、その命を落とした。
[ケイオス]彼女に封印された僕は、力を失い、ただ傍観するだけの存在となった。
[ケイオス](アニマ/このちから)にどういう意味があるのか、
[ケイオス]何の為にこの力があるのか、ずっと分からなかったんだ。
[ケイオス]でも、ようやく理解できた。僕のこの力を使う意味が。
[ケイオス]君が教えてくれた。
[シオン]ケイオス君──
[ケイオス]みんな、これからこの宙域は領域シフトする。
[ケイオス]残念だけど君達を逃がす力は、僕にはもう残っていない。
[ケイオス]宙域が崩壊する前に、なんとしても脱出してほしい。
[Jr.]脱出ってお前達はどうすんだよ!
[ケイオス]全ては流れのままに。
[ケイオス]また──逢えるさ。必ずね。
[Jr.]ケイオス、お前──
[モモ]ケイオスさん──
[シオン]ねぇ、この宇宙はどうなるの?
[ケイオス]大丈夫、僕達が消える事でこの宇宙の崩壊の速度が遅くなる。
[ケイオス]でも、崩壊そのものを止められるわけじゃない。
[ケイオス]遅くとも数万年後、確実にこの宇宙は崩壊するだろう。
[ケイオス]いいかい、シオン全てを救う鍵は原初の地──ロスト.エルサレムに眠っている。
[ケイオス]僕も、(多くの人の意識/グノーシスたち)も、すべてがそこへと還る。
[ケイオス]人類が生き残る為、君達はこの宇宙で成すべき事を成し、
[ケイオス]そしてロスト.エルサレムを探しに来るんだ。
[ケイオス]君達になら、それができると信じている。
[シオン]折角 本当の貴方と再会出来たのに──
[シオン]また 離ればなれになっちゃうんだね
[KOS‐MOS]宇宙の時の流れに比べればほんの僅かの間です
[KOS‐MOS]きっと また逢えます
[KOS‐MOS]だから悲しまないで シオン
[シオン]貴方らしくない 曖昧な言い方ね
[KOS‐MOS]今の私らしい言い方だと思います
[KOS‐MOS]これも貴方のおかげです
[KOS‐MOS]シオン
[KOS‐MOS]ありがとう
[シオン]──ううん 私の方こそ
[シオン]今までありがとう KOS‐MOS
[KOS‐MOS]行ってきます
[シオン]行ってらっしゃい
[ケイオス]さぁ 始めよう
[ケイオス]KOS‐MOS
[ケイオス]僕の力を解放して
[KOS‐MOS]分かりました イェオーシュア
[ネピリム]彷徨える意識達よ
[ネピリム]我が内なる揺りかごへ──
[シオン]どういうこと
[シオン]グノーシスが
[Jr.]ネピリムが集めているんじゃないのか
[ジギー]いや それにしては様子がおかしい
[モモ]嫌がっている──
[シオン]え
[モモ]あのグノーシス達は一つになることを拒絶しています
[モモ]ううん
[モモ]怖がっている
[シオン]そんな──
[シオン]それじゃあ ケイオス君達は
[シオン]兄さん 戻ってこのままだとケイオス君達が
[ジン]いけません
[ジン]彼らに託された私達の使命を忘れたのですか
[ジン]その為に彼らは残ったんです
[シオン]兄さん──
[Jr.]シオン 行こう
[Jr.]俺達は俺達でやるべき事がある
[Jr.]そうだろ
[ケイオス]やはり──
[ケイオス]全ての意識を導くことは無理なのか──
[ネピリム]領域シフトまでまだかかります
[ネピリム]KOS-MOS
[ネピリム]それまでの間 ここを守って下さい
[KOS-MOS]了解しました
[Jr.]よしっ
[Jr.]あそこまで行けばエルザまであと少しだ
[シオン]兄さん
[Jr.]おい まさか
[ジン]さすがにケイオス君やKOS‐MOSでも
[ジン]あの数のグノーシスは対処し切れないでしょう
[ジン]アシェルに乗っている私が行けば少しは役に立てる
[シオン]そんな 一人で行くなんて無茶よ
[シオン]行くなら私達も
[ジン]シオン───
[ジン]お前にはまだやるべき事が残っているのでしょう
[シオン]ダメよ───
[シオン]兄さんが居てくれないと私一人じゃ 何も出来ないわよ
[ジン]何 情けない事を言ってるんです───
[ジン]貴方は一人ではない
[ジン]素晴らしい仲間が居るでしょう
[ジン]シオン
[ジン]私は決していい兄ではなかった
[ジン]お前に辛い思いばかりさせてきたね
[ジン]もっと もっと側に居てあげれば良かったと
[ジン]いつも後悔していたんです
[ジン]だから───
[ジン]最後ぐらい兄らしくさせて下さい
[シオン]どうして そんな事言うのよ
[シオン]今更 そんな事言うなんて卑怯じゃない
[シオン]悪いのは私だったのよ
[シオン]兄さんはいつも私の事を考えていてくれた
[シオン]分かってたの
[シオン]でも 私が素直じゃなかったから───
[シオン]恥ずかしくて 照れくさくて
[シオン]兄さんを遠ざけていたのは私の方なのよ
[シオン]兄さんに辛い思いをさせてたのは私の方なのよ
[シオン]ごめんなさい───兄さん
[シオン]ごめんなさい──
[ジン]何を謝る事があるんです
[ジン]お前は私にとって 素晴らしい妹だ
[ジン]お前は今まで辛い思いばかりして来た
[ジン]だからね
[ジン]今度は目一杯幸せになる権利がある
[シオン]兄さん───
[ジン]アレン君
[ジン]不束な妹ですが お願い致します
[アレン]ジンさん───
[ジン]なぁに
[ジン]いずれ逢えるってケイオス君達も言ってたでしょう
[ジン]それに 学究を信条とする私としては
[ジン]ロスト.エルサレムという地にいささか興味もある
[シオン]兄さん──
[ジン]では皆さん お達者で
[ジン]行ってきます
[シオン]兄さん──
[シオン]私 本当はね
[シオン]幸せだった
[シオン]兄さんの妹で本当に良かった
[シオン]だから
[シオン]だからね───
[シオン]ありがとう
[シオン]兄さん──
[ジン]──と 強がってはみたものの
[ジン]やはり臆病だな 私は
[ジン]さて 最後の一仕事
[ジン]頼みますよ アシェル
[ヴェクター研究員]ミクタムを発生源として
[ヴェクター研究員]宇宙全域のU.M.N.コラムが消滅していきます
[ヴェクター研究員]各宙域との通信途絶
[ヴェクター研究員]状況が掴めません
[ミユキ]何ですって
[ヴェクター研究員]もの凄いスピードだ
[ヴェクター研究員]このままだと全てのコラムが消滅するまで
[ヴェクター研究員]十分とかからんぞ
[ミユキ]先輩──
[トガシ]一体 あの場所で何が起こっているんだ
[Jr.]くそ
[Jr.]次から次へと 往生際の悪い
[Jr.]人の
[Jr.]親切は
[Jr.]素直に
[Jr.]受け取っとくもんだぜ
[Jr.]モモ 大丈夫か
[モモ]はいっ
[モモ]まだいけます
[シオン]エルザまであと少しよ
[シオン]みんな頑張って
[ジギー]シオン
[アレン]シオンは
[アレン]僕が
[アレン]守る
[シオン]アレン君──
[アレン]大丈夫
[アレン]立てるかい
[シオン]え ええ
[アレン]よし 行こう
[ケイオス]しまった
[ケイオス]ジンさん
[ジン]ここは 私達が
[ジン]だから急いで
[ケイオス]すみません
[ケイオス]お願いします
[マシューズ]ちび旦那
[マシューズ]良かった無事でしたか
[Jr.]船長 緊急発進だ
[Jr.]現宙域を離脱する
[マシューズ]了解
[マシューズ]──ってちょっと待った
[マシューズ]ケイオス達は
[Jr.]ケイオス達にはまだやるべき事がある
[Jr.]そして俺達もまだやるべき事がある
[Jr.]そういう訳さ
[マシューズ]そうですかい
[マシューズ]へっ アイツらしいや
[マシューズ]よしっ トニー エルザ急速発進
[トニー]アイサー
[トニー]行っくぜぇ
[ジン]KOS‐MOS
[ジン]まだまだぁっ
[ケイオス]ジンさん
[ジン]私は── 大丈夫です
[ジン]それより── 急いで
[ケイオス]はい
[ジン]静かだ──
[ジン]我が人生──思えばこれほど静かな時はなかったな──
[ジン]私はこれを求めていたのに──
[ジン]いざその時を迎えてみると
[ジン]かつての喧噪が──
[ジン]あの 目まぐるしく変化する日々が
[ジン]むしろ懐かしい──
[ジン]だが──
[ジン]こうしているのもまた──心地いい──
[ジン]一足先に行ってますよ──
[ジン]シオン──
[シオン]兄さん
[ネピリム]ケイオス
[ケイオス]ああ いつでも ネピリム
[ケイオス]さぁ ジンさん
[ケイオス]ジンさん──
[ケイオス]ありがとう
[ケイオス]こんな時に まだ
[ケイオス]KOS‐MOS──
[KOS‐MOS]シオン──
[KOS‐MOS]ありがとう
[KOS‐MOS]あの時 私は貴方を守れなかった
[KOS‐MOS]だから今度こそ
[KOS‐MOS]私は──
[KOS‐MOS]後の事は頼みます
[KOS‐MOS]シオン
[ケイオス]KOS‐MOS
[ネピリム]わが揺りかごに集いし意識達よ
[ネピリム]全ての始まりの場所 原初なる地へ
[ネピリム]いざ
[マシューズ]急げ
[マシューズ]巻き込まれるぞ
[ハマー]急げったって ただの一つもコラムが残ってないんスよ
[ハマー]いくらなんでも通常飛行じゃ
[マシューズ]四の五の言ってねぇで飛ばせ
[トニー]ロジカルドライブがもう限界だ
[トニー]これ以上は
[マシューズ]ぐ──
[マシューズ]くそう──
[マシューズ]残る手は“あれだけ”だが──
[シオン]ここまでなの──
[シオン]まだ私達にはやるべき事が──
[シオン]ケイオス君達から託された未来が──
[ケイオス]シオン──
[シオン]ケイオス君
[シオン]兄さん
[シオン]あれは──
[シオン]船長
[シオン]11時の方向
[シオン]あるわ コラムが
[シオン]まだ一つ残ってる
[マシューズ]んな馬鹿な
[マシューズ]コラムは全部消えちまってんだぜ
[モモ]待って下さい
[モモ]ありました
[モモ]消えかかってますが 一つだけ
[モモ]コラムパルス確かに探知されてます
[トニー]マジか
[シオン]ケイオス君よ
[シオン]ケイオス君達が守ってくれているのよ
[マシューズ]位置は
[モモ]座標 B03117
[モモ]すぐ近くです
[マシューズ]よしっ 進路変更
[マシューズ]座標 B03117
[トニー]アイサー
[モモ]コラムパルス有効領域まであと60
[Jr.]ちくしょう ここまでなのか
[マシューズ]ちび旦那
[マシューズ]ワーグナーって聴いた事ありますかい
[マシューズ]この船はローエングリン級航宙貨客船
[マシューズ]その姿 白鳥の騎士の如くってね
[マシューズ]トニー
[マシューズ]オーバーブースト
[トニー]アイサー
[モモ]有効領域まであと20
[ハマー]船長
[ハマー]転移先の座標は
[ハマー]このままだとどこに出るか分からないッスよ
[マシューズ]どこだろうと構わねぇ
[マシューズ]ここに居るよかマシだ
[モモ]有効領域まであと10
[モモ]9 8 7 6 5 4
[モモ]3 2 1 ──
[マシューズ]トニー
[トニー]行っけぇえええっ
[マシューズ]ここは───
[マシューズ]どこなんだ
[モモ]EPRレーダー消滅
[モモ]U.M.N.からの情報もありません
[モモ]場所の特定は不可能です
[アレン]まさか 宇宙の果て───
[マシューズ]何だ 通信か
[Jr.]馬鹿
[Jr.]U.M.N.が無くなって どうやって通信するんだよ
[ハマー]これ 電波方式の通信ッスよ
[ハマー]また アナクロな通信手段で───
[ジギー]応答出来るか
[モモ]はい やってみますね
[ミユキ]みんなぁ 生きてますかぁ
[ミユキ]せんぱぁい
[ミユキ]返事して下さいよぉ
[シオン]ミユキ
[アレン]ミユキちゃん
[ミユキ]そうですよぉ ミユキちゃんですよぉ
[マシューズ]おい あれ
[トニー]曙光だ
[ミユキ]せんぱぁい
[ミユキ]良かったぁ 生きてたんですねぇ
[シオン]まったく──
[シオン]あの娘ったら
[ユリ]もう 行くのね
[ユリ]手掛かりとなるのはY資料に残されていた断片的な情報だけ
[ユリ]しかも U.M.N.が消滅したことで
[ユリ]転移航法は使えず 移動は通常航法のみ
[ユリ]困難な旅になると思うけど──
[ユリ]でも 貴方達なら大丈夫ね
[シオン]ええ
[シオン]ケイオス君との約束ですから
[シオン]必ず ロスト?エルサレムへ辿り着いて見せます
[モモ]シオンさん
[モモ]モモ──
[モモ]モモもみんなと一緒に行きたい───
[シオン]ありがとう モモちゃん
[シオン]でも モモちゃんにもやる事があるじゃない
[シオン]スキエンティアと共同で
[シオン]新たなネットワークの構築を始めてるんでしょ
[シオン]しっかり頑張って
[モモ]はい
[モモ]シオンさんも──
[モモ]Jr.さんも──
[Jr.]ああ──
[Jr.]モモ ちょっと出掛けて来るけど
[Jr.]留守番 頼むな
[モモ]はい
[モモ]あの──
[Jr.]なんだ
[モモ]アルベドさんにも──
[モモ]お元気でって──
[Jr.]ああ
[Jr.]あいつが起きたらそう伝えておくよ
[Jr.]まぁ ねぼすけだからいつ起きるか分かんねーけどな
[Jr.]ジギー
[Jr.]済まないが モモとユリさんのこと頼んだぜ
[ジギー]分かっている
[ジギー]心配せず 任務に専念しろ
[シオン]それじゃあみんな
[シオン]行ってきます
[モモ]モモ 待ってますから
[モモ]みんなが帰るのをずっと待ってますから
[モモ]───行ってらっしゃい
[シオン]兄さん──
[シオン]私 ヴィルヘルムのしたかった事少し解る気がする
[シオン]何度も 何度も 何度も
[シオン]同じ一生が繰り返されても
[シオン]後悔のないように精一杯生きる
[シオン]それは──
[シオン]きっと理想的な人の姿なんだろうね
[シオン]だけど──
[シオン]私達はそこまで強くない
[シオン]そんな風に生きられない
[シオン]もっとずっと中途半端で弱くて 小さい存在
[シオン]他人を傷つけたり──
[シオン]自分に嘘を吐いたり──
[シオン]憎んで──
[シオン]後悔して──
[シオン]でも──
[シオン]たとえ 弱くても──
[シオン]消えゆく運命でも──
[シオン]未来を変えていこうとする[意志/こころ]が大切なんだと思う──
[シオン]少しずつ変わっていこうとすること──
[シオン]たとえ全てが決定されていたとしても
[シオン]悲しむことなんて何一つない
[シオン]むしろ“未来”は希望に満ち溢れている
[シオン]だって──
[シオン]私達の選べる道は
[シオン]無限に存在するのだから──
[シオン]──そうだよね ケイオス君
[シオン]KOS‐MOS──
[ケイオス]どうやら
[ケイオス]僕も君も
[ケイオス]まだこの世界に存在しているようだね
[ケイオス]人が 宇宙が望む限り
[ケイオス]僕らは存在する
[ケイオス]まだ僕らの成すべき事は終わってはいないんだ──
[ケイオス]だから──
[ケイオス]それまでの間──
[ケイオス]ゆっくりとおやすみ
[ケイオス]──KOS‐MOS
[KOS‐MOS]おやすみなさい──. |
|